経営基盤変革に向けたERP刷新と業務プロセス改革 ― BPRとSAP S/4HANA®の標準機能徹底活用によりアドオンを約60%削減

株式会社INPEX
事例
  • 石油
  • DX
  • 財務会計/経営管理
株式会社INPEX

株式会社INPEX(以下、INPEX)は、石油・天然ガスなどの探鉱・開発・生産・販売を主力とする日本最大規模のエネルギー開発企業である。旧基幹システムの保守終了を機に、「データ経営基盤の強化」「柔軟性の高いシステムの構築」「業務効率化」を目的としたERP刷新に着手した。
アビームコンサルティングは、業務プロセス改革からデータ基盤の設計、構築・導入および定着までを一貫して支援。ERPの標準機能を最大限活かす「Clean Core」の考え方を徹底し、SAP Cloud ERPの価値を最大化することで、業務プロセスの標準化・最適化により既存アドオンを約60%削減したほか、データの一元化や業務効率・保守性の向上を実現し、次世代のデータ経営に向けた基盤を構築した。

経営/事業上の課題

  • 複雑化・多様化する経営データの一元管理やレポーティング業務の効率化・迅速化が課題となっていた
  • 将来起こりうる環境変化および多様な事業展開に対応するため、システムの柔軟性を高め、迅速な業務・システムの変更を可能にする必要があった
  • AIを含む最新のIT技術の活用により、業務を効率化し、社員が高付加価値業務に注力できる環境にシフトする必要があった

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • クラウド型支出管理プラットフォームCoupaによる購買プロセスの一元管理、コード体系の最適化、動的レポートの実装を推進
  • 「Clean Core」を徹底し、SAP標準機能の活用促進や業務プロセスの標準化、権限の簡素化を推進
  • Fiori(優れたUXを提供するSAPの設計システム)などの最新技術を活用し、業務プロセスの最適化やペーパーレス、自動処理範囲の拡大を推進

支援の成果

  • データの一元管理基盤が整備され、多様な分析レポートの即時出力が可能な環境を構築
  • 既存アドオンを約60%削減、権限設定を90%削減し、保守性・拡張性を大幅に向上
  • 各領域の業務工数を削減し、社員が高付加価値業務に注力できる環境を構築

クライアント課題の難所

経営戦略の進化に伴う基幹システムの抜本的刷新と業務プロセス改革の両立

INPEXは2008年に当初の経営戦略「埋蔵量維持拡大」「事業領域の拡大」を推進するための基幹システムを導入した。しかし、稼働から約15年が経過する中で、同社の経営戦略はEnergy Transformation(EX)のパイオニアとして、エネルギーの安定供給を基盤としながら、水素・アンモニア、CCS、再生可能エネルギーなどの低炭素化に向けた、「責任あるエネルギー・トランジション」を牽引するといった方向へ大きく変化していた。
旧システムは当初の経営戦略に即して構築されており、変化する経営戦略に対応するための業務負荷の増大やシステム保守費の高騰が課題となっていた。加えて、旧基幹システムの保守終了も迫り、単なるシステム移行ではなく、データを起点とした迅速な経営判断を支える「データ経営基盤の強化」、VUCA時代の環境変化や多様な事業展開に追随できる「柔軟性の高いシステムの構築」、そしてDX推進による「業務効率化と高付加価値業務へのシフト」という3つの目的を同時に実現する、抜本的な基盤刷新が求められていた。
こうした背景のもと、INPEXはエネルギー業界における変革支援の知見および豊富な実績を有するアビームコンサルティングを実行パートナーに選定。2023年8月にプロジェクトを開始し、旧基幹システムの運用保守を担ってきた実績を基に、INPEXの企業文化や現行業務・システムへの深い理解を活かしながら、業務プロセス改革からシステムの設計・構築・導入、さらにはその定着までを一貫して推進した。

プロジェクトの重要成功要因

「Fit to Standard」の徹底とSaaS活用による最適なシステムアーキテクチャの実現

本プロジェクトでは、大規模障害リスクの低さやクラウドによる柔軟性、AIなど最新技術への対応力を評価し、システム基盤としてSAP Cloud ERP Privateを採用した。その重要成功要因は、SAP標準機能の徹底活用(Fit to Standard)と、SaaS製品を効果的に組み合わせた機能配置の最適化にある。

