洗剤、トイレタリー用品は国内トップ、化粧品は2位のシェアを誇る花王グループ。
さらなるサービス向上のため、百貨店や量販店、ドラッグストアで販売を行うフィールド業務従事者のモバイル統合基盤構築、スマートフォン導入を計画。そのパートナーとしてアビームコンサルティングを選定し、コミュニケーション強化、業務の効率化などを実現した。
『SAP AWARD OF EXCELLENCE 2015』プロジェクト・アワード受賞
洗剤、トイレタリー用品は国内トップ、化粧品は2位のシェアを誇る花王グループ。
さらなるサービス向上のため、百貨店や量販店、ドラッグストアで販売を行うフィールド業務従事者のモバイル統合基盤構築、スマートフォン導入を計画。そのパートナーとしてアビームコンサルティングを選定し、コミュニケーション強化、業務の効率化などを実現した。
『SAP AWARD OF EXCELLENCE 2015』プロジェクト・アワード受賞
経営/事業上の課題
課題解決に向けたアビームの支援概要
支援の成果
花王株式会社(以下、花王)は、家庭用や業務用の洗剤、トイレタリー用品、化粧品、食品など、毎日の生活に欠かせない製品を世に送りつづけ、洗剤、トイレタリー用品は国内トップ、化粧品は2位のシェアを占めている。
花王グループには、約7,400名のフィールド業務従事者がおり、百貨店や量販店、ドラッグストアなどで販売や美容のカウンセリング、またディスプレイなどを行っている。
フィールド業務従事者にはそれぞれの業務をサポートするシステムが用意されているが、メインはフィーチャーフォンであり、ASPサービスの終了や保守性の悪さなど課題を抱えていた。
その課題を解決するとともに、将来的にも有効なデバイスとしてスマートフォンの導入を決め、独自の統合基盤構築を決断した。
花王 情報システム部門 統括で執行役員の安部真行氏は、花王グループの情報システム総責任者の立場から、「導入を決めた大きな理由は2つ。1つは、新しいキャンペーン内容の告知など、フィールド業務従事者とのコミュニケーションの促進・円滑化。現場の意見を商品やサービスにフィードバックするのは重要と考えます。もう1つは、勤務シフトや休暇など勤怠管理を効率化するためです」と話す。
そこでSAP® Mobile Platformを用いてモバイル統合基盤を構築し、約7,400名のフィールド業務従事者のうちドラッグストアでの店頭接客業務担当者約2,300名に対してスマートフォンを配布した。導入から運用まで全般的なサポートを行うパートナーにアビームコンサルティング(以下、アビーム)が選ばれた。
「アビームを選んだ一番の理由は、熱意と分かりやすさです。我々にとって初めてトライする内容でしたので、分からないことが多かったのですが、細かく丁寧に教えてくれました。それが信頼につながりましたね」と振り返るのは、花王 情報システム部門 ビジネスシステム部 コマーシャルエクセレンスグループの清原秀明氏。
特に、今まで花王が業務で使っていたフィーチャーフォンからスマートフォンへ替えるメリットの説明が明確だったと言う。
アビームが提案したコンセプトは3つ。
未来志向 将来を見越した統合基盤の導入
つながる フィールド業務のサービスレベルを向上するしくみの導入
ワンサービス 業務・システム・運用を効率化するしくみの導入
今回のプロジェクトは単発ではない。スタートは、フィールド業務従事者に活用してもらうことだが、先の将来を見据え、さまざまなしくみを順次開発していく。その際のコストも配慮した提案が高い評価をいただいた。
「課題と言いますか、配慮すべき点や解決すべき内容は少なくありませんでした」
花王 情報システム部門 ビジネスシステム部 コーポレートサービスグループの東保行氏は言う。
「初めてスマートフォンを導入するわけですから、たとえば画面の文字サイズから画面構成、機能など、ユーザビリティについては議論を重ね、多くのご提案をいただきました。また、言うまでもなく、このプロジェクトは、スマートフォンのアプリケーションをつくることが目的ではありません。フィールド業務従事者を社内の標準化された業務プロセスにどう統合していくかが対応課題の1つのテーマでした。いろいろなセクションの方がいますから、それぞれの業務プロセスを整理することからはじめました」
また、課題のひとつが、構築したシステムの使い方を日本全国にいる約2,300名のフィールド業務従事者にマスターしてもらうこと。フィールド業務従事者は、日々各地の店舗へ通っているため、どのように研修に参加してもらうか、また合理的な研修方法、トレーニング計画の策定にプロジェクトの早い段階から着手した。
花王のメンバーは社風のようなものと口を揃えるが、花王にはグループ各社、各セクションの壁がない。そのため、お互いの業務を理解しながら円滑に進めることができ、それがこのプロジェクトを成功に導いた要因のひとつといえる。
また、配慮すべき点を多角的に追求し、空論になりがちな内容に関しては、実際に動作するモックアップをつくり、ユーザビリティの確認と検討を繰り返しながらプロジェクトを進行した。
「サンプルをつくってもらったことが奏功したと思います。できあがりのイメージを少しずつ成長させながら進めてもらったことで理解が深まりました。早い段階から最終形がわかったので、誰もが興味を持てましたし、プロジェクトへの参加意欲も高まり、最後までモチベーションが下がることはありませんでした」と東氏。
約2,300名への研修方法に関しては、全国の延べ165カ所で開催。より短時間でマスターしてもらうためにトレーニングマニュアルやビデオを作成。花王とアビームでトレーニングチームを構成し、所要時間を計測するなど余念のない模擬トレーニングを行った。
花王 情報システム部門 アシスタントマネージャーの森尻裕夫氏は「トレーニングチームは業務、システム、アビームでの混成チームだったのですが、立上げ段階でアビームがうまくリードしてくれた結果、一体感を持って取り組めました」と話す。
今回のプロジェクトはスタート時より綿密な議論を繰り返し、花王、アビームお互いのやるべきことを着実に行ったため、一切の遅延なくスケジュールどおりに一体運営が実現した。
フィーチャーフォンからスマホに変わったことで画面が大きく見やすくなり、操作性も良くなったとフィールド業務従事者からの評判も上々。
また、今回のプロジェクト開始前に、フィールド業務従事者に個人で使っているモバイルを調査したところ、なんと90%がスマホの使用者であった。一般的な普及率が60%前後であることを考えれば、かなり高い数値といえる。大半がスマホの操作に慣れていたこともスムーズな導入を後押しした。
統合基盤を構築し、スマートフォンを導入したことで、オフィスとのコミュニケーションが活性化。オフィスからの告知がスムーズになったうえ、インタラクティブな情報収集によりサービス向上を促進している。
フィールド業務従事者同士もコミュニケーションしやすくなり、ノウハウやスキルが伝承され、これもサービスのクオリティを高めている。
また、旧態依然とした紙ベースの勤怠管理などの作業が廃止されることで多大な労力とコストが削減されるなど、導入効果は多方面に波及している。
安部氏は言う。「今後はICT技術の進化を見つめながら、販売や営業支援など業務内容を拡大していくうえ、OSのバージョンアップや新機種への入れ替え、改善など、より効率的な運用・保守を図っていきます。
アビームが掲げている“リアルパートナー”どおり、常に真摯に責任感をもって業務を遂行してもらいました。このワードに嘘はありませんでした」。
今回は、現場をサポートするためのツールとしてスマートフォンを導入した。モバイル基盤システムをどのように発展させ、有効活用していくかが次の課題であり、同時に時代を見据えた施策をスピーディに提案していくことがリアルパートナー、アビームの使命である。
Customer Profile
2015年7月1日
橘 知志
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