社会的・経済的価値の両立を目指す”CSV事業”開発の実態調査

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2025.03.27
  • サステナビリティ経営
  • 新規事業開発

アビームコンサルティングは、日本企業によるCSV事業(=社会的価値と経済的価値を両立させた事業)創出の実態の把握、及び同事業創出における重要成功要因(KSF)を特定することを目的に、「CSV(Creating Shared Value)事業開発の実態調査」を2024年11月に実施しました。
本調査は年間売上500億円以上の日本企業において、直近5年の間に課長以上の職位で「社会課題に関連する新規事業開発」に関与している方2,060人を対象としています。

<本調査の背景>
昨今のSDGsやESG投資などに代表されるステークホルダー資本主義の潮流を受け、上場企業を中心に多くの企業が「社会課題解決(社会の持続性)と継続的な収益確保(企業の持続性)を両立させたサステナビリティ経営/CSV経営の実現」を経営アジェンダとして掲げています。その内容は、コーポレート部門によるマテリアリティの特定~統合報告書などによる開示といった全社レベルの取り組みだけでなく、事業部門が社会的価値と経済的価値を両立させたCSV事業創出に取り組むケースも増加しています。

アビームコンサルティングは、本調査を通じてCSV事業創出の実態を紐解き、調査結果から明らかになった同事業創出における重要成功要因(KSF)を提示します。

調査結果の概要

  1. CSV事業創出の実態(全体像)
  2. CSV事業創出の成功要因(成功企業/失敗企業セグメント別)
社会的・経済的価値の両立を目指す”CSV事業”開発の実態調査

調査結果の全文は下記をご覧ください。

調査結果のサマリー

  • 大企業のCSV事業開発では、「気候変動(脱炭素)」「エネルギーマネジメント」「サーキュラーエコノミー(循環経済)」といった環境系のテーマが上位を占める
  • CSV事業開発は、通常の新規事業開発と比較して、収益化のハードルは高いものの、反対にローンチ後の中核事業化の割合は高い
    • ローンチの割合:21.7%(通常の新規事業開発の約半分)
    • 中核事業化の割合:4.6%(通常の新規事業開発の約1.5倍)
  • CSV事業開発をローンチ~中核事業化に導くためには、抑えるべき重要成功要因(KSF)が5つ存在

CSV事業で取り扱う社会課題テーマ

CSV事業での社会課題テーマは、「気候変動」「サーキュラーエコノミー」など、昨今注目される環境系のテーマが上位。「物流の2024年問題」「防災・減災」などの日本において昨今注目される社会系テーマも、2割超の企業が挑戦。

CSV事業の成功確度

CSV事業のローンチ確度は、通常の事業開発の約半分程度(21.7%)に留まっており、ローンチへの様々な壁が存在すると推察される。一方で、中核事業化の割合は通常の事業開発の約1.5倍程度(4.6%) となっており、新たな事業の柱となる可能性を秘めていると推察される。

CSV事業開発の成功要因

CSV事業創出含め新規事業開発では、仮説ベースで価値を創出・構想し検証を通じて実現へと向かっていくLean & Pivotアプローチが基本となる。
本調査では、社会的価値/経済的価値の双方を両立した「成功企業(セグメント①)」と「社会的価値または経済的価値を創出できていない企業(セグメント②③)」をプロセスごとに比較することで、CSV事業創出における成功要因を導きだした。

1.「価値の定義」フェーズ

成功企業は、事業目標として社会的価値と経済的価値をバランス良く設定している。

また、経営層との合意形成を事業開発の初期フェーズから始め、合意内容についても事業として取り組む社会課題のテーマに留まらず、社会的価値に紐づく具体的なKPIにまで言及する傾向がある。

2.「価値の構想・検証」フェーズ

成功企業は、社会課題(アウトサイド・インの視点)はもちろんのこと、加えてマーケット・イン(市場・顧客視点)及びプロダクト・アウト(自社視点)も織り交ぜながら、自社にとって最適なCSV事業創出の社会課題テーマを選定している。

また、成功企業は、社会課題テーマ選定後において、社会課題の構造(社会課題を引き起こす真因)を現場視点も持ち合わせながら解像度高く紐解き、事業コンセプトを策定する傾向にある。加えて、ビジネスモデル構築の段階においては、ソーシャルセクター/パブリックセクターとの連携も含めたエコシステム形成を重視している傾向がある。

3.「価値の実現」フェーズ

成功企業は、インパクト加重会計などの手法を駆使した社会的価値の可視化に挑戦している。

また、成功企業は、CSV事業創出の各フェーズのポイントを押さえるにあたって、CSVに理解のある人材・組織風土の醸成も意識している。

調査結果から明らかになったCSV事業創出の重要成功要因

社会的/経済的価値を両立した事業を作り上げる上で、5つの重要成功要因が存在すると言える。
また、企業におけるCSV事業の連続的な創出には、人材をはじめとした無形資産の蓄積も重要である。

調査結果の全文は下記をご覧ください。

執筆者情報

  • 斎藤 岳

    Principal 顧客価値創造戦略ユニット/企業価値向上戦略ユニット長
  • 齋藤 直毅

    Senior Manager

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