株式会社ヤマハミュージックジャパン

顧客と繋がり続けるためのLTV向上に向けた変革に伴走 新サービスの企画、デジタルと直営店舗・教室の融合を推進
事例
  • スポーツ&エンターテインメント
  • 小売・流通
  • 経営戦略/経営改革
  • マーケティング/セールス/顧客サービス
株式会社ヤマハミュージックジャパン

ヤマハの国内販売会社として事業を展開する株式会社ヤマハミュージックジャパン。同社は「顧客ともっと繋がる」という方針のもと、LTV(顧客生涯価値)向上に向けて取り組んでいる。そのためのパートナーとして選んだのがアビームだ。2023年からはサブスクリプション型VOD(ビデオ・オン・デマンド)サービス企画とデジタルチャネルと直営店舗・教室を融合させた店舗運用構築を推進してきた。アビームが伴走しながら描いた構想をもとに、ポイントカードのアプリ化、楽器演奏サポートサービスなど新たなサービスがスタートしている。

経営/事業上の課題

  • 「顧客ともっと繋がる」ことによるLTV向上の実現
  • 顧客と繋がり続けるためのデジタル接点不足
  • アナログ形式が色濃く残る直営店舗・教室現場のオペレーション
  • デジタルチャネルと直営店舗・教室の取り組みの分断

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • LTV向上に向けたデジタルと直営店舗・教室を融合させた目指す姿の策定
  • 顧客と繋がり続けるためのデジタル新サービスの企画
  • デジタルを活用した直営店舗・教室現場のオペレーション効率化の構想
  • デジタルチャネルと直営店舗・教室の融合に向けた社内組織・風土の変革

支援の成果

  • 経営層を交えたLTV向上の目指す姿・道筋の合意形成
  • 顧客とより繋がるための楽器演奏サポートサービス「ヤマハミュージックメンバーズプラス」の開始
  • デジタルチャネルと直営店舗・教室の融合に向けた社内組織の改編
  • デジタル化の促進に向けた現場主導のアーリー・スモール・ウィン施策の企画・実行

プロジェクトの背景

中期経営計画で「顧客ともっと繋がる」を打ち出し、施策を立案

株式会社ヤマハミュージックジャパン(以下、ヤマハミュージックジャパン)は、ヤマハの国内販売会社として、ヤマハ製品の卸販売からマーケティング、音楽教室事業、直営の小売販売・音楽教室運営、各種サービス提供までを展開する企業である。特約店・直営店・教室が一体となって需要創造とブランド価値訴求を進め、地域の顧客により良い音楽体験を届けられる体制構築を目指し、2024年4月に直営の小売店・音楽教室運営を行う株式会社ヤマハミュージックリテイリングと合併、卸販売・小売販売施策の連携とサービス事業の拡充を図っている。
同社は音楽関連情報の発信やキャンペーン展開、体験の場の提供、ホール・音楽施設への導入機器の提案などにも注力。さらに、顧客の充実した音楽ライフをサポートする「ヤマハミュージックメンバーズ」の運営、カスタマーサポートなどにも取り組んでいる。
ヤマハグループでは2019年度から2021年度までの中期経営計画「Make Waves 1.0」で4つの重点戦略の1つとして、「顧客ともっと繋がる」を打ち出し、その中でライフタイムバリュー(LTV=顧客生涯価値)向上への貢献を掲げた。2022年度から2024年度までの中期経営計画「Make Waves 2.0」では、「顧客と深く長くつながるサービスを提供する」として、LTV向上に向けた具体的な施策を立案した。「私は長く海外でビジネスをしてきましたが、その経験から見て、日本の音楽市場でヤマハグループはさらに大きく発展できる可能性があると考えています。特に、コロナ禍以降オフラインの音楽活動が戻ってきている中で、2024年6月にオープンした横浜みなとみらいの体験型ブランドショップには大勢の方が訪れ大盛況です。事業を成長させるためには、デジタル技術を活用してオンラインとオフラインを融合させて直営店舗・教室を運営し、顧客と深く、長く繋がることが極めて重要になっています」とヤマハミュージックジャパン 代表取締役社長 松岡 祐治氏は語る。

