千代田化工建設株式会社

個人の輝きが未来を創る。タレント「マネジメント」からタレント「エンパワーメント」への変革に伴走
事例
  • 不動産・建設・住宅
  • DX
  • 人材/組織マネジメント
  • デザイン×アーキテクチャ
千代田化工建設株式会社

千代田化工建設株式会社(以下、千代田化工建設)では「社会の"かなえたい"を共創(エンジニアリング)する」というパーパスのもと、全社DXを加速している。コーポレートDXの重点施策の1つとして、タレントマネジメントを高度化し、社員のキャリア開発と会社の事業方針のマッチングをデジタルの力で行い、戦略的な人財育成を推し進めている。
アビームコンサルティングは、同社のSAP導入をきっかけに2012年から支援し、今回タレントマネジメントの高度化に向けた推進を2022年12月から伴走型で支援。今回の取り組みによって、社員にとっては現在の自身の見える化と会社で伸ばせる未来のキャリアの想像が容易となり、なりたい姿をイメージしたキャリア開発や自身のスキルを積極的に活用できるようになる。こうした考えは従来のタレントマネジメントにはない新たな発想である。この取り組みを実現するシステムの実装においては汎用のパッケージ製品ではなく、ローコードプラットフォームを活用したオーダーメイドでシステムを構築した。エンジニアリング業界特有の要素を盛り込み、事業に寄り添った活用を可能とするシステムを確立・運用することで、同社は、社員一人ひとりが個性にあった活躍のできる会社へ変革を遂げようとしている。

経営/事業上の課題

  • 変化の著しい時代に多様化するニーズへの対応策として、EPC(設計、調達、建設)中核人財の拡充や、将来への事業ポートフォリオの変革に向けた事業共創人財の育成を行う必要がある。
  • 育成の要であるプロジェクトへのアサインにおいては、アサイン担当者の認識や知見に加えて、全社員の適性や業務遂行力も踏まえた相互のマッチングによる効果の高いアサインを行う必要がある。
  • 専門性の高い業務が数多く存在する事業において、自身が担当する領域以外に会社で得られる機会や、それによるキャリアパスが見え、社員が自律的かつ柔軟にキャリア形成できる必要がある。

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • 人事部門、IT部門、各現場の部門といった関連部門全体と積極的なディスカッションを通じ、事業全体を把握して、業務とシステムの設計を共創していく。「皆に価値ある」タレントマネジメントを活かした業務を伴走型で構築した。
  • 「アサイン時にどんな条件で人を探すか」といった業務のユースケースを明確にし、活用しやすいデータの粒度や内容の検討、さらには拡張性を考慮したデータ構成を検討した。
  • ローコード開発プラットフォームやAI活用などの最新技術を幅広く取り入れて、動作を確認しながら人財の成長を実現する方法を提案した。

支援の成果

  • コーポレートサイドの人財管理目線とプロジェクト現場での人財活用目線など、さまざまな立場から見たタレントマネジメントへのニーズを把握し、最適な業務構想とシステム要件の策定を行った。
  • 非構造化データであった経験や経歴を「案件分野×要素技術×ポジション」として構造化することで、データとして活用可能な基盤を確立した。
  • キャリア志向、目標設定、評価情報などもタレントマネジメントシステム上で情報管理を進め、必要な人が必要な時にデータで人財情報を把握できることで、社員一人ひとりに寄り添ったタレント管理を実現した。過去を振り返り、今の立ち位置を確認するだけでなく、ほかの社員の経験情報の解析を可能とすることで、社員一人ひとりにカスタマイズされた「将来の可能性」を提示できる機能を提供した。

クライアント課題の難所

事業と社員一人ひとりのキャリア志向をすり合わせたアサインによって、事業環境の変化に対応できる人財の循環を実現

千代田化工建設はSAPの導入をきっかけに2012年からアビームコンサルティングが支援を開始した。アビームコンサルティングの提案力や企画から実現までの一貫した支援が評価され、コーポレートDXの重点施策の1つである、タレントマネジメントの推進についての支援を2022年12月から開始。アビームコンサルティングのリードのもと、コーポレート部門に限らず、各現場も巻き込んだディスカッションを実行し、千代田化工建設のタレントマネジメントに関する課題を以下のように整理した。

