アルプスアルパイン株式会社

ワンインスタンスのグローバル基幹システム統合を実現 グローバルで統一されたデータ基盤によりDXを推進
事例
  • グローバル
  • データドリブン経営
  • 自動車
  • 電子部品
アルプスアルパイン株式会社

グローバルな電子部品・車載情報機器メーカーとして世界のものづくりを支えるアルプスアルパイン。同社はアビームをパートナーに2010年からアルプス電気のグローバル統一システム導入「eARTHSプロジェクト」を実施。
その後、2020年からはアルプス電気とアルパインの経営統合によるシナジー創出のための「WAAPプロジェクト」に取り組んだ。2010年から2023年にかけての2つのプロジェクトで、ワンインスタンスのグローバル基幹システムの統合が完了、統一されたデータ基盤で、さらなるDX推進、データドリブン経営の実現を目指している。

経営/事業上の課題

  • グローバル標準化・管理の簡素化、仕事の仕方の整理の実現
  • 経営統合のシナジー創出のための業務の標準化、システム統合の実現

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • 2010年から2023年まで、グローバル基幹システム導入と統合を全面支援

支援の成果

  • グローバルでの業務標準化の実現
  • DX 推進、データドリブン経営の実現に不可欠な統一されたデータ基盤の確立

プロジェクトの背景

業務プロセス見直しのためにグローバル統一システム導入を計画

アルプスアルパイン株式会社(以下、アルプスアルパイン)は、1948年創業の電子部品および車載情報機器メーカーである。同社は「人と地球に喜ばれる新たな価値を創造します」という企業理念のもと、収益基盤として維持・拡大を図る「コンポーネント」、成長ドライバーとして拡大を目指す「センサー・コミュニケーション」、事業の良質化で収益改善を見込む「モジュール・システム」の3つの事業を中核に、ビジネスに取り組んでいる。2019年には1978年に独立したアルパインとアルプス電気が経営統合、グローバルでは23の国と地域に186拠点を展開している。
2000年以前は、アルプス電気もアルパインも自前のシステムを運用してきた。その後、2000年代になって、アルパインはいち早くSAP ERPを導入、アルプス電気は2010年、SAPを基軸に製品情報管理(PDM)や製造実行管理(MES)を行うグローバル統一システムを導入するため、「eARTHS(アース)プロジェクト」を開始した。「アルプス電気は2000年代まで事業部制を採用しており、各工場や事業部がそれぞれのやり方で事業を進めていました。2008年に、経営層がマネジメントのやり方を変えていかないと、グローバルで勝つことができないと考え、最初に仕事のやり方を見直そうとしたことがきっかけです」とトランスフォーメーション担当 顧問 佐伯 哲博氏は語る。当時は社内対応、事後対応の仕事が多く、時間がかかっていたところを変えて、顧客との仕事を効率よくスピード感を持って進めるやり方にしたいと考えた。
そのために、「eARTHSプロジェクト」では、コスト構造改革とIT基盤整備をミッションに掲げ、工場と事業部が1対1でつながっているバラバラな状態を変えて、グローバルで標準化し、管理の簡素化、仕事の仕方を整理・整頓することにした。そして、週次計画から日次計画へ、BOM基準統一やマスター一元管理、KPIとコードの統一、製造現場管理IT化(MES)などの施策を実現するため、グローバルに1つのシステム、1つのデータベースで一元管理するワンインスタンスを目標にすえた。

小林 淳二氏

アビームは私たちを熟知しているので、これからもデータ基盤を活用したさまざまな施策の実現に向けたサポートをお願いしたいです

アルプスアルパイン株式会社
トランスフォーメーション担当 兼
新事業・コンポーネント1事業担当 兼 
データソリューションカンパニー長
執行役員
小林 淳二氏

アビームの選定理由

SAP導入と製造業への深い知見、グローバル展開での経験が決め手

グローバルでワンインスタンスを実現するために、「eARTHSプロジェクト」は会計だけではなく、仕入れから購買管理、生産管理、製造実行管理、販売管理までのすべてを連携させる壮大なスコープのプロジェクトになった。その中で、SAP ERP導入のパートナーとして選んだのがアビームだった。アビームに決めた理由はSAP社の強い推薦があったことに加えて、製造業に関する深い知見があったこと、グローバルでの展開に関する豊富な経験があったことだった。
「eARTHSプロジェクト」は2010年からスタートし、東日本大震災での中断も含めて9年間に及んだ。2019年の完了時点での導入拠点は61、入れ替え・廃止対象のシステム数は260、年間処理数は受注100万件、製造指図310万件、顧客数は1万社に上った。
実際の導入は、日本、ASEAN、欧州、韓国、中国1、中国2、北米の6つの地域に分けて行ったが、一番苦労したのが2013年4月に営業拠点11カ所、工場7カ所でシステムの稼働を始めた日本だった。「製品は在庫としてあるのに情物一致ができず、製品の出荷指示が出せないというトラブルがありました。最初は原因がわからず、アビームに入ってもらい、パラメーターのつながりを1つずつ紐解きながら問題点を明らかにしていきました。この経験から、データクレンジングによりデータ精度を高めることが大切だということを改めて痛感しました」(佐伯氏)。
「eARTHSプロジェクト」のコンセプトは非常に明確で、グローバルでの標準化なしに会社の成長は見込めないというものだった。しかし、システムを変えることに対して現場の抵抗感もあったため、トップダウンでプロジェクトを進めた。加えてグローバル統一システムの導入に対する当初の認識が甘く、事前の準備が不十分だったり、データ精度にばらつきがあったりしたため、日本での導入では混乱も生じた。そんな中でもワンインスタンスという思想を曲げずにプロジェクトに取り組み、最終的にはオペレーションの標準化と、マスターを含むデータの標準化と集約などの目標を達成することができた。

