日本型シェアードサービスの再生と進化 2.0 ~シェアードサービスの再生を通じて企業変革をリードし、社会課題を解決する~

ホワイトペーパー
2025.03.27
  • アウトソーシング
648373364

アビームコンサルティングは「日本型シェアードサービスの再生と進化 2.0 ~シェアードサービスの再生を通じて企業変革をリードし、社会課題を解決する~」と題したホワイトペーパーを発行しました。

本レポートは、日本企業におけるシェアードサービスの取り組み状況や課題を調査し、その結果から導き出した、シェアードサービス活用を通じた企業変革に向けた提言をまとめたものです。2011年に発刊したリサーチレポート「日本型シェアードサービスの再生と進化」に続く2回目の調査として実施し、前回調査との比較を通じて、現在のシェアードサービスにおける課題や企業変革の実現に向けたポイントを詳述しています。

前回の調査から10年以上が経過し、シェアードサービスの導入による間接業務改革に一定の進展が見られるものの、企業における環境変化への対応の遅れや戦略の変更などが影響し、一部のシェアードサービスセンター(以下、SSC)では成長が停滞しているという実態があります。その結果、グローバルな先進企業との差が広がっているのではないかという仮説から今回の調査を実施しました。

目次

1. 2011年時点の提言サマリと2024年の現状
2. シェアードサービスを取り巻く外部環境
3. シェアードサービスの抱える課題とその背景
4. 展望と提言
おわりに

■ホワイトペーパーの全文は下記をご覧ください。

エグゼクティブサマリ

調査の結果、2011年と比較してシェアードサービスの導入による効率化は進んだものの、グローバル企業との差は依然として大きく、多くの企業において、SSCとしての価値創出に向けた業務標準化・高度化の取り組みは道半ばであることが明らかとなりました。

1.【コスト削減】シェアードサービスによって効率化は一定進展した一方で、グローバルトップ企業との差は依然として大きい

日本と欧米・グローバル企業の売上高販管費比率(業種別)を2010年と2023年で比較した結果、日本企業では一部の業種において比率が減少していることが分かった。これにより、グローバルにおける潮流と同時に日本企業においても間接業務改革としてSSC導入が着実に推進された結果であると言える。しかしながら、欧米・グローバルの先進企業との差はあまり縮小されておらず、依然としておくれを取っていることが分かった。

図1 日本、欧米を代表する各業種における売上高販管費比率の比較(2010年・2023年)

2.【業務の標準化】 効率化の要となる業務の標準化は、多くのSSCが道半ばである

シェアードサービスによる企業変革を実現するためには業務の標準化が要であり、その重要性は2011年時点から引き続き変わらないものの、その取り組みは2024年時点においても多くの企業で道半ばであることが今回の調査で分かった。その阻害要因を解析した結果、SSCによる改革に向けたアプローチである「経営トップのリーダーシップ」「能力・スキルの獲得」「改革し続ける文化の定着」が十分に実現できていないことであると言える。

3.【業務の高度化】 SSCとしての付加価値向上に向けた業務の高度化は、未だ大半の企業で進んでいない

シェアードサービスによる企業変革において、SSCとしての付加価値を高めるため業務の高度化が重要であり、そのためには定型業務(効率化対象業務、オペレーション)のみならず、非定型業務(提案型業務、判断業務、企画・マネジメント機能)へとスコープ拡大することが肝要であるが、2024年時点においても、大半の企業においてそれらの取り組みが進んでいないという実態が判明した。コーポレート、SSC、BPOという役割分担が一般化する中で、今回の調査対象だけなく多くのSSCにおいて現状維持か縮小傾向にあると言える。

シェアードサービスセンター(SSC)が抱える7つの課題

この度の調査を通じて浮き彫りとなった、SSCにおける課題は以下の通りです。

1. 効率化の限界

SSCの主なミッションは間接業務集約による効率化を通じた企業全体の改革であるものの、多くのSSCは特定の業務プロセスの改善に留まっていた。よって、初年度に一定の効率化が実現できていたとしても、徐々に効率化の余地が減少し、コスト削減の限界を迎えている。SSCとして持続的に価値を創出するには、効率化だけでなく、新たなミッションの設定が求められている。

