株式会社アプラス

基幹システム刷新プロジェクトで第三者評価を実施。プロジェクトの円滑な推進と品質向上を支援
事例
  • リース・クレジット
  • テクノロジー・トランスフォーメーション
株式会社アプラス

クレジットカード・信販会社であるアプラスは、長年利用してきたクレジットカード用基幹システムの刷新を決定。これまでも運用・保守を担当してきたベンダーを開発ベンダーに選んだ。大規模かつ難易度の高いプロジェクトを、適切に運営できるかを危惧したアプラスは、プロジェクトの第三者評価を取り入れることにして、そのパートナーにアビームコンサルティングを選定。アビームコンサルティングは重要な節目で評価報告を実施、プロジェクトの円滑な推進と品質向上を支援した。その結果、システムは期日通りに稼働、重大な障害もなく、運用されている。

経営/事業上の課題

  • ベンダーが中心となるプロジェクト管理
  • IT に対する投資判断を実現するガバナンスの徹底
  • 独立した立場に立脚した客観性のあるプロジェクト評価

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • プロジェクトマネジメントにかかわる第三者評価サービス
  • 大規模プロジェクトの強力な推進支援
  • 合理的な根拠を示した修正/改善提案

支援の成果

  • ベンダー側のプロジェクトチーム強化による開発体制の実現
  • ベンダーと協業した上での細かな計画見直し
  • 期日通りの高品質な基幹システムカットオーバーの実現

プロジェクトの背景

メインフレームで運用してきたクレジットカード業務用基幹システムの刷新を決定

株式会社アプラス(以下、アプラス)は、1956年に設立された、ショッピングクレジット、カード、ペイメントの事業を展開する企業だ。2004年には新生銀行グループの一員となり、消費者向けファイナンスの主要子会社グループとして、グループ融合による革新的な金融サービスを提供し、リーンなオペレーションと卓越した生産性・効率性を実現して、事業に取り組んでいる。特にクレジットカード・決済市場では、ECの拡大が続く中、政府がキャッシュレス決済比率の向上目標を掲げるなど、市場規模の拡大が期待されている。

また、AIやフィンテックを活用した決済手段の多様化など市場環境も大きく変化している。これに対して、同社はTポイント機能搭載の提携クレジットカードや非接触IC決済サービス対応のプリペイドカードの発行、中国人向け二次元コードによるモバイル決済サービスの利用店舗網の拡大など、顧客ニーズに応える新たな決済サービスの提供に積極的に取り組んでいる。

こうした中で、アプラスでは2014年に二十数年にわたって、メインフレームで運用してきたクレジットカード業務用基幹システムを全面刷新、オープン系に移行することを決めた。その背景には2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に、社会インフラとしての堅牢性やセキュリティに関する国際標準PCI-DSSを含むセキュリティの高度化、多様化する決済手段への対応が求められていたことがある。また24時間365日の業務運用形態への変化に対応するため、フロントエンドシステムの充実を図ってきた一方で、システムが肥大化し、メンテナンスコストや親和性に課題が生じていたこともあった。「ビジネススピードを上げていかなければいけない時期にもかかわらず、強固であるがゆえに鈍重なレガシーシステムだったため、その再構築が必要になっていました。また使用言語COBOLの技術者が不足し、ベテラン頼みになっていて、継続性に不安が生じていました。そこでベテランが引退するギリギリのところで、若手を投入して、技術の継承を図ろうと考えたのです」とアプラス 顧問 畝森 達朗氏は語る。そしてシステム開発はアプラスと30年近い関係の中で、基幹システムの保守・運用を担当して、システムの仕様をよく理解しているベンダーに委託することにした。

アビームコンサルティングの参画はプロジェクト開始後1年くらいからでしたが、最初から入ってもらうことができていればもう少しスムーズにプロジェクト運営ができたと思います

