予測モデルで業績見込管理業務を自動化――科目特性に応じたAI活用で経営管理部門の高度化を実現

株式会社LIXIL
事例
  • 不動産・建設・住宅
  • データドリブン経営
  • AI
株式会社LIXIL

株式会社LIXIL(以下、LIXIL)は、水まわり製品や窓・建材などの住宅設備・建材をグローバルに展開し、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」をPurpose(存在意義)に掲げる企業である。
同社がデジタル変革を通じて見据えるのは、エンドユーザーであるコンシューマーの体験価値の抜本的な刷新である。BtoB事業を基盤とし、製造から流通、施工に至るまで複雑なバリューストリームを有する同社にとって、真のCX(顧客体験)の実現には、プロセス全体のデジタル化と一貫した効率化が不可欠となる。その一環として、AIを活用した業績予測モデルの構築による業績見込管理業務の自動化に取り組んでいる。
アビームコンサルティングは、2014年以降LIXILの支援を通じて培った業務理解や専門知見、他社事例を活かし、2024年4月より、業績予測モデルの企画構想支援を開始。システム構築、業務設計・運用ルールの定義、保守・運用プロセスの確立まで一貫して支援し、LIXILの企業変革に向けたパートナーとして伴走している。

経営/事業上の課題

  • 業績見込の算出に必要なデータ収集・加工・調整などの各作業を手作業で行っており、業務負荷が高い状態
  • 事業部ごとに担当者個人の経験則に基づき業績見込を算出しており属人化。恣意性が高く、見込の妥当性・変更要否の判断が困難
  • 本来注力すべきFP&A(経営管理)としての分析業務に十分な時間を割けず、計画達成に資する情報提供・提言が実現できていない

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • 既存のデータウェアハウスを有効活用し、データ収集・加工から見込値の自動算出までを担うシステムの構築支援
  • 専門領域のナレッジと他社事例を活かし、客観性と業務運用に耐える精度を両立する機械学習モデルの構築支援
  • 見込・実績などの計数分析レポートの設計、および分析結果を踏まえた追加施策検討につなげる業務プロセスの確立支援

支援の成果

  • 業績見込算出のため、従来手作業で行っていたデータ収集・加工の各作業の自動化を実現し、業務負荷を軽減
  • パイロット導入で業績予測モデルを構築し、将来的な全事業部展開を見据えた基盤システムを整備。客観性の高い予測に基づく業績見込管理の標準化・共通化に向けた第一歩を実現
  • パイロット導入において業績見込作成業務の標準化・システム化を実現し、FP&A(経営管理)部門が本来注力すべき分析・提言業務へシフトするための業務基盤を整備

クライアント課題の難所

経営が求める見込精度と、それに伴う業務負荷──双方のハードルを限られたリソース・期間で乗り越える難しさ

LIXILのFP&A部門は、経営の意思決定を支えるべく、業績見込の算出と分析・提言を担っている。しかし、事業部ごとに担当者の経験則に依拠した属人的な算出プロセスとなっており、データ収集・加工に膨大な工数を要する一方で、本来注力すべき分析業務に時間を割けない状態が続いていた。
こうした課題を打開すべく、LIXILでは以前より社内の取り組みとして、戦略部門が先行し、統計分析を用いた機械学習モデルによる業績見込値の自動算出に挑んでいた。しかし、社内に山積する他の優先案件との兼ね合いから、限られた社内リソースの中でセグメント別・商材別・科目別と多様な単位で見込値を算出したものの、期待していた精度には到達しなかった。結果として運用面には多くの手作業が残り、専門的な知見を要するモデル構築を独自で進めることは困難な状況となっていた。
こうした背景から、LIXILは、専門的な知見に加えプロジェクト推進力とケイパビリティを併せ持つアビームコンサルティングに支援を依頼。2024年4月の企画構想フェーズから伴走し、「業績予測モデル構築プロジェクト」として2025年1月に本格始動した。

