障がい者雇用を「戦略」と「投資」に転換する ― NECグループが挑んだ、社会価値と企業価値を両立するエコシステム設計 ―

日本電気株式会社
事例
  • 人的資本経営
日本電気株式会社

2026年7月の法定雇用率引き上げやAI活用の進展により、障がい者雇用は「量」だけでなく「質」と本業への接続が問われる局面に入っている。NECグループは障がい者雇用を法令対応・コストではなく、社会価値と企業価値の両立に向けた戦略的投資として再定義した。
特例子会社であるNECフレンドリースタフ株式会社(以下、NFS)を中核に、本社と事業部が一体となり職域開発、ノウハウ展開、投資循環、ガバナンスを統合的に設計し、グループ内外のステークホルダーも視野に入れた「エコシステム」のグランドデザインを策定した。

経営/事業上の課題

  • 法定雇用率の引き上げと人的資本への要請の高まりを受け、障がい者雇用を企業価値向上に向けた戦略および投資として再定義する必要があった
  • 従来の間接業務中心の職域では量・質の両立に限界があり、AI時代を見据えた本業接続型の職域開発が求められていた
  • 採用・定着・活躍支援が分散する体制では限界があり、グループ全体で最適化するガバナンスの確立が不可欠であった

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • 外部環境と内部実態を構造化し、2030年を見据えたシナリオと経営論点の整理を通じ、意思決定基盤の構築を支援
  • 職域ポートフォリオを具体化し、職域開発とガバナンスの方向性を統合設計することで、全体最適化を実施
  • ステアリングコミッティ等の設計・運営を通じ、経営視点と現場視点を接続した意思決定の高度化と合意形成を支援

支援の成果

  • NFSと各社の役割を再定義し、グループとして障がい者雇用をどう進化させるかの方向性を、経営・事業の両面で明確化した
  • 職域ポートフォリオを基軸に、本業接続型の職域開発と雇用方針を整理し、実行に向けた検討を進める基盤を整えた
  • ステアリングコミッティを通じて将来像と論点を共有し、主要関係者の認識を統合することで、合意形成と実行計画策定を前進させた

クライアント課題の難所

個別最適から「グループ全体最適」へのパラダイムシフト

NECグループでは、2026年7月の法定雇用率2.7%への引き上げおよびその先の3.0~3.1%時代を見据え、精神・発達障がいのある方の採用拡大やAI時代に対応した職域の再設計、受入・定着を支える専門的支援体制の構築が急務となっていた。しかし、これらの対応は採用・業務設計・人材マネジメント・現場運用といった複数領域にまたがるため、従来のグループ各社単位での分散的な取り組みでは、全体最適を前提とした戦略的な推進が困難な状況にあった。

特に、職域開発と定着支援は個社最適では成立せず、グループ横断での業務再設計やリソース配分、専門人材の集約的な活用が求められる一方で、各社の事業特性や人員構成の違いにより、統一的な方針の策定と現場実装の両立が大きな難所となっていた。

このため、障がい者雇用を単なる法令対応ではなく、グループ全体の経営アジェンダとして再定義し、特例子会社NFSを中核としたガバナンスのもと、方針策定から職域開発、定着支援に至るまでを一体で設計・推進する構想が求められた。しかし、外部環境の変化とグループ内の多様な実態が複雑に絡み合う中で、課題の構造化および関係者間の合意形成は極めて難易度の高いテーマであった。

こうした背景のもと、アビームコンサルティングには、複雑な課題構造の可視化と論点整理に加え、主要ステークホルダーが参画するステアリングコミッティのファシリテーションを通じて意思決定を支援し、実行可能なロードマップの策定まで一貫して伴走することが期待され、2025年10月より支援を開始した。

NECグループの障がい者雇用を取り巻く課題と対応の方向性 NECグループの障がい者雇用を取り巻く課題と対応の方向性

プロジェクトの重要成功要因

「職域ポートフォリオ」を基盤としたグループ本社・事業部・特例子会社の役割再定義と推進体制の構築

成功の鍵は、NFSと各事業部の役割を「本業との直接性/間接性」と「特例子会社への集中/分散」の二軸で再定義し、グループ全体で障がい者雇用を最適配分する「職域ポートフォリオ」を構築した点にある。これにより、個社最適にとどまらない形で、職域開発・雇用拡大・定着支援を一体的に推進するための意思決定基盤を確立した。

