NECファシリティーズ株式会社

高まる市場需要に応えるべく、施設管理業務の生産性向上を実現 “経営の思い”を具体化した次期ビジネス構想の策定を全面支援
事例
  • 経営戦略/経営改革
  • 新規事業開発
  • 機械
  • 電機
NECファシリティーズ株式会社

工場の建設、施設管理、不動産管理などを手がけ、顧客企業の経営基盤を支えるNECファシリティーズ。同社は高まる国内半導体工場の施設管理業務への対応力向上と経営の思いを具体化した次期ビジネス構想「り・ふぁしDXプロジェクト」の実施を決めた。その推進パートナーとして選んだのが、アビームコンサルティングだ。
アビームコンサルティングは経営の思いを社内に浸透させる伴走役となり、経験豊富な社員の力を引き出し、施設管理業務の生産性30%向上へ道筋をつけた。加えて、次期ビジネス構想策定なども順調に進んでいる。

経営/事業上の課題

  • 拡大する国内半導体工場の施設管理需要、その対応力のさらなる向上
  • 次期ビジネス構想策定に対する社員の意識変容

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • 経営の思いを具体化した新たなビジネス構想の策定と、社員の意識変容を促しプロジェクト推進を実現するための活動支援

支援の成果

  • 施設管理業務の生産性30%向上達成の道筋が立った
  • 社員の意識変容の中での次期ビジネス構想策定推進を実現

プロジェクトの背景

急増する半導体工場の施設管理需要に応えるため、100日プランを作成

1966年創業のNECファシリティーズは、工場施設の建設および施設管理業務のアウトソーシング事業を行っている企業である。同社は、用地の取得、工場施設と設備の建設・管理・修繕・保全という工場のライフサイクル全体を通じ、効率化やリスク対策を推進するTotal IFM(Integrated Facility Management)で、顧客企業に貢献している。
政府が国策として行う半導体産業育成への予算投下や、海外半導体企業の工場建設など、国内の半導体業界は大きな成長が見込まれている。これを受け、NECファシリティーズの顧客でもある半導体企業では、新たな工場の建設や既存工場での生産ラインの増設を急ピッチで進めようとしている。
こうした中、NECファシリティーズ株式会社 代表取締役執行役員社長 橋谷 直樹氏は、社長に就任した2023年6月から3カ月ほどかけて、顧客や協力会社などへヒアリングを行ったうえで、人材効率を上げ、増大する需要に応えることで会社を成長させるための100日プランを作成した。「この数年の著しい需要増加に対し、当社にはそれに応えるだけの余裕がないことが分かりました。このままではせっかくのチャンスを生かすことができないという危機感が生まれ、100日プランを作ったのです」と橋谷氏は語る。

アビームにはこれからも『世の中の変化が私たちの事業に与える影響』を見定めて、最適な打ち手をアドバイスしてもらいたいと思います

NECファシリティーズ株式会社
代表取締役執行役員社長
橋谷 直樹氏

アビームの選定理由

地に足のついたプロジェクト運営と現場業務の豊富な知見を評価

NECファシリティーズの社員は日本のエレクロニクスメーカーが 世界の半導体市場の中心だった昭和から平成の時代にかけて工場の施設管理を手がけているメンバーが多く、それが「匠の技」として業務の中で生かされている。一方で、日々の担当業務に集中しており、会社全体の変革と新たな価値を生み出すためのビジョンを実践していく経験がなかった。そこで、社員1人ひとりが100日プランに描かれた成長戦略について納得し、自身の考え方と行動のあり方を転換して、会社の成長にむけた推進役になることが求められていた。「まず従来のやり方を、良い点は残しながら見直すべきところは見直し、その上で社員と一緒に未来を見据えた取り組みをしていこうと考えました。社員には日本の半導体産業の栄枯盛衰を経験してきたメンバーがたくさんいて、そういった経験から『来年の見通しも分からない中で、施策も打ち出しようがない』というマインドが支配的でした。そのことに対し、『実在する需要に応え切れていないという現状に気づければ、ただちに取り組むことがあるはずだ』と語りかけ、意識の変容と経営方針の浸透を図ることにしたのです」(橋谷氏)。
ただ橋谷社長1人の力だけではそれらを社内全体に浸透させていくことに限界があった。そこで、コンサルティング会社をパートナーとして、プロジェクトに取り組むこととし、数社を比較検討した結果、アビームコンサルティングを選んだ。選定の理由は、高い専門性、つまり半導体業界に関して、現場業務にまで踏み込んだ知見や実情を理解していることに加え、アビームコンサルティングの地に足がついたプロジェクト運営力にあった。アビームコンサルティングは、過去にNECにおける「経営・ファイナンスプロセス刷新プロジェクト」の運営に携わる中で、時には耳の痛い課題も労を厭わず提言するなど地に足がついた寄り添いによってプロジェクトを推進していた。この姿勢や運営力は、当時NECに在籍していた橋谷社長の耳にも届いていたという。このことから、今回のプロジェクトにおいてもアビームコンサルティングの活躍が容易に想像でき、選定に至った。