佐伯 哲博氏

アビームの粘り強い支援で、グローバル基幹システムを稼働させることができました。アルプスアルパインの次のステージに向けた提案を期待しています

アルプスアルパイン株式会社
トランスフォーメーション担当
顧問
佐伯 哲博氏

プロジェクトの目標・課題と解決策

「Fit to Standard」を伝え続け、アルプス電気側への片寄せを短期間で実現

2019年の経営統合を受けて、アルプスアルパインでは、経営統合のシナジー創出のためには業務の標準化とシステムの統合が必須と判断、2020年にグローバル基幹システム導入の「WAAP(ワープ)プロジェクト」を開始した。その目標は、共通業務を統合して重複部分を排除し、プロセスとシステムを集約することで多面的なコスト削減によるメリットの最大化だった。「システム統合にあたっては、何よりもスピードを優先しました。方法としては、アルパインの基幹システムを『eARTHS』に片寄せするやり方で進めました。『eARTHSプロジェクト』では現地で作り込む方法をアビームから教えてもらい、1年の内半分位はアビームと一緒に出張して導入を進めました。しかし『WAAPプロジェクト』ではコロナ禍でその手法を使うことが難しいという状況でプロジェクトが始まりました」と業務プロセス改革推進部 部長 秋本 俊彦氏は振り返る。
スピードを優先して導入を進め、日本、米州、中国、欧州と「eARTHSプロジェクト」の3分の1ほどの20拠点に3年で展開を終えることができた。「プロジェクトが短期間だったため、日本で導入を進めている間に中国のシステム化を検討、次に中国で導入を進める間に、次の米州にとりかかるなど、複数のプロジェクトの進行が重なっている部分がありました。アビームには驚かれましたが、対応策を出してもらって、アルプスアルパインのメンバーだけでは難しい部分にはアビームに対応してもらいました。さらに、難易度が高かった旧システムと新システムをつなぐ過渡期の対応もアビームに全面的にフォローしてもらったことで大変助かりました」(秋本氏)。
2023年11月にはシステム統合を実現し、「WAAPプロジェクト」の「1.0」のフェーズが完了。業務プロセスの最適化は次期の「WAAP2.0プロジェクト」で行うことにした。統合前には、アルプス電気もアルパインも同じSAPを使っていたが、中身はかなり異なるため、標準化には苦労した。もともとアルパインの方が先にSAPを導入し、拠点ごとの独自システムを活用していたため、一部の現場から不便だという声も上がっていたが、「Fit to Standard(業務内容をシステムの標準機能に合わせること)」の重要性を伝え続けることで、理解を得て、システム統合を成し遂げた。

秋本 俊彦氏

困難なチャレンジであっても、アビームは出口を見つけてアドバイスしてくれました。これからも私たちに寄り添う形での伴走をお願いします

アルプスアルパイン株式会社
業務プロセス改革推進部
部長
秋本 俊彦氏

「eARTHS/WAAPプロジェクト」の狙い/導入効果

「eARTHS/WAAPプロジェクト」の狙い/導入効果

プロジェクトの成果と今後の展望

確立したデータ基盤でDX推進などグローバルでの施策を展開

「eARTHSプロジェクト」と「WAAPプロジェクト」を通して、アルプスアルパインはグローバル基幹システムを導入し、業務の標準化を実現した。ワンインスタンスによるデータ基盤を確立することで、グローバルですべてのデータを誰でも同じ粒度で見ることができる環境を構築することができた。
「eARTHSプロジェクト」の前半では、アビームが持つグローバルロールアウトの知見をアルプス電気向けにカスタマイズし、提供することで円滑な実現を果たした。それによって、「WAAPプロジェクト」ではアルプスアルパイン主体でのグローバル展開が可能になった。加えて、アビームが支援したアルプスアルパインの業務・システム改革の推進で、データを起点にした業務改革を推進する人材の育成も進むなど、今回のプロジェクトが多くの成果をもたらしている。「プロジェクト開始から15年という長い期間が経つと、優先すべき経営課題はサプライチェーンやBCPなどに大きく変化してきています。そこでは情報の活用が極めて重要になりますが、データ基盤の確立で、本社以外の現地でもデータの分析による情報の活用ができるようになりました。これによって、事業運営をより効率的に進める上でのマネジメントの柔軟性が大きく高まりました」とトランスフォーメーション担当 執行役員 小林 淳二氏は話す。
こうした観点に立って、現在、アルプスアルパインではDXを推進するための「Nexusプロジェクト」を進めている。その取り組みの1つがグローバルサプライチェーンにおける生産計画策定業務の高度化だ。目的は生産計画策定業務における予測精度の向上と、それによる在庫・機会損失の削減、業務の属人化解消や効率化である。アビームは、ロードマップの策定からAIによる需要予測モデルの構築などを包括的に支援しており、需要予測精度の15%向上が見込まれている。
アルプスアルパインでは今後、グローバル基幹システムをさらに使いこなして、全社のDXを推進し、情報の見える化やデータ活用によって経営能力向上を図るデータドリブン経営を進めていく。それによって、業務プロセスをデジタルでつなぎ、ケイパビリティ改革とコスト改革に取り組み、グローバルでの成長を目指していく考えだ。

Customer Profile

会社名
アルプスアルパイン株式会社
所在地
東京都大田区雪谷大塚町1-7
設立
1948年
事業内容
コンポーネント事業、センサー・コミュニケーション事業、モジュール・システム事業、
物流その他事業の展開
資本金
387億3000万円
アルプスアルパイン株式会社

2024年6月27日

  • 会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

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  • 小山 和久

    Principal

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