2015年に創立80周年を迎えたUDトラックス株式会社。これまでの歴史と実績に基づき、UDブランドのさらなる拡大と浸透を目指す。
2006年よりVolvoグループの一員として、マーケットシェアの拡大、より一層の成長を実現するためのさまざまな戦略を実行した。
その一環として、現場を巻き込んだ自発的な改善活動を推進し、改革をスピードアップさせるために、アビームコンサルティングが支援を行い、全社的な取り組みを続けている。
2015年に創立80周年を迎えたUDトラックス株式会社。これまでの歴史と実績に基づき、UDブランドのさらなる拡大と浸透を目指す。
2006年よりVolvoグループの一員として、マーケットシェアの拡大、より一層の成長を実現するためのさまざまな戦略を実行した。
その一環として、現場を巻き込んだ自発的な改善活動を推進し、改革をスピードアップさせるために、アビームコンサルティングが支援を行い、全社的な取り組みを続けている。
経営/事業上の課題
課題解決に向けたアビームの支援概要
支援の成果
Volvoグループのアジア太平洋地域における本拠の機能を担うUDトラックスは、社名の由来でもある「Uniflow - Scavenging Diesel Engine(ユニフロー・スカベンジング・ディーゼルエンジン)」を1955年に発表。このUDエンジンに「Ultimate Dependability(究極の信頼)」という新たな価値を付加した企業理念に基づき、顧客からビジネスパートナーとして選ばれるブランドおよび企業になることを目指している。
現在、メーカー4社がしのぎを削る日本のトラック市場において、UDトラックスは親会社でもあるVolvoグループから、マーケットシェアの大幅な拡大が求められていた。
UDトラックス 代表取締役社長である村上吉弘氏は、「日本全国の販売組織の業務基盤を劇的に改善し、お客様により満足して頂ける製品とサービスの提供が必要でした」と語る。
その一環として、UDトラックスの販売とアフターサービスに携る全国のディーラーネットワークで働く全従業員を対象とした、仕事のやり方を大きく変革する「REX(Retail Excellence)」プロジェクトを約3年かけて実施。経営戦略の構築から、業績を改善することを目的とした業務改革、さらにはプロセス・システム変革までをアビームコンサルティング(以下、アビーム)がトータルにサポートしている。
2006年にVolvoグループの一員となったUDトラックスでは、Volvo本社からグローバル標準業務およびシステムの導入を求められていた。しかし、このグローバル標準業務とシステムは、日本の商習慣に適合できず、また本社と現場間で意思の疎通が困難なことから、現場がスムーズに動けない状況に陥っていた。この状況を打破することができるコンサルティングファームとしてアビームが選定された。
UDトラックスがアビームを選定した理由は大きく2つ。
1つ目は「現場を巻き込みながら経営戦略を構築していく」というアビームのアプローチが高く評価されたことだ。一般的に経営戦略は、トップダウンで構築されることが多い。しかしトラック業界は、“日本の古き伝統”を引き継いでいる業界であり、“トップダウン”ではなく“現場巻き込み型”が有効であり、これを得意とするアビームの提案が評価された。
2つ目は、過去に村上氏が深く関与したUDトラックスの3つのプロジェクトのうち、2つのプロジェクトにアビームコンサルティングが参画し、期限どおりに成功させた実績を高く評価したことである。
またREXプロジェクトでは、日本全国の7支社・138拠点・約4,000名の社員を対象としたプロジェクトであり、UDトラックス本社と7つの支社にコンサルタントが分かれて仕事をすることになる。そのため本社と7つの支社で、いかにチームワークを発揮できるかが重要であり、こうした観点からいくつかの会社を比較検討した結果、アビームに最も豊富なタレントがそろっていたことも選定の理由の1つだった。
さらに、日本全国の支社に分かれ、UDトラックスの社内コンサルタントとともに今回のプロジェクトを成功に導くため、毎日顔をあわせることのないリモートの関係の中、いかに信頼関係を築けるかが最大のポイントだった。
REXプロジェクトが対象とする業務領域は、新車・中古車販売から整備・部品販売などのアフターマーケットまでの主要業務の改革を中心に、ディーラー購買改革、新評価報酬制度、品質保証改革といった商用車営業部門の全業務領域に及ぶ。