1. 世代間のギャップと継承の問題の解消
現在の人員構成には世代間のギャップが存在し、特に中堅層の退職(世代間の空洞化)が進む中で、組織運営に必要なノウハウや専門的知識の継承が不十分であった。この状態が継続すると将来の組織運営に支障をきたし、企業としての競争力が低下する恐れがあるため、次世代のリーダーや専門家の育成が急務となっている。

2. 事業戦略に対応した人財の獲得と育成
事業戦略の実現に向けて、新規分野へのEPC(設計、調達、建設)の拡大と継続型事業の確立が求められている。競争の激化に対応するため、特に事業開発に特化した人財の獲得と育成が必要不可欠であり、適切な人財の確保と育成計画を立てる必要があった。

3. 配置の最適化と可視化
現状では、プロジェクトへのアサインが個々の人間関係や暗黙知にもとづくことが多く、全社的な最適化が進んでいない。このため、組織全体での最適な配置や社員が自ら成長したい方向に向かっていく「自律的なキャリア」につながるアサインとして改善の余地がある。そのため、人財情報の可視化とデータにもとづいたアサインが実現できるような仕組みづくりが必要だった。また、社員にとって志向が薄いアサインである場合も、そこで得られる経験やスキルが、千代田化工建設におけるキャリアで、将来どのように活用されるのかを可視化することにより、自身のイメージだけでは想像もしなかったキャリアパスへの気づきを提供することで、社員のモチベーション向上を図ることにした。

4. 社員と会社が共にキャリアを育める環境の整備
多様な変化が発生する事業環境下において、社員一人ひとりが自律的に自らのキャリアを考えて成長していくことが求められている。そこに、会社としても社員のキャリア志向を把握し、対話をしながら適した成長の場を提供していく必要がある。また、社員がキャリアを考える上で、会社の事業の中で自らの可能性が大きく広がっていくことを知り、多様なフィールドで活躍できる"しなやかなマインドセット"を育むことで、社員が理想とするキャリアパスを実現できる環境整備が必要。

中期経営計画資料(出典:千代田化工建設)

プロジェクトの重要成功要因

過去の経験と今をつなぎ、さらに未来への軌跡を示すことで日々のモチベーションを生み出す

タレントマネジメント業務の企画・検討にあたっては、社員一人ひとりがキャリア開発の上で活躍の場を自身で見つけられることを重視し、そこに向かいどのようにデジタルの力を使うことで社員に思いをもってもらえるかに着目した。事業のためだけではなく、社員にフォーカスを置いて、社員が「自分の頑張り(キャリア)が見えた」「どんな過去があったから、今につながっている」「自分の将来のキャリアはこんなに可能性が広がっている」と実感できることを目標としている。特に以下3点を重点項目として、価値の実現を目指す。

  • 社員一人ひとりのキャリアをデジタルデータとして蓄積する
    • 「この人は何ができるのか」の情報源として、スキルではなく業務の経験に着目。要素技術×ポジション×案件分野という構造でデータ管理する。
    • データは集計し、社員同士で共有する。例えば「あの人はどんな事ができる人か」が一目で把握できるようにプロファイルで簡略化して可視化する。
    • 現在ではキャリア志向、面談結果、目標設定とその評価までデータ蓄積の内容が増えており、このデータを活用することで、今後さらに社員へのキャリアの可能性を提案することが見込まれている。
  • 社内の人財情報の活用ができる
    • 社員の経歴や資格だけでなく、収集した経験やキャリア志向からも人財を探ることができ、適所適材のアサインにつなげている。
    • 長期のキャリア志向、短期の目標管理、現在までの経験を統合して上司が把握可能な状態とし、業務遂行上、社員にとって満足感の高い環境の提供につながっている。
  • 未来の情報を見せる
    • 社員の経歴データを集約してデータを分析することで、自身のキャリアを起点にした場合、どのような年数でどんな未来の可能性が広がるかを可視化している。
    • 具体的なポジションや目指す上でのステップを明確に見せながら、自身のキャリアのさまざまな選択肢を考えていく楽しさをシステム上で示すことで、未来に向かうモチベーションの向上を目指している。

