次世代モビリティ対応の基幹物流施設開発に向けた構想を策定 幹線輸送の自動化・効率化を通じて物流課題の解決に貢献

三菱地所株式会社
事例
  • サプライチェーンマネジメント
  • 交通・運輸・物流
三菱地所株式会社

総合不動産会社として、国内外で事業を展開する三菱地所は、ドライバーの高齢化に伴う幹線輸送能力不足が予測される「物流2030年問題」など社会課題の解決に向け、次世代モビリティに対応した「基幹物流構想」を掲げている。アビームコンサルティングは物流業界における知見を生かし、当該構想を実現するための支援プロジェクトにおいて、事業モデルや業務プロセスの整理、システムデザインの検討を支援した。本プロジェクトで整理された事業概要やシステムデザイン、ロードマップをもとに、三菱地所は2026年度下期にPoC(概念実証)の実施を予定しており、基幹物流施設の開発に向けた取り組みをさらに進めていく。

経営/事業上の課題

  • 物流業界の構造変化を踏まえ、不動産開発にとどまらない新たな価値提供モデルとして、物流施設の役割を再定義する必要があった
  • ドライバー不足や幹線輸送の制約を背景に、従来の個別最適や施設単位の効率化では対応しきれず、物流拠点を含めた輸送ネットワーク全体の再設計が求められていた
  • 次世代モビリティや共同物流を前提とした将来構想を、単なるビジョンにとどめず、事業として実行可能な具体的計画へ落とし込むことに難しさがあった

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • 次世代モビリティや共同物流を前提とした物流構造を整理し、基幹物流施設を中核とした輸送ネットワーク全体の事業構想の具体化を支援
  • 物流業界の構造理解とIT構想力をもとに、複数プレーヤー間の役割分担やシステム・データ連携の前提条件を整理し、事業モデル・業務プロセスと一体での実行可能な全体設計の推進

支援の成果

  • 基幹物流構想を、輸送ネットワーク再設計を含む統合的な事業構想として整理し、物流拠点の役割や位置づけを明確化
  • 構想実現に向け、システムデザインやPoC計画を含む実行ロードマップを具体化し、事業推進に向けた意思決定基盤を確立

プロジェクトの背景

次世代モビリティ対応の基幹物流施設による幹線輸送を構想

三菱地所株式会社(以下、三菱地所)はオフィス・商業施設・ホテル・物流施設の開発・賃貸・運営管理をはじめ、海外事業、投資マネジメント事業、空港事業、設計監理や不動産仲介、エリアマネジメントなどを手がける総合不動産会社である。同社は、「私たちはまちづくりを通じて社会に貢献します」というグループ基本使命のもと、サステナビリティビジョン2050で定める「Be the Ecosystem Engineers」を長期経営計画における社会価値向上戦略と株主価値向上戦略、両輪の経営の共通基本方針として掲げており、この方針のもと、さまざまな社会課題への対応にも取り組んでいる。
近年、物流業界においては、ドライバー不足や高齢化に伴う将来的な輸送能力不足が大きな社会課題となっている。日本の物流は約6万社の運送事業者に支えられているが、国土交通省は2030年に必要な輸送能力の約34%が不足すると試算している。「特に長距離輸送の持続性が大きな課題になっており、東京・大阪間でも従来のような運行が難しくなると想定されています。物流会社はモーダルシフトやリレー方式によって、いわゆる「物流2024年問題」と呼ばれたドライバー不足へ対処しているものの 、いまだ根本的な解決には至っておらず、長期的には輸送方式そのものの再設計が必要です」と三菱地所 物流施設事業部 基幹物流事業推進室長 桂木 悠斗氏は話す。
こうした背景を踏まえ、三菱地所は、自動運転トラックの連結・解除を行うモビリティプールや、幹線輸送を担う自動運転トラックと地域輸配送を担う有人トラックとの間で荷物の受け渡しを行うオープンクロスドックなどの機能を備えた高速道路インターチェンジ直結型の基幹物流施設の開発構想を立ち上げた。レベル4自動運転トラックなど次世代モビリティの活用により、幹線輸送が抱える課題の解決を目指している。
また、自動運転システム開発等を手がけるT2(東京都千代田区)に出資し、基幹物流施設間を結ぶレベル4自動運転トラックによる幹線輸送の実現に向けた実証実験にも取り組んでいる。「私たちはこれまで、不動産会社として物流施設の開発・賃貸を中心とした事業を展開してきました。今回の取り組みでは、それにとどまらず、システムや自動化設備といった付加価値を組み合わせることで、三菱地所の強みである多くの荷主物流会社との関係性や物流施設開発のケイパビリティを生かし、次世代モビリティに対応した基幹物流施設を創造できると考えています」(桂木氏)。

