2019年1月、AWS移行の設計・開発フェーズが開始した。プロジェクトでの最大の課題は、大鵬薬品のメンバーが少ない中で、プロジェクト管理とテストの実施、SAPシステム、帳票システム、データベース、ジョブ管理、システム監視などの各アプリケーションのAWSへの移行と環境構築を行う10社近くのベンダーの調整だった。
一般的に大規模なプロジェクトでは大手ベンダーがPMOとして入り、各領域にベンダーを配置する。そのため、指揮系統や業務領域が明確になっていてプロジェクトマネジメントは進めやすい。しかし今回はすべてのベンダーが横並びでプロジェクトに加わる形だった。「プロジェクトで問題が起きると、それぞれのベンダーは自分たちが扱うべき問題ではないと判断しがちでした。アビームコンサルティングはそうしたベンダー間のグレーゾーンを整理して、それぞれの担当を切り分けて、プロジェクトが計画通り進むように調整してくれました」(髙橋氏)。
中でも難しかったのがDR(Disaster Recovery)サイトの設計と構築だった。大鵬薬品ではDRを非常に重視しており、被災時には直ちにDR環境に切り替えて、業務を再開できるように設定している。今回の移行では、AWS標準機能によるDRの実装を計画していたが、プロジェクト途中で、要件を満たしていないことが分かり、急遽設計を変更。追加でDRソフトを導入することにした。DRソフトが決定したのが本番稼働の3カ月前。短期間でDRの構築を行わなければならなかった。
「これまで私は多数のPMOを見てきましたが、通常のPMOは調整役中心で技術を知らない人が多いのが実情です。ところが、アビームコンサルティングのPMOは技術に関して豊富な知識を持っていて、技術をベースにしながら、プロジェクトマネジメントを行ったので、問題が起きてもスムーズに解決し、プロジェクトを進めてくれました」(髙橋氏)。