プロジェクトの目標・課題と解決策

施設管理業務の生産性30%向上と次期ビジネスモデル立案を目指す

NECファシリティーズでは、2023年10月からアビームをパートナーに、「不確実性に対応するために、データを活用したビジネスモデルに変革する。そのために『自ら変革し続ける人と組織・文化』を作る」ことを掲げた「り・ふぁしDXプロジェクト」を開始した。プロジェクトは、次期中期経営計画を見据えた新たなビジネスを軸とした全体構想を策定するものだ。まず、これまで個々で進めてきていた社内プロジェクトについて、中期経営計画とその前提となる成長戦略での位置づけを明確化した。つぎに、各プロジェクトを目指すべき成果と関連づけると共に、必要に応じて現行の社内プロジェクトを再定義し、実行可能な計画にしていくことにした。
アビームは橋谷社長をはじめとした経営陣を全面的にバックアップし、プロジェクトで描いた成長戦略と実行体制に社員が納得して、自らの考え方と行動のあり方を転換していくために、現場まで入り込んだ活動をしていくことを計画。半導体業界の動向を分析することでNECファシリティーズの将来像を導き出し、ビジネスモデルの検討も行うことにした。
こうして、アビームを変革全体管理PMOとして、FM(ファシリティマネジメント)業務生産性向上、匠ノウハウ形式知化、FM業務センター化、デジタルFM基盤(IoT)構築、FDP構築、デジタルFM将来構想立案、人材マネジメント改革、FM営業改革、経営管理高度化、新コーポレートモデル構想立案の10のプロジェクトが立案され、取り組みが始まった。「会社の人材の8割が施設管理事業に携わる中で、多少の人材を増やしても需要には追いつきません。そこで社員の生産性を30%上げて、受託する施設管理業務を増やし、売上と利益の拡大を図ることをFM業務生産性プロジェクトの基本にすえました」(橋谷氏)。施設管理業務をデジタル化して施設を効率的に運営できるようにしていくと共に、ノウハウを競争優位の源泉にするために、電力、水、クリーンルームなど各分野の匠の力を形式知化して、サービスとして提供しようと計画した。
アビームは10のプロジェクトについて、経営陣の方針と思いを理解し、プロジェクトごとの目標や時間軸など設定したテンプレートにもとづき、社員を様々なかたちで説得し、主体的な参加を促すような取り組みを進めていった。プロジェクトに参加する社員の意識にも濃淡があり、計画達成に意欲的な人もいれば、懐疑的な人もいる。特に意欲的な社員は職場で孤立しがちになるので、意識的にフォローアップを行い、プロジェクトに前向きに取り組むことができるように地に足のついた支援を行っていった。

プロジェクトの成果と今後の展望

新たな事業モデルで企業価値を高め、製造業の競争力向上を支える

半年にわたって経営陣とアビームが連携した取り組みを通して、目標とする生産性30%向上に向けて先頭に立って取り組む社員が出てきている。考え方と行動を大きく転換した1人が九州の大規模工場で施設管理業務を担当していた中堅の社員である。「その社員は自分でエネルギー最適化などに取り組み、Excelのマクロを作ったりしていたのです。その力と経験を会社全体で生かせないかと考え、東京に異動してもらい、生産性向上を目指すうちに、新しいアイデアがいろいろと生まれてきました」(橋谷氏)。
もう1人、60歳を迎え退職を考えていた社員にあと5年、社員の先頭で仕事をしようと説得し、次のビジネスモデルを考える新たな領域を担当させた。その経験豊富な社員が先頭に立って、施設管理の現場や協力会社の話を聞いた結果、20ほどのアイデアが出された。そのアイデアに対し、橋谷社長やアビームのコンサルタントが他の業界での動きをアドバイスすることで、100以上のアイデアが生み出され、新たな領域でのビジネスモデル検討の大きな力になった。
こうした取り組みを通して、施設管理事業の生産性30%向上の取り組みは、現場で着実に進み始めており、目標の達成が見え始めている。また、施設管理業務での成果が出始めたことから、NECファシリティーズでは事業のもう1つの柱である建設事業においても変革プロジェクトを開始した。プロジェクトは施設管理業務の施策やテンプレートを応用できるため、スピーディーな実行・展開が実現できると見込んでいる。

これまでの一連の取り組みに加え、NECファシリティーズではアビームの支援を受けながら、「り・ふぁしDXプロジェクト」で打ち出している2026年から30年までの次期中期経営計画に向けた新しいコーポレートモデルや事業モデルを構想するプロジェクトに取り組んでいる。同社では、新しいコーポレートモデルを実現し、企業価値を向上させることを通して、施設管理業界全体の再編を進めることで、日本の製造業の競争力向上を支えていく考えだ。

Customer Profile

会社名
NECファシリティーズ株式会社
所在地
東京都港区芝二丁目22番12号 NEC第二別館
設立
1966年
事業内容
工場施設の運営管理、建設、環境、不動産、保険の各事業
資本金
2億4000万円
NECファシリティーズ株式会社

2025年1月31日

  • 会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

専門コンサルタント

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    Principal
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    Principal

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