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議論を重ねることで、相互理解も深まっているので、アビーム様とは幹線物流を軸に物流の変革に向けたパートナーとして協創していきたいと考えています

三菱地所株式会社
物流施設事業部
基幹物流事業推進室長
桂木 悠斗氏

出典:三菱地所株式会社作成『基幹物流構想~次世代モビリティに対応した「社会課題解決型 次世代基幹物流施設」の開発に向けて~』 出典:三菱地所株式会社作成『基幹物流構想~次世代モビリティに対応した「社会課題解決型 次世代基幹物流施設」の開発に向けて~』

アビームの選定理由

物流業界とITの知見にもとづいた、実現性の高い提案を評価

基幹物流施設を円滑に運営していくためには、自動運転トラックと荷主・物流会社などの物流現場をシームレスにつなぐ輸送・拠点・関係者をまたいだ物流構造全体の設計が不可欠であり、その中核となるシステムデザインの検討が重要な課題となっていた。しかし、そのシステムデザインを三菱地所単独で検討・策定することは容易ではなかった。そこで同社は、物流業務とITの知見を併せ持つコンサルティング会社をパートナーとして、本構想におけるあるべき姿を明確化するためのシステムデザイン構想の策定を進めることにした。
三菱地所では複数のコンサルティング会社から提案を受け、パートナー選定に向けたコンペを実施した。約3カ月にわたる議論・検討を経て、最終的にアビームコンサルティングをパートナーとして選定した。
最大の理由は、物流とシステムの両面で豊富な知見を有しており、事業構想とシステムデザインを一体で設計できる点である。物流現場とシステムを的確につなぐためには、業界特有の慣習を理解した上で、それをシステムに反映していくことが不可欠であり、その点でアビームの提案は高く評価された。加えて、選考過程でのコミュニケーションにおいて、ファシリテーション能力の高さやレスポンスの速さも印象的だったという。
「コンサルティング会社には、自動運転トラックの誘導とオープンクロスドックの2点を柱とした提案を依頼していました。その中でアビーム様はより難易度の高いオープンクロスドックに焦点を当てて検討すべきだという提案でした。構想した事業に対する解像度が高く、課題を的確に捉えていた点が決め手となりました」と三菱地所 物流施設事業部 物流価値創造ユニット 兼 基幹物流事業推進室 主事 髙栁 祥平氏は語る。

