Mitutoyo Korea Corporation

ERPアップデートとシームレスな情報共有の実現が課題 CRM導入を含む全社IT基盤刷新で業務のDX化を推進
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Mitutoyo Korea Corporation

高精度な計測ソリューションを通じて韓国製造業を支えているMitutoyo Korea Corporationは、中期経営計画に基づく成長戦略を実現するため、組織間の連携・情報共有を進める必要があった。そこでERP刷新を含めたDXに取り組むことになり、パートナーに選んだのがアビームである。同社の長年の課題だった営業・サービス部門の連携強化に向け、アビームはSalesforce製品の導入を提案。現場社員の参画を促して顧客情報を軸とした部門連携と情報の利活用促進を支援し、変革に向けた同社社員の意識改革が進んでいる。

経営/事業上の課題

  • 社内組織間の連携が進まず、顧客情報が分散していたため統合的な顧客対応に課題
  • 老朽化したERPにより、生産性・効率性向上に限界

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • Mitutoyo Korea Corporationの中期経営計画推進に向けてアドバイザリーとして参画し、ERPの刷新を含むDX推進プロジェクトを提案。PMO(プロジェクトマネジメント)としてERP刷新・RPA導入をサポートするとともに、営業・サービス部門の情報共有に向けてSalesforceの導入の提案と実装を支援

支援の成果

  • ERP刷新・RPA導入からCRM導入まで3年半にわたる大規模プロジェクトの円滑な進行を実現
  • プロジェクトのフェーズに合った柔軟なチーム体制の構築と、チェンジマネジメント手法による社員へのゴール周知や意識付けを支援
  • CRM導入に当たり、営業・サービス部門を中心とした現場社員の関与を奨励、現場の意識改革に貢献

プロジェクトの背景

組織間の壁と情報共有に課題、ERPの刷新とCRM導入に着手

精度の高い計測を可能にするマイクロメータの国産化を目指し、1934年に研究所としてスタートしたミツトヨ。1938年に株式会社となり、戦前・戦中・戦後の日本のものづくりを測定分野から支えてきた。近年は、生産プロセスの根幹であるラインを測定データでつなげ、ラインに計測結果を迅速にフィードバックすることで、より高品質な製品を生産できるソリューションに注力している。
1994年にスタートしたMitutoyo Korea Corporation(以下 Mitutoyo Korea)も、時代に即した新たな計測ソリューションの提案に取り組んでいる。測定機材の自動化による生産力強化や、韓国の基幹産業である自動車・半導体の需要拡大に向けてさまざまな提案を行ってきた。Mitutoyo Korea 理事 堀恵 淳氏は「米大陸、アジア、欧州など世界中に工場を展開している韓国製造業のニーズに応えるため、世界中どこでも同じソリューションやサービスを提供できることが我々の強みです」と話す。
同社が中期経営計画2024を策定したのは2019年のことだ。「変わる・変える・つなぐ」というキーワードの下、新たな価値提供に向けた展開が必要になった。
2020年に韓国に赴任した堀恵氏は、中期経営計画の実践に向け、Mitutoyo Korea各部門マネジャーへのヒアリングを実施。その結果、社内組織間で壁があり、情報共有が進んでいないという課題が浮上した。
「組織間の壁を解消していかないと、『変わる・変える・つなぐ』というスローガンの下でお客様とつながることもできません。そう考えて改めて社内を見渡すと、部門が連携していくための土台やツールが十分ではないことに気付きました。土台を整備し、抜本的な業務改革を推進するために、DX化は必須だったのです」(堀恵氏)
同社では2008年に韓国国内のSIerが開発したERPが稼働していたが、部門間連携や効率化のためには活用されていないという問題があった。部門間の連携や情報共有が進まない理由にもう1つ、当時、同社にCRMシステムは導入されておらず、営業部門とサービス部門で顧客情報が共有できていなかった。情報が分散されているため情報収集に工数がかかり、Mitutoyo Koreaとして一体感のある対応ができていなかったのである。
これらの解決に悩んでいた時に出合ったのが、アビームコンサルティング(以下、アビーム)であった。

当社のビジネスフィールドは韓国です。韓国のビジネスやカルチャーに即した付加価値の高い提案やプロジェクトの推進・戦略策定の支援に今後も期待しています

Mitutoyo Korea Corporation
理事
堀恵 淳氏

アビームの選定理由

DXへの知見と大規模プロジェクトマネジメントの実績を評価

「アビームとの出合いは、業務効率化に向けて前任者がRPAについて相談したことがきっかけでした。私もRPAに関心があり、具体的な展開のやり方や活用法を知りたくて、前任者に紹介してもらったのです。そこでアビームが、私たちが目指したいDXに対して非常に深い知見を持っていると感じました。ERP刷新やDXの具体的な進め方にも詳しく、パートナーとして頼りになると思いました」(堀恵氏)
アビームを選んだ理由はもう1つあった。それはアビームが日本発のコンサルティングファームであり、日本企業の経営やガバナンスの考え方、さらには日本語のニュアンスを理解してくれることだ。アビームなら、堀恵氏をはじめとする同社の経営層が目指したいことややりたいことを日本語で相談しながら、韓国企業であるMitutoyo Koreaの組織風土を踏まえてシステム改革プロジェクトを推進していけるという安心感があった。

