エムエム建材では、拠点によっては、注文をFAXで受け、業務職社員がそれを転記して、システムに入力するというやり方が残っていた。こうしたやり方で生まれていた無駄をなくすために、BPRプロジェクトでは営業部門における業務の標準化・効率化による業務職社員の業務量削減、営業担当の総合職と業務職の残業時間低減、バックオフィスの業務ピーク時の拠点間応援体制の実現、コーポレート部門における人材流動化による筋肉質でより効率的に業務を遂行できる体制の整備を目標に据えた。
プロジェクトは2020年6月にキックオフ、9月末までかけて基本計画を策定、10月からコーポレート部門と、営業部門のプロトタイプとして土木建材セグメントで、BPRに取り組んだ。
プロジェクトは責任者の下、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)、BPR推進統括の部長に加えて、各部からBPR推進担当のPI(プロセスイノベーター)、拠点からBPR担当窓口の参画を得て、基本計画を策定、BPR実行、その後の定着・運用を図っていった。「プロジェクトで一番意識したのは現場の声をどうくみ上げるかという点でした。上から指示するやり方ではメンバーは思考停止に陥ってしまいます。そこで問題意識を強く持っている社員をメンバーに選び、何が課題なのかをしっかり議論することを心掛けました」(中嶌氏)。
自分たちの仕事を見直せば、効率化が可能になり、その上で自分たちが企画したやり方にすれば、さらに仕事が楽になる。BPRを成功させるには、こうした形で自分たちが主体となって業務を変えていくという意識を持つことが重要になる。そのために、プロジェクトでは時間はかかっても、現場の小さな声をできるだけ拾い上げ、誰一人取り残すことなく、現場発のBPRが可能になるように丁寧に取り組みを進めた。「計画策定フェーズで、メンバーから自分たちの仕事を棚卸しして捻出できる時間を聞かされたときは『そこまでできるのか』と正直言って驚きました。メンバーはその数値を目標にして、さまざまな施策を実行していこうと強い意欲を持っていたので、これなら大丈夫だと手応えを感じました」(中嶌氏)。
プロジェクトメンバーはさまざまな意見を持っていて、活発な議論が繰り広げられたが、社員だけだと、議論が平行線になったり、結論までたどり着かなかったりする。「そうした中で、アビームには知見に基づいたアドバイスや、標準化について自分たちが実行できるようなかたちでの説明をしてもらうことができました。そのアシストを得ることで、メンバーは納得感を得て結論を出し、BPRに取り組むことができました」(宮澤氏)。