ヤマハミュージックジャパンではOMOによる店舗運用構築支援プロジェクトを通して、グループ会社や部門の間に存在したLTV向上に向けて目指す姿についての温度差解消に大きく踏み出すことができた。アビームによる目指す姿の素案の提示及び関係者との討議における合意形成を通じて、LTV向上への考え方の整理や基盤ができたため、現在は、アーリー・スモール・ウィンのスタイルで、議論した成果を着実に実行に移している。2023年12月には、直営店舗のポイントカードをアプリ化した。「2024年9月段階で、来店顧客の半数以上が利用するようになっており、顧客情報と購入情報を紐づけることができるようになりました」(奈良氏)。
さらに2024年6月、横浜みなとみらいの直営店オープンと同時に、イベントのチケッティングもすべてデジタルで完了させることができるようになった。イベントの告知から申し込み、課金、チケット発行までがデジタル化され、スマートフォンでイベント会場に入場する。これによって、点と点でしかなかった顧客の行動パターンが把握できるようになり、顧客とのコミュニケーションが格段に深まることになった。加えて、8月には、楽器演奏をサポートするサブスクリプション型サービス「ヤマハミュージックメンバーズプラス」をスタートさせた。「取り組みで成果が出始めたOMOによる直営店舗運用を効果的に活用することで、ヤマハのファンをさらに増やしていきたいです。音楽も楽器ビジネスもかつては欧米に解がありました。今、世界中どこにも手本がなくなっている中で、日本で新しい顧客体験や音楽の楽しみ方を生み出し、世界に発信していきたいと考えています」(松岡氏)。
ヤマハミュージックジャパンでは、2025年度から始まる新しい中期経営計画でのロードマップを描きつつ、課題の解決や変革の実現に向けて社内を巻き込みながら、事業に取り組むことで成長に繋げていく考えだ。