――ここまでを振り返り、このプロジェクトにおけるアビームコンサルティングの役割をご説明ください。
柳澤氏:今回Trunkで目指した世界観は、「兵力(人手)」ではなく「武器力(デジタル)」によって成果を最大化することでした。数多くいらっしゃるSMEのお客さまに対して、アナログな手法を前提に対応を続けることには限界があります。だからこそ、人手に依存した業務は徹底的に見直し、デジタルの力で効率化と拡張性を高めていく必要がありました。
ただ、その難題をクリアするには無数の課題があるなかで何から始めたらよいのか分からず、早急に信頼できるパートナーを見つけることが必須でした。アビームコンサルティングは金融業界の知見を持ち、必要なケイパビリティを持ったリソースも豊富であるため、サポートいただくことにしました。
先行事例やマーケット構成などの情報提供、協働して取り組んだインタビューなど市場調査からインサイトを導き出す分析力、事業計画の策定とそれを踏まえたプロジェクトマネジメントとその推進まで、一気通貫かつ適時適切なサポートがあったからこそ、ここまでたどりつくことができたと感謝しています。
ただ今回、これにも増して感謝しているのは、アビームコンサルティングの事業構想力です。今回のプロジェクトは、従来の金融機関の延長線上にあるものではなく、まさにゼロイチが求められる状況でした。
当行にはSMEというセグメントに対する知見や実績が充分ではなかったことに加え、立ち上げ時のプロジェクトメンバーは、私を含めごく少数でした。今回のように難度の高いプロジェクトを、どのように筋道を立てて前に進めていくべきなのか。率直に言えば不安の方が大きかったのは事実です。
そうした中で、アビームコンサルティングは、金融という高度な専門性が求められる領域であっても、白紙に近い状態から新規事業の構想を具体化し、前に進めていく力を持っていました。当初は無数に存在するように見えた課題を整理・分類し、時系列で構造化した上で、何をどのように解いていくべきかを明確に示してくれたのです。今回の案件を通じて、大規模プロジェクトを推進する上での考え方や進め方を単なる知識としてではなく私どもの実践知として確立することが出来ました。
田辺:今回のような将来を担うデジタルネイティブのニーズを捉えた金融サービスは、持続可能な価値を提供できるビジネスモデルだといえます。こうした視座の高いプロジェクトに構想段階から関われたことをとても誇りに感じますし、今後Trunkをご利用いただくお客さまのなかから、日本経済を牽引するような成長企業が現れるのではと考えると、社会的価値という観点でもとても大きな意義を感じます。
――ここまでの経緯を踏まえて、どのような点に今後の可能性があるとお考えでしょうか。
田辺:リリースまでの支援が完了した今、主眼はリリース後の安定稼働フェーズに移っています。主な支援内容は、リリース後のPDCA体制の確立、事業計画の見直し、また目標達成に向けた口座開設・審査業務の更なる高度化、そして中長期的な取り組み内容の具体化などです。加えて今回のデジタル化によって、さまざまな可能性も視野に入ってくると感じており、一層のサービス高度化に向けたご提案の余地があると考えています。
柳澤氏:たしかにおっしゃる通りだと感じます。ここに至るまでの過程では、業務をデジタル化すること自体、そしてそれによる効率化や迅速化の実現などが主眼にありました。ただ、今回の一連のDXがもたらした価値はそれだけに留まりません。大きな成果の一つは、お客さまの情報を蓄積し、データベースとして活用できる形に転換できたことです。これは今後のSMBCにとって極めて大きな意味を持つものになると期待しています。
これまでアナログや対面を前提としていたことで、顧客情報はどうしても断片的かつ限定的なものに留まりがちでした。しかし今後は、それらが重要な資産へと変わっていきます。そうなれば、お客さまの利用状況に合わせた新たな提案や新サービスの構想、各種施策の立案が可能です。関係する行員がアクセスすることで、お客さま向けの施策や仮説の検証もより高度かつ機動的に行えるようになります。これはまさに「データの民主化」が現実のものとなるフェーズの到来だと言えます。さらにその先にはAI活用も視野に、お客さまへの提供価値を飛躍的に高めていく源泉にもなると感じます。
――今後Trunkは、どのようにお客さまに対する価値を高めていくご予定でしょうか。
柳澤氏:Trunkは、足元で【5万口座】を突破し、既に非常に多くのお客さまにご利用いただいています。今回改めて実感したのは、デジタルを活用したサービスが持つ可能性の大きさです。これまでは拠点網や人手といった物理的な制約が少なからず存在していましたが、デジタルの力によって、そうした垣根を越えてお客さまに価値を届けられる世界が現実のものになりつつあると感じています。
実際に、Trunkのユーザーの方々は既に全国47都道府県に広がっており、老若男女を問わずご利用いただいています。お客さまから温かいお言葉を頂戴することもあり、これまで一貫してカスタマーセントリックを追求してきたことが着実にお客さまへの価値として届き始めていることを実感します。そうした反響に触れるたび、これまでの検討の歩みが確かな手応えとして返ってきていることを強く感じます。
私たちが向き合っているSMEセグメントのお客さまは、日本の企業の99.7%を占めています。そうしたお客さまの毎日を金融サービスの面から支え、本業により専念し事業成長に力を振り向けられるようにすることは、日本の再成長にとっても極めて大きな意義があると考えています。Trunkを起点に今後も提供価値の進化に挑み続け、その先にある新たな金融体験を切り拓いていきたいと思います。