2022年のChatGPT登場以降、生成AIが持つ「膨大な非構造データを構造化し、新たな資産へと変換する力」に可能性を見出した多くの日本企業が、AI投資を急速に拡大させている。事実、日本企業の約半数が年間2,500万ドル(約37億円)以上の巨額なAI投資を計画しており、その投資意欲の高さは諸外国を抑えて世界最多※1を記録している。しかしながら、これほど潤沢な投資が投じられながらも、得られている成果は、特定業務の限定的な効率化に留まり、P/Lの構造改革や時価総額の向上には至っていないのが実情※2※3ではないだろうか。国内大手企業の生成AIに対する平均投資額が数千万円規模へと膨らむ一方で、高い投資対効果(ROI)を達成できている企業がわずか17.6%という現実※4※5は、莫大な資本の大部分が成果を生み出せない「AI投資の“死の谷”」、すなわち部分最適な取り組みに分散している可能性を示唆している。
なぜ、これほどの巨額投資が企業価値に直結しないのか。その根本原因は、多くの企業がAIの明確なROIを定義できぬまま、既存業務の補助ツールとして後付けする発想から脱却できていない点にある。ヒトによる運用を前提とした旧来のオペレーティングモデル(旧OS)にAIを継ぎ足す行為は、労働集約型モデルの限界を露呈させるだけでなく、本来注力すべき成長領域への投資余力を構造的に奪う負債を温存することに他ならない。AIの効果を作業時間の削減による社内コストカットだけで評価し、そこで生まれた余力を新しい売上や価値を生み出す仕事へ大胆に再配分しない限り、実際の現金収支としてROIをプラスに転じさせることは難しい。
今、経営に求められているのは、現状の延長線上にある漸進的な改善の積み重ねではない。求められているのはAIを実行主体(Native)とする前提で、オペレーティングモデルを再設計することである。すなわち、企業の「OS」そのものを再設計する非連続な構造改革である。これは、労働集約型の制約を脱し、AIを新たな「アセット」に変えることで資本収益性を劇的に向上させる、いわば「資本集約型ビジネス」への転換である。この「AI Native」へのパラダイムシフトこそが、市場からの低い評価に苦しむ日本企業を再び世界水準の成長軌道へと戻す、きわめて重要な経営アジェンダとなる。