2. 標準化と高度化の壁

業務の標準化と高度化をSSCの目標として掲げるものの、その達成が困難と感じている企業が多い。その壁として、SSCに標準化のための権限が与えられていない、事業側のプロセスやルールの変更が出来ない、標準化を進める人材がSSCに配置されていない、などがある。

3. 人材のアンマッチ

多くのSSCにおいて、業務改革人材が不足している、または採用できていないという課題が多い。SSCに求められるのは、改善レベルから改革レベルへと変換する業務改革を推進できる人材だが、そのような人材はコーポレートや事業部門に重点的に配置されており、SSCには充足できていない。

4. 業務のブラックボックス化と属人化

BPOを活用しているSSCにおいて、人材ローテーションによる業務知識の陳腐化やRPAなどによる効率化状況の把握が難しく、業務がブラックボックス化している。一方で、BPOを活用していないSSCにおいては、時間経過とともに業務のスコープが曖昧になり、属人化が顕著となっている。

5. 人材活用の負のスパイラル

一部の企業において、SSCとしての成長が見込めず、時間経過とともにベテラン層は残るもののキャリアの根詰まりを感じた優秀な中間層が去っていくという人材バランスの崩壊が起こっている。中間層の採用も難しく、それによりベテラン層の負担が増え続け、モチベーション低下による大量退職も懸念されている。

6. 外販の難しさ

一定程度の規模のSSCでは外販による売上拡大を目指したものの、外販能力を作り出すための投資不足や人材育成の課題から、外販に成功した企業が少ない。また、外販に優秀な人材を割り当てることで自社向けサービスの品質が低下するなどの懸念から、外販を断念するケースも多い。

7. 進まぬグローバル化

SSCの発展には3段階あり、レベル1 個別SSC、レベル2 リージョナルSSC、レベル3 グローバルビジネスサービス(GBS)へと進化する。多くの企業がグローバル化に関心を持っているが、先進欧米企業と自社では環境が異なると感じているため、踏み出せない状況である。

シェアードサービス活用による企業変革の実現のポイント

今回の調査で明らかとなった日本企業におけるシェアードサービスの推進実態および課題を、アビームコンサルティングがこれまで培ってきたコーポレート変革支援の知見・ノウハウから要因解析し、シェアードサービス活用による企業変革の実現のポイントを導き出しました。

ポイント①:SSCを企業価値創出のコアとする

SSCとして、従来までのいわゆる定型業務・オペレーション実務を担う「サービスデリバリー機能」だけではなく、「CoE(Center of Excellence)機能」、「BP(Business Partner)機能」にまで役割を拡大することで、ガバナンスとバランスの取れた事業推進のプラットフォームとなることが重要である。間接業務の集約による効率化・標準化だけに照準を当てるのではなく、機能拡大によってコーポレート機能の高度化を図り、企業価値創出に寄与する組織へと進化させることが鍵となる。

図2 本社コーポレートSSCが担う機能分担

ポイント②:業務改革を加速する自動化とインテリジェントセンターの設置

今後、生成AI技術がさらなる進化と発展を続けることにより、SSCにおける業務改革も加速し、業務の大部分が自動化されることが期待される。その中で、企業変革の実現に向けたSSCの果たすべき役割として、集約業務のオペレーションの運用と並行して抜本的な業務改革を継続的に推進する基盤、人材、仕組み、機能が備わった組織であるインテリジェントセンター(IC)の設置が重要である。

図3 インテリジェントセンター概要

ポイント③:日本型SSCのバージョンアップ

企業や事業の固有性が高く、ベテラン人材の労働参加率が高い、などといった日本型SSCとしての特徴や課題を「強み」に変えるためには、ジョブ型雇用の推進や柔軟な雇用体系、労働環境を提供することで多様な人材の活用を促進し、若手・中堅層への魅力訴求も可能とすることで企業価値向上にも貢献していく、というサイクルを目指すことが重要である。

■ホワイトペーパーの全文は下記をご覧ください。

執筆者情報

  • 原 市郎

    Principal オペレーショナルエクセレンスビジネスユニット長
  • 髙橋 克嘉

    髙橋 克嘉

    Principal

Contact

相談やお問い合わせはこちらへ