プロジェクトのフェーズは、以下の通りだ。
戦略の具体化
改革テーマ抽出
改革テーマ実行支援(BPR)
システム導入サポート(PMO/Change Management)
稼働後のサポート
この各フェーズに基づいて、以下の4テーマを3つのプロジェクトチームで実施。最大で24名のコンサルタントがプロジェクトを遂行した。
1)UDトラックスの戦略/改革テーマの具体化(戦略構築チーム)
2)戦略/改革テーマを現場の実行可能な単位に読み替え(BPR実行支援チーム)
3)全国でエンドユーザレベルに改革を実行(BPR実行支援チーム/システムPMOチーム)
4)グローバルプロセス・システム導入の現地化・導入をリード(システムPMOチーム)
REXプロジェクトの実行にあたりアビームが取り組んだのは、「戦略の具体化」と「現場への浸透」の大きく2つである。
まず戦略の具体化では、Volvo本社の改革プログラムに、現場の担当者を巻き込み、現場の意見を集約しながら、どうすれば現場に浸透できるか、使えるものになるかを具体化した。
次に「現場への浸透」では、「チェンジマネジメント」とよばれる方法論を適用。REXプロジェクトには直接関係はないが、現場がいま本当に困っていることを聞き取り、現場とアビームでその問題を解決し、現場の信頼を得ることで、REXプロジェクトにも共に取り組んでいこうという意識に変えてゆくことに注力した。
また、同じ日本といえども、地域によって、言葉や文化、風習、商習慣は異なる。そのため、それらを理解できる同じ地域の出身者のコンサルタントを選定、配置した。それにより、現場とのコミュニケーションを円滑にしたことも成功要因の一つといえる。
村上氏は、「アビームは、支社それぞれの事情や業務上の課題、メンバーの資質などを的確に捉え、現状認識をしっかりとした上で、プロジェクトのゴールを支社のメンバーと共有してくれました。約3年に及ぶ長期のプロジェクトでしたが、初期のアプローチがその後のさまざまな現場改革に大きく貢献したと思っています」と話している。
改革や変革には痛みが伴うが、REXプロジェクトは何十年も慣れ親しんできたUDトラックスの現場の仕事の仕方を短期間で大きく変革することに成功した。REXプロジェクトの別の成果として、現場1人ひとりが受け身の姿勢、“指示待ち文化”から脱却し、現場が自ら考えて行動する文化へと意識を改革した。
また、各支社の個々のメンバーのスキルアップも挙げられる。
たとえば、これまで課題を課題として捉えられなかったメンバーや、自ら仕事の計画を立てて仕事をすることができなかったメンバー、あるいは実行したことを振り返ったり、軌道修正したりを繰り返して成果を上げるPDCAサイクルを回すことができなかったメンバーが、アビームとの仕事で着実にスキルアップした。
村上氏は「今回、多くの仕事のやり方が変革されています。その効果は、2014年の業績にも表れはじめています。この結果にはVolvoグループの経営陣からも惜しみない称賛の声をもらっています。
REXプロジェクトを通じて、任務遂行を支えてくれたアビームのプロジェクトを成功に導く思いや、現場での実行力の高さを実感できました」と話している。
2012年6月よりアビームが参画したREXプロジェクトは、約2年半の支援で一区切りを迎えている。しかしUDトラックスの業務改善は引き続き継続しており、今後も取り組みは続いていく。改革のPDCAサイクルを回し続けるには、ツールの提供だけでなく、人材の育成も重要になる。
アビームではREXプロジェクトの一環として、コンサルタント向けのトレーニングをUDトラックス向けに適応させたり、ミーティングの場でリーダー役を持ち回るOJTを実施したり、ドキュメント作成方法のトレーニングなどを実践することで、UDトラックスの改革を推進する人材も育成した。
村上氏は、「REXプロジェクト終了後も、継続して改革を進めるリーダー的存在が各支社に登場し、“自らのプロジェクト”であるという意識を強く持って改革を推進しています。今後は実行計画をフォローアップするとともに、UDトラックスの収益にどれだけ影響を及ぼしているのかを把握していくことが重要になります」と話している。
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2016年1月15日
斎藤 岳
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