【特例子会社への戦略的集約】
NFSにおいては障がい者雇用の最大化と本業に近接した職域開発の中核機能を担い、各事業部においては事業目標との両立を前提とした雇用推進を担う役割分担を明確化した。これにより、グループ全体でのリソース配分の最適化と、職域開発の加速を可能とする体制を構築した。

【実効性を担保するガバナンス設計】
事業部ごとの障がい者雇用目標およびレギュレーションの方向性を明確化するとともに、職域開発と生産性向上を連動させる「エコシステム」として整理した。これにより、単発の施策にとどまらず、継続的に価値創出へとつなげる運用基盤を確立した。

【経営のコミットメントによる意思決定の高度化】
NECのCDivO(Chief Diversity Officer)および関係会社社長が参画するステアリングコミッティを設置し、経営・事業・特例子会社の主要関係者が将来像と論点を共有する場を構築した。これにより、複雑な利害関係を踏まえた意思決定の質とスピードを高め、戦略と実行を接続する推進体制を実現した。

NECグループの障がい者雇用のあるべき姿の方針(職域ポートフォリオ) NECグループの障がい者雇用のあるべき姿の方針(職域ポートフォリオ)

アビームの貢献

変革を加速させる「構造化」と「ファシリテーション」

アビームコンサルティングは、法制度や技術動向といった外部環境と、NECグループ内に分散していた実態や課題を構造的に整理し、2030年までを見据えたシナリオを提示することで、経営として判断すべき論点と選択肢を可視化した。

具体的には、必要人数・職域数のシミュレーション、ガバナンス設計、職域開発、障がいのある社員データの一元管理といった論点を体系的に整理し、関係者が同じ前提で議論できる状態を整えた。
また、新規採用や定着支援に関する論点に加え、外部委託業務の内製化や本業近接職域の創出可能性も含めて検討を深め、構想にとどまらず、今後の具体的な実行につながるロードマップ策定を支援した。
さらに、ステアリングコミッティおよび定例会の設計・運営を通じて、経営・事業・特例子会社それぞれの視点を接続し、複雑な利害関係を前提とした合意形成と意思決定を後押しすることで、戦略を実行へとつなげる推進力の強化に貢献した。

NECグループの障がい者雇用のあるべき姿(エコシステム) NECグループの障がい者雇用のあるべき姿(エコシステム)

今回のプロジェクトでは、NEC グループ全体として障がい者雇用について、I&Dの方針に沿ってどのように進化させていくかについて、経営と事業の両面から整理していただけたことに大きな意義を感じています。
法定雇用率への対応はもちろん重要ですが、それだけでなく、一人ひとりが公平に評価され、力を発揮し、挑戦や成長につながるインクルーシブな文化を広げていき、企業価値向上につなげていくことが重要です。
ガバナンス、雇用から職域開発まで含めて論点を構造的に整理いただいたことで、グループ全体として目指すべき方向性が明確になりましたので、今後は制度や仕組みの詳細を決め、NECグループに順次展開していく予定です。

(事例紹介時)
日本電気株式会社
グローバル・マネージドサービス事業部門
Global Strategy Principal
繁沢 優香

(プロジェクト当時)
Corporate Senior Vice President
クラウド・マネージドサービス事業部門長
Chief Diversity Officer

日本電気株式会社 グローバル・マネージドサービス事業部門 Global Strategy Principal 繁沢 優香

今回のプロジェクトでは、法定雇用率への対応にとどまらず、NFSを起点にNECグループ全体の障がい者雇用をどのように進化させ、モデル化していくか、さらにNECモデルを社会課題の解決にどのようにつなげていくか、その道筋を整理いただくことを期待していました。
実際に、構想面に加えて数量面の整理、課題の抽出・分析、2030年までのシミュレーションおよびガバナンス設計、さらにはNECらしいテクノロジーを活用した職域開発の方向性まで、幅広く支援いただきました。これにより、論点が明確になり、議論を前に進めるうえで大きな推進力となりました。
今後は、NECグループの強みを活かしたエコシステムの実行フェーズに向け、より具体化していく場面でも、引き続き伴走いただけることを期待しています。

NECフレンドリースタフ株式会社
代表取締役社長
西村 洋

NECフレンドリースタフ株式会社 代表取締役社長 西村 洋

Customer Profile

会社名
日本電気株式会社
所在地
東京都港区芝五丁目7番1号
設立
1899年(明治32年)7月17日
事業内容
ITサービス事業、社会インフラ事業
売上
3兆4234億円
日本電気株式会社

2026年5月1日

専門コンサルタント

  • 久保田 勇輝

    Principal 人的資本経営戦略ユニット長

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