プロジェクトの目標・課題と解決策

CRM導入プロジェクトで、営業やサービスの意識改革に取り組む

こうして2021年9月から、Mitutoyo KoreaのDX化に向けたプロジェクトがスタート。アビームはまずアドバイザリーの立場で、中長期的に目指すべき姿の具体化を支援し、さらに実現に向けたロードマップを提案した。2021年後半から2022年はフェーズ1としてERPの刷新を最優先事項とし、並行してRPAを展開することで既存業務の効率化とデジタル変革を推進。ベースが整った2022年にはフェーズ2としてCRM導入プロジェクトを進め、2024年はフェーズ3としてより高度な改革を展開するというものだ。
部門を横断する大規模プロジェクトとなるため、アビームが全体のプロジェクトマネジメント役となり、堀恵氏を中心とするMitutoyo Koreaのプロジェクトチームをバックアップした。フェーズ1と2にまたがるERP刷新・RPA導入では、「スモールスタートで成功を重ねること、将来的に社内メンテナンスができるように体制を整える」というアビームの実践的なアドバイスの下、プロジェクトを進めていったことが「非常に心強かった」と堀恵氏は振り返る。特にRPA導入の時は、成果を出している部門がその事例を社内で紹介することで関心を集め、他部門も活用アイデアを積極的に出し、導入が加速したという。進捗具合は月1回の定例会で共有した。
2022年後半からは、いよいよCRMの導入が始まった。採用したのはSalesforceが提供する「Sales Cloud」だ。Mitutoyo Koreaがやりたい要件に最も適していること、韓国内でも普及しており安定したサービスが受けられることが評価ポイントだった。
CRM導入に当たっては、アビームからプロジェクトの進め方について提案があったという。
「CRMは業務全体の効率化だけでなく、蓄積された情報を利活用するためのプラットフォームです。そのため現場のスタッフにも『このプロジェクトを自分ごととして捉え、積極的に参画してもらうことがポイントです』とアビームから提案がありました。そこで目指すべきゴールについて、要所要所でスタッフに伝える機会を設けること、年次戦略のなかで経営陣のメッセージとして発信することなどを通じ、社員の理解や関心を促すように務めました」(堀恵氏)
これにともない、プロジェクトの進め方も変更した。これまで閉じられた状況で行っていた月1回の進捗会議ではなく、堀恵氏やアビームが参加するオープンなPMO会議を開いて、多くの社員が関与できる体制を構築した。こうしてさまざまなステークホルダーを巻き込みながらプロジェクトを動かしていくことで社員の納得感を醸成し、現場のフラストレーションの解消に取り組んだという。
「CRMの前にRPAに取り組んだことで、社内に『やり方を変えていこう』という空気が少しずつ生まれてきました。まだ100%ではありませんが、その空気感がSalesforceの導入につながっていったように思います」(堀恵氏)
2023年4月からは新たに「Service Cloud」の導入を開始した。業務の棚卸しから要件定義、優先すべき実装範囲についてはアビームが主体となり、実現に向けたスケジュールを策定して進められた。

プロジェクトの成果と今後の展望

顧客情報の共有や利活用への関心が向上、今後は代理店との連携を強化

2024年はSales CloudとService Cloudの連携を含め、より高度な要件の実装に取り組んだ。2025年4月現在も実装は進められているが、営業部門やサービス部門の行動や意識に変化が見られるようになったという。
「Sales CloudとService Cloudが本格稼働を開始したことで、社内に『情報共有のために入力したり、業務に活用したりしよう』という意識が芽生えるようになりました。営業部門とサービス部門同士や、上長と社員でSalesforceを見ながらコミュニケーションを取り、次の打ち手を考える雰囲気が生まれています」と堀恵氏は話す。
次は「Experience Cloud」を導入し、同社と販売代理店をつなぐポータルサイトの実現を目指す予定だ。将来的にはその先にいる顧客企業ともつながり、全社一体となったワンチームでユーザーの課題解決に当たることで、エンゲージメント強化を図っていきたいと考えている。顧客情報を活用したマーケティングなど、新しいことにも挑戦していく予定だ。
「今年から新しい中期経営計画2029がスタートし、そのキーワードは“変える・つなぐ・超える”です。お客様の期待を超えるソリューションとサービスを提供することの実現に向けて、アビームは戦略策定から実現に至るまでトータルでサポートしてくれる重要なパートナーです」と堀恵氏は評価している。

Customer Profile

会社名
Mitutoyo Korea Corporation
所在地
33,Eungyejungang-ro 306beon-gil, Siheung-si, Gyeonggi-do, 15120 KOREA
設立
1994年
事業内容
製造業向け計測機器・ソリューションの提案
資本金
2億4000万円
Mitutoyo Korea Corporation

2025年5月16日

  • 会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

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