プロジェクトの目標・課題と解決策

対話を重ねることで課題をブラッシュアップし、ゴールを明確化

基幹物流構想の実現に向けたシステム化構想支援プロジェクトは、2025年10月から2026年1月までの約3カ月間にわたり実施された。プロジェクトでは、ビジネスモデルの整理に始まり、システム要件・機能の検討、さらにオープンクロスドック事業に関する事例共有を行い、最終的にPoCの実施領域とシナリオ、全体ロードマップの策定までを行った。
本プロジェクトが目指す内容は、三菱地所にとっても前例のない取り組みであり、物流業界全体を見ても参考となる事例がほとんど存在しなかった。そのため、どのようなビジネスモデルが適切なのか、既存の物流モデルや不動産開発の枠組みが適用できず、複数の前提条件を同時に定義しながら検討を進める必要があった。
セッションを重ねる中で、構想段階では曖昧だった論点が徐々に整理され、ビジネスモデルに対する考え方次第に明確になっていった。議論の過程で、アビームは各フェーズにおいて最適と考えられる案を提示するとともに、他社が運営する類似事例について、そのポイントや課題を整理した上で共有した。さらに、それらを踏まえ、基幹物流構想でのオープンクロスドックの取り組みにおいて検討すべき対策を仮説として体系的に整理し、議論を深めていった。
三菱地所のプロジェクトメンバーとアビームのコンサルタントが継続的に対話を重ねることで、検討すべき課題は次第にブラッシュアップされ、最終的にはゴールとして目指すべき姿が明確になった。「コンサルタントとは頻繁にコミュニケーションをとりました。セッション以外の時間でも、思いついたアイデアをチャットで共有するとすぐにレスポンスがあり、信頼関係が深まりました。その結果、セッションでの議論もより活発で実りのあるものになったと感じています」(髙栁氏)。

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オープンクロスドックの運営も含めた提携のあり方など、アビーム様には今後様々な方面での支援をお願いしたいと思います

三菱地所株式会社
物流施設事業部
物流価値創造ユニット 兼
基幹物流事業推進室
主事
髙栁 祥平氏

プロジェクトの成果と今後の展望

2026年度下期にPoC実施を計画、幹線輸送変革に向けた一歩を踏み出す

議論を重ねた結果、基幹物流構想におけるシステムの全体像が可視化され、必要となる機能が明確になった。当初、三菱地所がアビームに依頼したのはシステムデザインの策定だったが、事業モデルや業務プロセスまで踏み込んで整理を進めたことで、構想全体としての課題が明らかになった点は、本プロジェクトの大きな成果である。
また、基幹物流施設の施工に至るまでのスケジュールが整理され、構想実現に向けた具体的な道筋が描けたことも重要な成果の一つだった。幹線物流という新たな領域への参入は容易ではないという認識が社内でもあったが、本プロジェクトの成果をもとに社内で説明を行った結果、事業化に向けた大きな足がかりを得ることができたという。
「プロジェクト開始当初は、2030年までまだ時間があるという感覚でした。しかし最終的な整理を経て、専門性を持つパートナーと早期に取り組みを始めなければ間に合わないという認識に変わりました。事業スキームからオープンクロスドック、協業パートナーシップまで具体的かつ踏み込んだ内容で検討できたことで、上司を含め社内で非常に高い評価を得ることができました」(桂木氏)。
プロジェクトを進める中で、物流業界は依然として人に依存する業務が多く、長年の慣習やファクシミリ・電話を中心とした受発注など、非効率な構造が存在していることも改めて認識された。幹線輸送においても、積み荷の確保をはじめ、複数の課題が残されている。一方で現在は、オープンクロスドックを備えた基幹物流施設や、自動運転トラック、ダブル連結トラックといった次世代モビリティの活用を通じて、幹線輸送の効率化を図る過渡期にある。「今回のプロジェクトを契機に、物流関係者とのコミュニケーションや協業をさらに広げ、日本の物流構造全体の変革につなげていきたいと考えています」(髙栁氏)。
三菱地所は、2026年度下期のPoCの実施を目標に、上期中に具体的なシナリオ策定を進める予定だ。PoCはオープンクロスドック実現に向けた重要な起点と位置づけられて、運用方法を含め、さまざまな検討テーマが想定される。今後もアビームを重要なパートナーとして、幹線物流の変革に向けたさらなる協創関係の構築を目指していく。

Customer Profile

会社名
三菱地所株式会社
所在地
東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビル
設立
1937年
事業内容
オフィスビル・商業施設・ホテル・物流施設等の開発、賃貸。国内外での収益用不動産の開発、販売。住宅用地・工業用地等の開発、販売。空港・余暇施設等の運営 不動産の仲介・コンサルティング。資産運用事業
資本金
1424億1426万円
三菱地所株式会社

2026年7月2日

専門コンサルタント

  • 猿渡 一仁

    猿渡 一仁

    Director

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