第一に、データ経営基盤の強化に向けた機能配置の最適化である。 Coupa、SAP SuccessFactors®、ProPlus、Concur®などのSaaS製品を効果的に組み合わせ、最適な機能配置を実現した。特に、購買申請から請求までのプロセスをCoupaで一元管理することで、購買業務のデジタル化を推進し、購買に係るデータ分析が可能な環境を整備。また、SAPで動的かつ加工の容易なレポートを実装し、多様な分析レポートの即時出力を可能にした。加えて、勘定・原価センタ・WBSなどの主要コード体系を見直し、今後の経営環境の変化に対応できるデータ基盤を再整備した。
第二に、柔軟性の高いシステム構築に向けた「Fit to Standard」の徹底である。 従来のFit & Gap分析で洗い出したギャップをアドオンで補う手法ではなく、業務をSAPが標準とするベストプラクティスに合わせるFit to Standard手法を採用。商材ごとに構築されていた多数の販売プロセスを全面的に見直したほか、調達・固定資産・原価計算についてもシステム標準プロセスでの統一化を実現した。SAP標準機能や特定の業務に特化したSaaS製品の活用によりアドオンを約60%削減し、将来の運用・改善コスト圧縮を可能にする「Clean Core」を実現。さらに、細分化・属人化していた権限管理運用を簡素化し、権限設定のボリュームを90%削減した。
第三に、業務効率化と高付加価値業務へのシフトを支える最新技術の活用である。 Fiori/BTP/Forms by Adobeなどの最新技術を活用し、ユーザー利便性・システム保守性およびIT統制を向上。各領域の業務において、業務プロセスの最適化や紙作業のデジタル化、自動処理範囲の拡大を推進し、社員が高付加価値業務に注力できる環境を構築した。

アビームの貢献

業務・データ基盤の再設計から定着まで、変革を一貫して支える伴走型支援

アビームコンサルティングは、本プロジェクトにおいて、業務プロセスの再設計、機能設計、実装、テスト、ユーザー教育、移行切替、稼働後ハイパーケアに至るまで、全工程を一貫して支援した。実現性のあるプランを立案し、クライアントおよび周辺ベンダのタスクも含めたプロジェクト全体のマネジメントを実施することにより、大規模なプロジェクトであるにも関わらずオンスケジュールかつ高品質なシステム導入を実現。2026年1月の本格稼働後も安定したシステム運用を維持している。

こうした成果の背景には、旧基幹システムの運用保守を通じて培ったINPEXの業務・システムへの深い理解がある。この知見を活かし、財務会計・購買管理・人事管理など幅広い領域において、あるべき業務の設計からシステム構築までを一手にリード。請求書・発注書のデジタル化や周辺システムとの二重入力削減、人事作業の大幅な自動化など、各領域で具体的な業務改善を実現した。

今後は、AIを用いた対話型レポーティングやデータ分析に基づく業務改善提案など、ビジネスデータ・AI活用ケースの検討を推進し、グループ全体のDX加速に貢献していく。


当社の目標は品質・コスト・納期の全て"100点狙い"でした。当社からの無茶ぶりも多かったと思いますが、アビーム様は旧基幹システム時代から当社を知り尽くしておられ、現行理解から刷新、運用までを一本の線でシームレスに導いてくださいました。要件定義ではアドオン一件一件に丁寧に向き合い、時に「標準で」と叱咤を込めてリードいただき、テストでは当社が納得するまでとことん付き合ってくださいました。我儘も真摯に受け止めてくださる"逃げない伴走力"の賜物として、SAP標準機能の最大活用、遅延なき本格稼働、重大不具合ゼロを達成することができました。ここからが本番です。次は、当社が"使い倒す"番です。

技術統括本部
デジタル戦略推進ユニット
ビジネスソリューショングループ
マネージャー
萩原 貴仁 氏

技術統括本部 デジタル戦略推進ユニット ビジネスソリューショングループ マネージャー 萩原貴仁

私たちがアビーム様に期待したのは、当社業務への深い理解と業界横断で培われた豊富な知見を組み合わせ、ビジネス変革を支える次世代基幹システムを共に創り上げることでした。当社メンバーの経験や視点は多様でしたが、常に開かれた密なコミュニケーションと、言語化しきれていなかった論点を巧みに引き出す対話力により、画一的な進め方では取りこぼしかねない点まで丁寧にすくい上げ、各工程を着実に前へ進めていただきました。領域専門性と全体統制が高い次元で噛み合った推進体制の賜物として、全領域で過不足のないシステムを実現できました。稼働はゴールではなく、変革の出発点。アビーム様の真摯なご支援に改めて深く感謝申し上げます。

技術統括本部
デジタル戦略推進ユニット
ビジネスソリューショングループ
ソリューションアーキテクト
古屋 繁和 氏

技術統括本部 デジタル戦略推進ユニット ビジネスソリューショングループ ソリューションアーキテクト 古屋繁和

Customer Profile

会社名
株式会社INPEX
所在地
東京都港区赤坂五丁目3番1号 赤坂Bizタワー
設立
2006年4月3日
事業内容
石油・天然ガス、その他の鉱物資源の調査、探鉱、開発、生産、販売及び同事業に付帯関連する事業、それらを行う企業に対する投融資等
資本金
2,908億983万5,000円
株式会社INPEX

2026年8月7日

専門コンサルタント

  • 原田 義明

    原田 義明

    Director

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