デジタル技術を活用して、さまざまな形でファンを増やしていく取り組みへの一層の支援を期待しています

株式会社ヤマハミュージックジャパン
代表取締役社長
松岡 祐治氏

アビームの選定理由

さまざまな業界の知見をもとにモデルとなる内容を具体的に提案

ヤマハミュージックジャパンでは、アビームの支援のもと、「顧客ともっと繋がる」ために、2020年1月から10月にかけてサービスバリュー向上を図る演奏支援サービスの事業計画と、グループ各社が会員サービスを実施する際の基本となる共通方針を策定するグループ新会員制度設計の2つのプロジェクトを実施した。
グループ新会員制度設計では、顧客のLTV向上を目指すにあたって、ヤマハ・顧客双方の視点での目指すべき姿とその実現に向けた指標を整理した。グループ会社が会員サービスを提供する際には、ヤマハにとっては売上向上、顧客にとっては夢の実現を最終的に目指すべき姿にして、導き出した指標を基準に、サービスを検討していくことにした。

そして、2023年5月からは演奏支援サービスの一環であるサブスクリプション型VODサービスを企画するプロジェクトをスタートさせた。プロジェクトでは、顧客には2つのフェーズがあると分析。演奏を楽しみ、知らず知らずのうちに楽器演奏の基礎が身につく期間であるビギナーのフェーズと、自分自身の目標達成を目指して本格的に時間やお金を費やす期間であるエキスパートのフェーズである。そこで、まずビギナーフェーズ向けのVODサービスの内容策定を進めた。さらに、デジタルと直営店舗・教室を融合させて業務効率化と高度化に向けた変革の方向性を策定するOMO(オンラインとオフラインの統合)による店舗運営構築支援プロジェクトも開始した。
ヤマハミュージックジャパンでは、2020年からのLTVに関連する全社方針の策定とその後の個別サービスの企画にあたって、アビームをパートナーに選んでプロジェクトを進めてきた。「複数のコンサルティング会社に声をかけ、コンペも行いました。その中で、アビームの提案はさまざまな業界の知見を活かし楽器メーカーである私たちに置き換えた時のモデルとなる内容で、非常に優れていました。経営層に意思決定してもらうための内容から、内容を現場に納得してもらうための用語の定義や具体的なアプローチの仕方までをセットで提示してくれ、場合によっては人事制度まで変えるべきだという本質を突いた提案となっていました。ここまで伴走してくれるならうまくいくと確信できたのでアビームを選びました」とヤマハミュージックジャパン サービス事業戦略部 部長 中山 和紀氏は振り返る。

私たちが顧客とより繋がれるよう伴走してくれたアビームには本当に感謝しています

株式会社ヤマハミュージックジャパン
サービス事業戦略部
部長
中山 和紀氏

ヤマハミュージックジャパンが考えるLTV/顧客ロイヤリティの構成要素

プロジェクトの目標・課題と解決策

複数のステークホルダーが複雑に関与する中で共通認識を醸成

顧客と繋がるためには、デジタルを活用した業務の高度化が必要になる。しかし、ヤマハミュージックジャパンの直営店舗と教室では長年にわたり業務が個別最適かつアナログで行われていたため、高度化に踏み出す前に業務の効率化が求められた。そこで、OMOによる店舗運用構築支援プロジェクトでは、効率化する上で直面している課題を解消することにより現場の余力を創出し、それをテコに高度化による理想型の実現を目指すという2段階で取り組むことにした。