株式会社アプラス
顧問
畝森 達朗 氏

アビームコンサルティングの選定理由

クレジットカード業務に精通し、開発ベンダーへの評価視点を保有

アプラスでは2014年から要件定義の工程をスタートさせたが、大規模で難易度も高いシステム開発のため、プロジェクトが適切に運営されなければ、計画通りに進まない可能性があると考えていた。また、開発ベンダーからの進捗状況の報告を聞いても、説明がよく分からないという声もあり、プロジェクトを独立した立場で評価する第三者評価が必要ではないかという意見も強まっていた。「今までであれば、プロジェクトは開発部門と開発ベンダーで進められていたわけですが、アプラスでは開発部門とは別にシステムリスク管理室を設け、社内で評価を行うことにしました。その上で、さらに第三者評価を行い、ガバナンスをしっかり利かせ、経営としてITに対する投資判断やお客様へのサービス提供をしていく。今後はそうしたやり方で進めていくことを方針として定め、その第1弾として今回、第三者評価を取り入れることにしたのです」とアプラス 執行役員 IT本部長 村上達志氏は説明する。

具体的には、経営会議で、プロジェクトの中間時における第三者から見た残存リスクと今後の課題、問題点への対応策までを突っ込んで報告してもらう。経営陣からすると、社員よりも、第三者が問題点と強化策を話す方が曖昧な点がなくなり、分かりやすくなるので、報告結果を有効に活用できる。そうした観点に立って、アプラスでは第三者評価を行うパートナーの選定を行い、アビームコンサルティングを選んだ。「開発するシステムはクレジットカード分野なので、カードビジネスをよく理解しているコンサルティング会社を選びたいと考えました。そこで何社かに声をかけたのですが、当時は経験のある人材が不足しているということで、リクエストに応えてきたのがアビームコンサルティングだけでした。それだけでなく、もちろん技術的な観点からも選定しています。開発ベンダーに対する評価ポイントを明確かつ具体的に提示、その内容がとても分かりやすかったことも評価しました」(畝森氏)。

第三者評価は継続的にやっていく方針なので、必要な時はアビームコンサルティングに真っ先に声をかけたいと考えています。これからもいろいろ相談に乗ってほしいと思います

株式会社アプラス
執行役員
IT本部長
村上 達志 氏

プロジェクトの目標と推進する上での課題

プロジェクトマネジメントの第三者評価と改善案の提案の両方で開発を支援

アビームコンサルティングはプロジェクト開始1年後の2015年5月から加わり、専任PMOを組織、プロジェクトマネジメントにかかわる第三者評価と、開発業務の支援を軸として、プロジェクトの円滑な遂行と期日通りの稼働への貢献の2つを行うことになった。第三者評価では進捗の可視化や報告精度向上、課題の可視化、品質の可視化、分析・対応精度の向上、リスク管理、次工程計画と規定の遵守、経営報告などを行うことで、知見を生かした大規模プロジェクトの推進を強力に支援。開発業務の支援では業務要件や課題の検討、成果物や見積りのレビュー、契約条項への助言を行い、開発ベンダーに合理的な根拠を示して、修正や改善を依頼する。「アビームコンサルティングが入って、評価を行うと、私たちと開発ベンダーが1年かけて策定してきた要件定義に多くの不足があることが分かりました。私たちが開発ベンダーに要件定義の問題点をうまく説明しきれない中で、アビームコンサルティングに提起してもらい、その転換が完了するまで、アビームコンサルティングは第三者といいながら、アプラスおよび開発ベンダーと共に協力し対応を進めていきました。その中で開発ベンダーも要請に応え、カード業界に精通した精鋭メンバーを送り込んでプロジェクトチームを強化、強力な開発体制が実現されました」(畝森氏)。

アビームコンサルティングには独立して第三者評価のレポートを書くコンサルタントとプロジェクトに踏み込んだ現場型PMOといわれる進捗状況や品質などを現場でとらえて報告するコンサルタントがおり、その両方をとりまとめて総合評価の報告が行われていた。「アビームコンサルティングは私たちが聞きたくない部分や見たくない部分を見せる形で、現場の状況を実直に報告してくれました。きれいごとや優しい言葉で書くと、プロジェクトの問題点が小さくなってしまいます。今回はプロジェクトの最初の段階から、ガバナンスやプロジェクトマネジメントの問題点などについて厳しい言葉で報告されていたので、私たちも問題をきちんとつかむことができました」(村上氏)。

