電力業界は現在、かつてない規模の投資ラッシュに直面している。
第7次エネルギー基本計画などでも示されているとおり、脱炭素化の潮流のもと、再生可能エネルギー電源、次世代火力、送配電ネットワークの次世代化といった新しい成長投資が急速に進展している。
一方で、DX進展に伴うデータセンターの増設やGX文脈における電化推進など、社会インフラ側の電力需要も拡大している。その結果、業界全体として「低廉・安定・環境適合」という三つの要請を同時に実現する、いわば“トリレンマ”への対応を迫られている。
過去に類を見ない新規領域への投資が増加する中で、従来型の調達スキームではリスクを十分に制御しきれなくなりつつある。
加えて、サプライヤー側でも構造的な変化が進む。重電メーカーの事業撤退や海外移転が相次ぎ、サプライチェーンにおける地政学的リスクは高止まりしている。
COVID-19やウクライナ情勢を契機に、供給制約やコスト上昇が常態化しつつあり、調達段階でのリスク顕在化が加速している。
その結果、発注者・受注者間、さらには元請・下請間においても、リスク分担や責任所在をめぐる調整が一層シビアになっている。
これらのリスクは単なる調達上の問題にとどまらず、個々の投資案件の採算悪化や投資回収の遅延、さらには事業計画そのものの見直しを迫る要因となりうる。実際に、条件設定の不備やリスク分担の曖昧さが、追加コストや紛争の発生を招き、経営判断に重大な影響を及ぼすケースも顕在化している。