サマリー:グローバル標準と個別最適の切り分け、経営と現場の課題認識の乖離という問題は、多くの企業に共通する切実な悩みだろう。日本発・アジア発のコンサルティングファームという独自のポジションから、この問題の解決に取り組むアビームコンサルティング社長の山田貴博に聞いた。
アビームコンサルティング 代表取締役社長 山田貴博
サマリー:グローバル標準と個別最適の切り分け、経営と現場の課題認識の乖離という問題は、多くの企業に共通する切実な悩みだろう。日本発・アジア発のコンサルティングファームという独自のポジションから、この問題の解決に取り組むアビームコンサルティング社長の山田貴博に聞いた。
グローバル標準とローカル対応や自社の強みなど個別最適との切り分け、さらには経営と現場の課題認識の乖離、これらは多くの企業に共通する切実な悩みだろう。二律背反に陥りがちな両者を、いかに高いレベルで融合すればよいのか。アビームコンサルティングは、日本発・アジア発のコンサルティングファームという独自のポジションから、この問題の解決に向けて、戦略策定に留まらず、実行、成果創出に至るまで、日本企業に伴走してきた。同社自身の成長戦略と合わせ、その取り組みのポイントを聞いた。
過去数十年、グローバル展開する日本企業にとって「グローバル標準」は大きなテーマだった。しかし、現場の要求の多くを捨象する形での標準化が、さまざまな非効率をもたらしてきた側面もある。グローバル標準は、本当に企業を強くしてきたのだろうか。
「財務会計などの業務は徹底した標準化が不可欠でしょう。しかし、顧客接点の分野などではむしろ個別最適が求められます。国や地域によって市場環境や顧客の購買行動は大きく異なるからです」と、アビームコンサルティング代表取締役社長の山田貴博は語る。
ベストプラクティスへの向き合い方にも課題がある。欧米企業が成功したやり方を、そのまま適用して同様の成果を上げることができるだろうか。
「海外の成功事例が1年前のものであっても、技術や市場の状況は大きく変化します。そして、その変化は加速しています。各地の市場特性も無視できませんし、手本となる企業と自社とでは人材構成にも違いがあるはずです」
もう一点、経営アジェンダと現場課題の問題もある。「経営トップが旗を振っても現場が動かないケースは少なくありません。経営と現場の課題認識や戦略の方向性が非整合であれば、どれほど立派な戦略でも形骸化してしまう。経営戦略を現場に落とし込み、現場の意識や判断に浸透させ、行動変容を促すことが重要です。それが、戦略の実行と成果の創出につながります」
グローバル標準と個別最適、経営アジェンダと現場課題を高いレベルで両立させる。それは多くの企業にとって切実なテーマであり、アビームコンサルティングが目指してきた姿でもある。
「かつては、世界中で豊富なベストプラクティスを持ち、それを展開する能力がコンサルティングファームの競争力に直結していました。しかし近年は、市場や企業固有の条件を踏まえた提案、そしてそれを実行する力へと軸足が移りつつあります」
同社は、グローバル標準や海外の成功事例をそのまま当てはめるのではなく、日本発・アジア発のコンサルティングファームという独自の立ち位置を活かし、日本企業が直面する固有の課題の解決に伴走してきた。
また、経営と現場の課題に関しても、「経営トップの意思を現場に落とし込み、同時に現場の知恵を経営の意思決定に反映させる。その双方向のアプローチで企業の変革を支援してきました」と山田。こうした姿勢は、同社の経営理念「Real Partner」を体現するものでもある。
近年は経営環境が一段と複雑化し、顧客企業の要求水準もさらに高度化。同社は、新たなブランドメッセージ「Build Beyond As One」を掲げ、従来の常識や期待値を超えて新たな価値の創造をともに実現する「共創パートナー」への進化を目指している。
そのための手段として欠かせないのが、デジタルやAIなどのテクノロジーだ。技術的な知見の蓄積はもちろん、技術の本質を捉えたうえで戦略や変革プランを構想し、それを現場での実践と成果へと結びつける人材は、同社の大きな強みである。構想から実行まで支援できるコンサルティングファームは多くない。同社はAIをはじめとする先端テクノロジーを使いこなす人材の育成も、いっそう加速させている。
アビームコンサルティングは、クライアントの成長戦略と軌を一にする形で、自社の成長戦略を描いている。
「当社のサービスは、お客様が必要とし、かつ価値を実感していただけるものでなければなりません。その価値をさらに高めるため、三つの方向性を打ち出しています」
第1に顧客提供価値の最大化である。同社は、成長戦略や変革への道筋を描く力に加え、デジタルやAIを操る力、戦略や変革を実行する力を磨いてきた。そして、実行に留まらず、成果創出に向けてクライアントに伴走する姿勢を貫いている。
第2に、グローバルに広がるサービス体制である。2025年9月には、ベリングポイント(本社・オランダ)と、米国市場、特にデジタルテクノロジー領域を強みとする合弁コンサルティングファームの設立を発表した。
「ベリングポイントとは、さまざまなプロジェクトで10年以上協業してきました。長年の信頼関係が今回の設立のベースになっています。加えて、当社グループのオプティマム ソリューションズ(本社・シンガポール)とともにインドで立ち上げたグローバルケイパビリティセンター(GCC)があります。GCCの技術的な知見と経験を組み合わせ、世界中のお客様に成果を届けるサービス体制が整いました」
第3に、アビームコンサルティング自身の持続的な成長である。同社は、グローバルコンサルティングファームとしての信頼性を高めるため、ガバナンスとリスクマネジメントの強化に取り組んでいる。また、戦略を現場につなぎ、企業変革や企業価値向上に実効的なインパクトを与えられるスキルとマインドを備えた人材の育成にも注力している。事業の成長戦略やビジネスモデルを進化させ、クライアントとともに成長する姿は、日本発・アジア発のコンサルティングファームならではの優位性になるだろう。
「日本発・アジア発のコンサルティングファームとして、経営と現場、グローバルとローカルをつなぎ、新たな価値を提供する『共創パートナー』であり続けること。日本発・アジア発の独自性を磨き、グローバルに通用する新スタンダードを共創し、お客様の成長と社会の進化を支え続けていきます」
日本企業の競争力強化に向け、アビームコンサルティングはみずからの提供価値をさらに拡充しつつある。とりわけ日系グローバル企業にとって、大きな力となるに違いない。
※「ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー」2026年1月9日発売号記事より転載
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