中野 ハウス食品様の中国拠点における「ABeam Cloud」を活用したSCM基幹業務改革プロジェクトでは大変お世話になりました。実績系と計画系の2つのSCM基幹業務のシステム化を同時に、さらに2015年11月から2016年3月までの実質4カ月で実施するという非常にチャレンジングな取り組みでしたが、無事に新しい仕組みでの業務を開始することができ、アビームコンサルティングとしても安堵しています。
中島 こちらこそ大変お世話になり、ありがとうございました。
葛山 そのSCM基盤も稼働開始から約半年が過ぎ、本日は改めてプロジェクト全般を振り返らせていただけたらと思っています。まずは、なぜ新たなSCM基盤が必要だったのか、そもそもの課題からお聞かせください。
中島 ハウス食品は「カレーライスを中国の国民食にする。」という事業目標を掲げ、2005年から中国でのカレールーの製造を開始しました。中国のお客様がスパイスとして、あるいは漢方として重宝している八角を使用するなど、現地の嗜好に合わせた味づくりにもこだわってきました。その結果、まだまだ十分とは言えないまでも、中国の消費者にカレーは着実に浸透してきたと思っています。
中野 順調なグローバルビジネスの展開ぶりですね。
中島 そう見えますよね。しかし、こちらに赴任した当初は愕然とすることの連続でした。なにしろ製造、販売、在庫、物流などの業務で必須であるはずのデータが、ほとんど整備されていなかったのです。せっかく大連に二拠点目の工場を作ったにもかかわらず、お客様に効率良く製品をお届けできないという問題に直面しました。
中野 具体的にはどんなことに苦労されたのでしょうか。
中島 中国は国土が広いですから、北(大連)で作った製品は北で、南(上海)で作った製品は南で販売するというのが、物流や商流の観点からも効率的であるのは言うまでもありません。ところが実際には、販売や在庫に関する情報のコントロールがうまくできていなく、北で作った製品を南で売る、南で作った製品を北で売るという非効率なオペレーションが頻発していたのです。
さらに言うと、価格戦略上の問題もありました。弊社は地域や取引先に応じて価格設定を変えていますが、例えばある地域において本来なら発生するはずのない価格で販売されているといった事象も頻発していました。
中野 ハウス食品がこれまで苦労して中国で築いてきた、市場のポジションそのものも揺るがしかねない重大な問題ですね。
中島 おっしゃるとおりです。しかも、そのイレギュラーな製品が、どこから、どういうルートで流れてきたのかもトレースできない状況にありました。
葛山 とはいえ、従来も販売や物流などの基幹業務を担うシステムがまったくなかったわけではありませんよね。
中島 もちろんです、紙のやりとりや口頭の指示だけでは業務を動かすことができませんから。ただ、それなりのシステムは導入されていても、拠点ごとに分断された状況にありました。例えば販売拠点は北京と上海の両都市にありますが、それぞれ異なるシステムが導入されており、データレベルでの連携はありませんでした。営業担当者もExcelなどのツールを使って、それぞれで販売データを管理していました。
こういう状況を脱却し、マスター系の情報を統合されたシステムのもと、全社共通のルールで管理・統制できるようにしたいと考えました。
葛山 まさに、そうしたPain(切実な課題)が今回のSCM基盤構築のフックになったわけですね。
中島 そのとおりです。