タレントマネジメントシステムの実装においては機能を細かく区切り、開発中にシステムの動作を確認することで、イメージとのギャップを解消していくことや、より良くするために必要な変更を加えながら推進していくアプローチを採用。新たな機能を段階的にリリースしていく中で、プロジェクトチーム全体としても成長を続け、検討品質の向上ができていることも、成功要因の1つである。閲覧可能なタレントデータの種類やデータ利用業務が拡大することによって、タレントマネジメントによる業務の可能性は膨らみ、成長をし続けている。

タレントマネジメントの全体像

アビームの貢献

クライアントと共に歩むアビームコンサルティングの柔軟な変革支援

アビームコンサルティングでは、企画~実現・運用までを一貫して支援。全てのプロセスを支援することで、業務目的に即しシステム化まで検討できることや、当初の方向性や想定と異なる要件が発生しても柔軟に軌道修正を行うことで、ユーザーにとって価値のある実現を進められている。また、システム稼働後もデータの活用や状況や運用状況を加味した上で、改善の実施や更なる利用活性に向けた推進を伴走型で行うことで、全社員が利活用できるタレントマネジメントの実現に貢献している。
また、実装アーキテクチャである、ローコードプラットフォーム(Outsystems)ではアビームコンサルティングの大規模基幹システム構築経験を活かした独自フレームワークを活用することで、汎用パッケージでは実現できない、従来のタレントマネジメントの枠を超えたタレントのエンパワーメントを期間を抑えながら実現できている。

会社として目指す姿を理解し、それを達成するための業務を意識しつつ、デジタル面での実現を考えるためには多角的な視点が必要であり、クライアントに寄り添い、共に調べ・考え抜くことで、現在プロジェクトとして重視している「個人の活躍」の最大化を目指す方向感を策定。その中で特に特徴的な活動としては下記のような貢献を行っている。

  • タレント活用の最前線である現場部門に積極的に議論を持ち掛け、部門ごとのタレント管理のキーパーソンと共にタレント管理の構想を策定。本部・部門ごとの業務の特性や重要点を理解し、事業活用に直結できるタレント活用の視点を取り入れた。
  • 正解がなく考え方が多様な中、「先端技術も活用の上、どのようにすればできるのか」を理想だけを描くのではなく、運用負荷やコスト面も意識した、現実解を視野に入れ共に考え抜き、全体のバランスをとった実行計画を立案。

今後の展望としては、スキル・コンピテンシーといった、タレントを構成する残りの要素を全て本プラットフォーム上で一元管理を行える状態を目指す。またその過程で、AI技術も積極的に活用し、自動収集などによるデータ鮮度の維持への活用も検討。将来的にはグループ会社への展開も行うことで、より広範囲での柔軟なアサイン・機動的な人員配置の実現を目指している。活躍の場の広がりや可視化によって社員にとってはキャリアを自ら表明したくなるようなスキームも構築し、会社・社員の双方向で思いをぶつけあえる、未来型のタレントマネジメント業務の構築を目指している。


当社で働く人が誇りと情熱を持って活躍してほしい。その想いから始まったプロジェクトでした。そのためには、「自分が何をしてきて、これから何をしていくのか(したいのか)」ということを明確にする、キャリア自律が重要であると構想の段階から支援していただき、整理してきました。 当社が有していた人財情報を活用することにより、タレントをマネジメントするのでなくエンパワーするような取り組みにできるはずだと、アビームコンサルティングのメンバーと協議しながらこの考えを導入し、システムを構築することができました。また、開発に当たって、各部門の巻き込みも実施していただき、全社を巻き込んだシステム構築につながりました。

千代田化工建設株式会社
人事総務本部 人事部 人財開発セクション セクションリーダー
柳町 紀光氏

Customer Profile

会社名
千代田化工建設株式会社
所在地
神奈川県横浜市西区みなとみらい四丁目 6番2号 みなとみらいグランドセントラルタワー
設立
1948年1月20日
事業内容
総合エンジニアリング事業 (ガス、電力、石油、石油化学、一般化学、医薬品等の設備並びに公害防止・環境改善・保全及び災害防止用等の設備に関するコンサルティング、計画、設計、調達、施工、試運転及びメンテナンス等、石油・天然ガスその他鉱物資源の開発、関連事業に関する投融資)
資本金
150億14百万円
千代田化工建設株式会社

2025年9月19日

専門コンサルタント

  • 坂本 孝司

    Principal
  • 鈴木 伸昌

    Director

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