アプラス/開発ベンダー/アビームコンサルティング3社による推進体制

課題の解決策

プロジェクト完了までの期間を意識して、強化点を絞り込み、支援策を提示

開発工程の中で、問題点が多かったのは品質面で、問題がある領域についてはアビームコンサルティングから具体的な指摘がなされた。例えば勘定系のサブシステムの結合テストでは品質評価の結果、テストデータや環境不備が不具合の2割程度を占めていると指摘。その改善のため、不具合管理やリソース承認の運用フローを作成、資源・リソースを一覧化して、PDCA活動を実施するという支援策まで提案している。
「非常に具体的な指摘の上に、例えば強化テストの実施期限まで書かれていたので、問題のある弱い部分が非常に分かりやすく、判断材料として、とても納得がいくものでした。さらにそれを受けて、アプラス側の確認事項や体制の評価も行われ、その中で現状の体制では品質確認が難しいので、ユーザーの協力や体制強化を図るべきだとアプラスの動き方を分かりやすい形で提案していました」(村上氏)。

今回の開発は規模が大きいので、全体を網羅するようなテスト評価が行われると、コストや時間がかかってしまう。そのため、アビームコンサルティングはプロジェクト完了までの残りの期間を意識して、強化すべき点を絞り込んで評価と支援策を提案していた。「アビームコンサルティングは開発ベンダーとの合意の上で、全体のマスタースケジュールを守りつつ、特定の部分について一定期間延長しても大丈夫だと細かなスケジュールの再設定をしてくれました。それがなければ、プロジェクトは計画通り完了せず、スケジュールを大きく変更して、大幅に延長する必要が出てきたのではないかと思います」(畝森氏)。

導入効果と今後の展望

システムは期日通りにカットオーバーし、重大な障害もなく、順調に運用

2018年8月の本稼働を控えた7月最後の報告で、アビームコンサルティングは運用開始後の残存課題と運用体制の強化を提案した。それを受けて、アプラスは運用体制を強化し、8月に期日通り基幹システムをカットオーバーすることができた。「現在、システムは順調に稼働していますが、大規模な開発だったので、リリース後のシステム停止などのリスクもありました。そうすると、お客様に大変な迷惑をかけてしまうことになりますが、第三者評価をきちんと実施したことで、そうした問題も起こらず、本当によかったです」(畝森氏)。

新しいクレジットカード事業用基幹システムは、24時間365日稼働で、新しいサービスへの柔軟な対応が可能になり、ポイント管理なども細かく行えるようになった。またセキュリティの高度化と若手メンバーが入って、Linuxマシンで開発を行うことで、技術の継承も実現された。その上で、さらなる合理化、運用効率の向上のための基盤ができあがったことで、新たなカードビジネスを展開するスタートラインに立つことができた。

「今後、投資規模が大きく、会社の経営に影響するシステム開発ではプロジェクトの第三者評価を取り入れていく考えです。一方で、そこまで規模が大きくないシステムは社内のリスク管理室で品質管理と予算、スケジュールについてチェックしていきます」(村上氏)。

現在、アプラスでは一部システムがレガシーのまま運用されている。今回の成果の上に、アプラスでは大規模になるシステムの刷新プロジェクトでも第三者評価を取り入れ、投資の適正化と開発品質の向上を図っていく計画だ。

Customer Profile

会社名
株式会社アプラス
所在地
大阪市浪速区湊町一丁目2番3号
設立
2009(平成21)年4月24日
事業内容
ショッピングクレジット事業 ショッピングクレジット、オートクレジット、回収金保証など カード事業 クレジットカード、提携カード、カードキャッシングなど ペイメント事業 オートネットサービス、コンビニ集金代行サービス、家賃サービス、プリペイドカード など
資本金
150億円
株式会社アプラス

2018年12月1日

  • 会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

専門コンサルタント

  • 上田 喜之

    Principal
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    Principal

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