そして、直営店舗・教室を目指す姿へと変革するために、顧客と繋がるためのデジタル接点の不足、デジタルを駆使した現場の接客スタイルの進化、現場の行動変容を促す仕組みの不足という3つの課題を抽出した。その解決に向け、顧客と繋がり続ける起点となるヤマハミュージックメンバーズの登録促進、顧客と繋がり続けるためのオンラインサービス・ツールの整備、OMO実現に向けた現場のオンラインオペレーション・ケイパビリティの強化、現場の円滑なオンライン化を支える全社機能の設計、現場が能動的に顧客と繋がり続けるためのKPIの設計の5つのテーマに取り組んできた。「社員は楽器が好きな人ばかりなので、接客も含めて顧客の要望をかなえようと一生懸命取り組んできました。しかし、その結果、業務が複雑化して手一杯になり、デジタル化のような新しい取り組みが遅れてしまったところがありました。そこでまずは効率化を進めて、その上にデジタル活用による高度化に取り組むことにしたのです」とヤマハミュージックジャパン サービス事業戦略部 カスタマーサクセス・事業企画課 課長 奈良 英祐氏は話す。
卸販売会社、直営店舗、教室など複数のステークホルダーが存在し、経営層から現場までさまざまな立場の社員が関係する中で、アビームは中立的な立場を生かしたコミュニケーションを通じて、関係者全員の共通認識の醸成に向けて支援した。「アビームは私たちと一緒になって直営店舗の現場まで入り込み、実情を知ってもらった上で議論を積み重ねることができました。その中で、グループ会社の微妙な違いまで深く理解した上で、地に足のついた実現可能なプロセスを導き出すための支援をしてくれました」(中山氏)。

社員以上に近い存在になっているアビームとの関係を大切にしながら、社内に仲間を作っていきたいと思います

株式会社ヤマハミュージックジャパン
サービス事業戦略部
カスタマーサクセス・事業企画課
課長
奈良 英祐氏

OMO実現に向けたデジタル化のステップ

プロジェクトの成果と今後の展望

議論した成果を着実に実行に移し、デジタル化や新サービスを開始

ヤマハミュージックジャパンではOMOによる店舗運用構築支援プロジェクトを通して、グループ会社や部門の間に存在したLTV向上に向けて目指す姿についての温度差解消に大きく踏み出すことができた。アビームによる目指す姿の素案の提示及び関係者との討議における合意形成を通じて、LTV向上への考え方の整理や基盤ができたため、現在は、アーリー・スモール・ウィンのスタイルで、議論した成果を着実に実行に移している。2023年12月には、直営店舗のポイントカードをアプリ化した。「2024年9月段階で、来店顧客の半数以上が利用するようになっており、顧客情報と購入情報を紐づけることができるようになりました」(奈良氏)。
さらに2024年6月、横浜みなとみらいの直営店オープンと同時に、イベントのチケッティングもすべてデジタルで完了させることができるようになった。イベントの告知から申し込み、課金、チケット発行までがデジタル化され、スマートフォンでイベント会場に入場する。これによって、点と点でしかなかった顧客の行動パターンが把握できるようになり、顧客とのコミュニケーションが格段に深まることになった。加えて、8月には、楽器演奏をサポートするサブスクリプション型サービス「ヤマハミュージックメンバーズプラス」をスタートさせた。「取り組みで成果が出始めたOMOによる直営店舗運用を効果的に活用することで、ヤマハのファンをさらに増やしていきたいです。音楽も楽器ビジネスもかつては欧米に解がありました。今、世界中どこにも手本がなくなっている中で、日本で新しい顧客体験や音楽の楽しみ方を生み出し、世界に発信していきたいと考えています」(松岡氏)。
ヤマハミュージックジャパンでは、2025年度から始まる新しい中期経営計画でのロードマップを描きつつ、課題の解決や変革の実現に向けて社内を巻き込みながら、事業に取り組むことで成長に繋げていく考えだ。

Customer Profile

会社名
株式会社ヤマハミュージックジャパン
所在地
神奈川県横浜市西区みなとみらい5丁目1番2号 横浜シンフォステージ ウエストタワー
発足
2013年
資本金
1億円(ヤマハ株式会社100%出資)
事業内容
国内における楽器・防音室・音響機器販売および教室事業
株式会社ヤマハミュージックジャパン

2024年12月26日

  • 会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

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