NECでは2021年5月に「2025中期経営計画」を発表。その内容を踏まえ、2030年時点での自社のありたい姿を、「NEC 2030VISION」として示している。
「このNEC 2030VISIONは、環境・社会・暮らしという3つのレイヤーで定義されています。その中で環境のレイヤーでは、『地球と共生して未来を守る』という命題を掲げ、その実現のために、NECの事業活動によるCO2の排出量を含む環境負荷を削減していくこと、同時にNECが持つICT技術を使って社会の環境負荷を減らしていくという両輪の取り組みを進めています」と秋山氏は語る。
NECグループのCO2排出の削減目標は「2040年のCO2排出実質ゼロ」であり、そのマイルストーンとして2030年には、2020年度比でScope1,2およびScope3の排出量半減を目指している。これに対して現状は、自社の排出となるScope1,2は少ない一方、Scope3の排出が大部分を占めている。
「Scope3の中でも、Category 1にあたる購入した物品・サービスが増加傾向にあります。目標を達成するためには、サプライヤーとの協働・共創の取り組みが不可欠だと認識しています」と秋山氏。
そうした認識のもと、NECグループではサプライチェーンサステナビリティという枠組みの中に脱炭素を組み入れ、専任組織を組成して推進している。
Scope3 Category 1におけるCO2削減に向けたアプローチには、大きく2つのステップがある。1つはサプライヤーエンゲージメントの推進であり、もう1つはその結果であるサプライヤーの削減努力を、確実にNECの算定フローに反映させていくというステップだ。
このステップは5段階に分かれており、削減方針の策定から排出の可視化、さらに削減目標の設定および実行を経て、最終段階の目標達成に至るプロセスが、ガイドラインとして示されている。
しかし、方針を示すだけでは、サプライヤー側での推進方法が不十分だという。そこで、NECが持つノウハウや経験値を適宜共有しながら、インタラクティブに活動を進め、より削減効果の高いサプライヤーを対象にしたワークショップや、ハンズオン支援なども展開しているという。
排出削減効果の高いサプライヤーにフォーカスすることになった経緯について、従来は調達額の大きいサプライヤーに対して施策を展開する傾向があったが、2030年の目標達成に向け、CO2排出量の大きい企業に絞り込んで取り組みを加速しようという狙いがあるという。
「CO2排出量の多いサプライヤーを『ホットスポットサプライヤー』とし、さらにその中で排出量の上位90%に該当するサプライヤーを、集中的に管理していくことにしました。こうしたアプローチでメリハリをつけ、より効果の高い排出削減の実現を目指しています」(秋山氏)
こうした方針の見直しに伴って、NECグループのチームの体制強化にも取り組んでいる。従来は秋山氏の所属するサプライチェーン改革統括部が中心に進めてきたが、リソースやノウハウ強化を目的に、2024年度より各部門から強みを持つメンバーにてタスクフォースを組成し、本格的に始動しているという。
また、こうした活動を推進する上で、インセンティブ付与がサプライヤーのモチベーションを上げる重要な施策であると示唆する。
NECグループでは、優れた成果を挙げたサプライヤーを対象に、表彰制度を設けるなどといった取り組みを行っている。
最後に秋山氏は、「現状はまだ道半ばながら、これからもサプライヤーエンゲージメントと、それを支える排出量の算定手法見直しを両輪に、Scope 3 Category 1の削減を意識して進め、最終ゴールである2040年のカーボンニュートラルに向けて貢献していきたい」と語った。