四国4県と全国を結ぶ鉄道ネットワークを保有し、鉄道事業や旅行事業等を展開する四国旅客鉄道株式会社。従前の財務システムが抱えていた数々の課題を解決するべく、鉄道事業会計規則に対応した「ABeam Transportation Solution」を導入。
財務会計業務のさらなる効率化・合理化、さらにシステム運用に関わるコスト削減への新たな路線を切り拓いた。
四国4県と全国を結ぶ鉄道ネットワークを保有し、鉄道事業や旅行事業等を展開する四国旅客鉄道株式会社。従前の財務システムが抱えていた数々の課題を解決するべく、鉄道事業会計規則に対応した「ABeam Transportation Solution」を導入。
財務会計業務のさらなる効率化・合理化、さらにシステム運用に関わるコスト削減への新たな路線を切り拓いた。
経営/事業上の課題
課題解決に向けたアビームの支援概要
支援の成果
JR四国は、四国における基幹的公共輸送機関の役割を担うべく、鉄道事業、旅行事業を中心にJR四国グループとしてバス事業や ホテル事業、不動産事業、物販 事業など幅広いジャンルのサービスを提供。地域の快適な暮らしと発展に貢献している。
数多くの事業を展開する中、財務システムにおいて様々な課題を抱えていた。従前のシステムを導入する際、実行環境をメインフレームからサーバへ移行する作業を行ったが、あらゆる機能を取り込む形で開発を進めたため、予期しない不具合を招く結果となった。
自社の業務に合わせるべくアドオンやカスタマイズを行ったため、運用後に機能不足でデータパッチが多発する一方、パッチの適用が困難で必要な機能は新たに作り込んでシステムを改修。
そうした保守費用を低減するために、法改正や税制改正等の対応はベンダーに委託せずグループ企業内で行った。特に鉄道会社の場合、土地や建物のみならずレール等の多大な固定資産を保有しているので、財務システムにおいては固定資産関係業務の効率化も強く求められる。
そこで、JR四国では鉄道業務により適したソフトウェアの導入を2010年6月から検討し始めた。
JR四国 総合企画本部 課長 末沢直邦氏は当時を振り返り、「私鉄に導入されている5種類ほどの鉄道会計ソフトを候補に挙げましたが、しっくりくるものがありませんでした」と話す。
そのような中、同社はアビームコンサルティング(以下、アビーム)が提供する運輸・交通業向けSAP® ERPテンプレートソリューションであるATS(ABeam Transportation Solution)に着目する。
すでにJR各社や大手私鉄、大手物流企業など10社以上に採用されているATSは、標準プロセスフローはもとより、他社事例より得られた業務改善のナレッジまでを搭載。業界必須要件も他社で実績のあるソリューション機能がカバーしているため、高いシステム適合率を実現する。
会計・管理会計・購買管理・工事管理・固定資産管理から人事管理まで、幅広い領域を対象としたサービスの提供が可能で、さらにIFRSや税制改正にも対応できる。
「導入実績も豊富で、担当者による説明やデモンストレーションを受けて信頼できる会社だと感じました」と末沢氏。
同社の財務部経理課 副長 戸川健司氏は「ATS導入企業を見学させてもらいましたが、製品のみならず『できないことがあったらすぐ代替案を提示するなどの対応がすごく良い』とアビームを高く評価していたのが印象的でした」と話す。
また新プロジェクトを共に推進するグループ会社のJR四国情報システム 情報システム部 課長 西谷光弘氏はこう語る。
「多くの導入企業から得られた経験や知識が集約されていると聞き、カスタマイズを行わずに導入するという我々の新システムにもっともふさわしいソフトだと思いました」。
NECグループとしては、過去に仮想化基盤の構築ほか様々な案件でJR四国との信頼関係が築かれており、本件でもインフラやインターフェースの構築までをトータルに提供できる体制が背景にあることも後押しとなった。
そして2012年6月、アビームを新たなパートナー企業に次期財務システム構築プロジェクトが始動した。
新プロジェクトの基本構想は半年の歳月をかけてじっくり練られた。あらゆる機能を取り込もうとして逆に不具合が生じた従前システムの導入時を省みて
「ATSでできること、できないことを見極め、運用後にシステムを独自改修するような事態を回避しようと考えました」と話すのはJR四国 情報システム情報システム部 石原裕士氏。
前渡資金管理、駅収入金管理等についてはATS外で、一からシステムを作成。結果、サーバ統合インフラ基盤を活用しATSと外付けの周辺システムとのインターフェースを構築する必要は生じたが、その部分はNECグループの総合力でカバーした。
「利用ユーザの多い業務は外付けのシステムで対応すると割り切ったことで、現場の担当者が使いやすい専用の画面を構築するなどの工夫も行えました」(石原氏)。
そのことに関して、アビーム側でプロジェクトの指揮を執った執行役員 プリンシパルの山田紀夫は
「お客様は我々が提供するソリューションを深く理解し、業務に合わせて無理にパッケージをカスタマイズするのではなく、ATSをベースに『この機能はこのシステムに任せる』という線引きを明確にされました。過去や現状にとらわれることなく、新しいソリューションで何ができるか、その中であるべき姿は何かを常に合理的に考える姿勢で課題解決に臨んでいただけたことに感謝しています」と話す。
新システムは当初の計画通り2014年4月に運用を開始した。プロジェクトの推進に携わってきたアビームのシニアマネージャー 若杉亮太は
「打合せの雰囲気も非常に良く、お客様も含めたメンバー全員が前向きにプロジェクトに参画したことが大きかったと思います」と振り返る。
タスク着手前の計画段階でアビームメソッドならびにATSをベースとしたプロセスについて、アビーム内あるいはお客様と十分に議論したうえで作業を進めたことが、手戻りを極小化することにつながった。またプロジェクト進行中にもいくつか新たな課題が生じたが、安易に追加開発で対応することはせず、複数の代替案を揃えお客様とアビームの双方で最適な対応方法を模索し合意しながら進めたことも功を奏した。
運用後のシステムの状態について、西谷氏は「確実に従前のシステムよりも安定しています」と話す。
新たな入力方法や項目名称の変更等に現場が戸惑うのではと心配する声もあったが、予想以上に混乱はなかった。
JR四国 総合企画本部 副長 香川祐二郎氏は
「入力の項目数も少ないし、個人的にはむしろSAPのほうが操作は容易だと感じます。周囲からも同様の声をよく耳にします」と語る。
また、国鉄時代からシステムや制度変更が幾度となく繰り返されてきた中、固定資産データの管理手法が複雑になりコードを決定する段階で判断に迷うことも多かったが、今回の導入は一度それに見直しをかける契機にもなった。
さらに、情報システム担当者が早い段階からプロジェクトに参画したことで、業務知識、技術レベルが向上するという、キックオフ前は予期していなかった効果も得られた。様々な課題を解決するべく導入された新システムは、多様な付加価値をもたらしたのである。
Customer Profile
2014年9月1日
山田 紀夫
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