プロジェクトの重要成功要因

科目ごとに機械学習と算出式を最適配分し、限られた期間で業務要件を満たす精度を実現

本プロジェクトでは、パイロット導入期間が1年と限られる中で、営業利益を構成する主要科目を対象に見込精度を実現する必要があった。協議の結果、当初は機械学習モデルの構築粒度を科目軸・製品軸ともに敢えて粗く設計し、まず広くカバーしたうえで、精度が不足する箇所を重点的に細分化する段階的アプローチで着手した。しかし、実際にモデル構築を進めると想定した精度には至らず、科目軸・製品軸を細分化する方針へと転換した。
とりわけ経営指標として重要な売上収益・標準原価においては、製品軸を「大分類」から「中分類」へと細分化した上で、市場分類も組み合わせ、それぞれ8種類に細分化することで必要な精度を実現した。
一方、原価差異・その他原価・販管費については、まず機械学習モデルでPoCを実施し、実現性の見極めをクイックかつ明確に判断。科目特性上、機械学習での精度実現が難しいと判断した対象については、業務・ITメンバーと代替手段を検討し、最終的には算出式(図中の青色で示した箇所)を採用することで一定の精度・品質を担保した。このように科目ごとに手段の濃淡をつける方針を採ることで、限られた期間の中で総合的に業務要件を満たす対応が可能となった。
当初の導入想定や機械学習モデルでの実現に固執せず、実施結果に応じて業務要件・実現方法を柔軟に見直したことこそが、パイロット導入成功の決め手となった。

アビームの貢献

長期的なパートナーシップを起点に、内製化を見据えた伴走支援でデータドリブン経営の定着を推進

アビームコンサルティングは、2014年以降10年以上にわたり、国内基幹システム刷新方針のもと、ロジスティクス・会計をはじめとする多岐にわたる領域で支援を続けてきた。こうした長年の取り組みを通じて培ったクライアント理解を背景に、LIXILを取り巻く経営課題を的確に把握。3つの改革テーマに整理したロードマップを定義し、その第一弾として「業績予測モデルの業務活用による業務効率化・高度化」を掲げ、「業績予測モデル構築プロジェクト」として始動した。
システムベンダーが業務・システム双方の要件を満たしたシステムを構築して引き渡すという従来型の役割分担ではなく、これまで蓄積したLIXILの事業・業務知見に加え、AIの専門知見を掛け合わせ、業務とITの橋渡し役を担うと同時にシステム観点の支援も併走。LIXILのITメンバーを中心とした「システムの内製化」を見据えた総合的な支援を実施した。

パイロット導入期間を1年と定めた中で、双方の限られた体制を最大限に活かしながら着実に成果を積み上げるため、短期間で複数のサイクルを回し、1科目で精度を実現できれば次の科目へ移るという柔軟なアプローチを採用。前段タスクの成果に応じて後続タスクの計画を柔軟に調整しながら、2026年3月に第一フェーズであるパイロット導入を完了した。
今期は、パイロット導入で構築した基盤を活かし、効率的かつスピーディーな他事業部展開を推進する。あわせて、業績見込と計画・実績といった計数情報を比較・分析するナレッジを蓄積し、将来的には具体的な追加施策(商材別の金額規模や実施時期)のシミュレーション機能なども構築。FP&Aを起点とした利益向上に寄与する仕組みづくりを目指す。


弊社では以前、戦略部門が先行して統計分析を用いた予測モデルの構築を試みましたが、結果として人の手が多く介在する属人的な作業が残り、再現性に大きな課題を抱えていました。現状、経理部門のFP&Aメンバーにおいても、今後の少子高齢化の影響に伴う採用環境の激化と限られたリソースの中、知見を要する仕組み化を自社単独で完遂させることは極めて困難な状況にありました。
こうした背景から、アビームコンサルティングの皆さんの専門的な知見とプロジェクト推進力を活用した共同プロジェクトを発足しました。結果、一つの事業をモデルケースとして、仕組み化された予測モデルの基盤を構築することに成功いたしました。
今後は、今回得られた成果を全社的なナレッジとして蓄積し、自走できる体制を整えることが肝要です。さらなる展開と社内定着に向け、引き続き力強いご支援を賜りますようお願い申し上げます。

Finance Function
Finance Digital Leader
市川 康弘

Finance Function Finance Digital Leader 市川 康弘

Customer Profile

会社名
株式会社LIXIL
所在地
東京都品川区西品川一丁目1番1号大崎ガーデンタワー24F
設立
1949年
事業内容
製造業(建築材料、住宅設備機器など)
資本金
68,807百万円
株式会社LIXIL

2026年7月30日

専門コンサルタント

  • 米納 哲郎

    Principal
  • 西岡 千尋

    Principal

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