大手流通グループ・イオンは、近年の中期経営計画で日本・中国・アセアンの3本社体制に移行。イオン中国本社(イオン(中国)投資有限公司)の設立を機に、従来までグループ各社が個別に行ってきた人事・会計等の後方業務を統一化・集約化するプロジェクトを推進。SAPをベースとした共通プロセステンプレートの開発と各社への展開により、コスト削減と競争力の強化、グループの一体感の醸成を推進している。
大手流通グループ・イオンは、近年の中期経営計画で日本・中国・アセアンの3本社体制に移行。イオン中国本社(イオン(中国)投資有限公司)の設立を機に、従来までグループ各社が個別に行ってきた人事・会計等の後方業務を統一化・集約化するプロジェクトを推進。SAPをベースとした共通プロセステンプレートの開発と各社への展開により、コスト削減と競争力の強化、グループの一体感の醸成を推進している。
経営/事業上の課題
課題解決に向けたアビームの支援概要
支援の成果
営業収益日本小売業No.1を3期連続(2012 ~ 2014年度)で達成したイオングループ。海外でも1980年代半ばより積極的な事業展開を行っており、中国では1985年の香港を皮切りに広東、青島、深セン、北京などに拠点を設け、広域で事業を行っている。
2012年3月にイオングループ中国本社(イオン(中国)投資有限公司)を設立。それを機に、各社の業務プロセスの統一を図ることとなった。特にこれまでのシステムでは店舗が増えるたびに後方業務のスタッフも増やさないと対応できない状況だったため、急速に進む多店舗展開を鑑みて、新たなシステムの導入による合理的な後方業務の仕組みづくりに着手した。
当初のプロジェクトは2011年3月に開始、翌年1月に最初の展開拠点であるイオン広東に新システムを導入した。
イオン(中国)投資有限公司 財務会計本部 本部長 平野雅彦氏は当時を振り返り、
「広東で構築したシステムを、カセットのように他のグループ会社にも展開していくことを考えていました。しかし、広東への導入が完了した時点でそのまま展開するのは難しいと判断し、いったんプロジェクトを仕切り直しすることにしたのです」と話す。
その際、プロジェクトのパートナー企業も改めて選び直すこととなり、最終的にアビームに白羽の矢が立てられた。
新たなパートナー企業としてアビームを選定した理由として「問題の把握力や分析力、提案力に優れており、重要なポイントの一つであるコストパフォーマンスも非常に高かった」と平野氏。
また、イオン(中国)有限公司 管理本部 本部長 白濱耕二氏は「SAPの実績が豊かで、またイオンと同様に中国で事業を展開する日系企業に関する知見や情報を保有していたことも大きな理由でした」と話す。
ただし、アビームとの取引実績がないため最終決定は慎重に行った。
「社内の本部長会議で『実際にコンサルティングを受けた会社の話を聞いてみてはどうか』ということになり、アビームが過去に取引した中国事業を行う日系企業を5社ほど紹介していただき、財務や人事、ITの責任者に電話で話を伺いました。そうしたところ非常に評判が良く、中には『一緒に悩み、考え、課題を解決してくれる、極めて日本的な会社』と太鼓判を押す方もいました。そこで、アビームとともにプロジェクトを進めていくことを決めました」(平野氏)。
共通プロセスが実装されたシステムの開発自体はそれほど難しい課題ではなかった。
「問題は、地域によって人事、購買の制度、財務帳簿などの運用方法が異なっていること。グループ会社が今まで個別に行ってきたことはいずれも正しいやり方であるため、それをどのようにして各社に納得してもらい共通プロセスを使ってもらうかが一番の難題でした」と話すのはイオン(中国)投資有限公司 営業サポート本部 IT部長 篠原謙氏。
そこでアビームは、システムのソリューションに留まらず、各社の意識改革を推進するための仕組みづくりに力を注いだ。それは、本社および各地域会社の責任者のみならず、マネージャーや担当者など階層別にきめ細かなコミュニケーションプランを策定し、現場で起こった問題がプロジェクトの中心メンバーへ即座にフィードバックされる体制だった。
それを構築することにより、責任者層はプロジェクトの全体像や進捗状況をつねに把握できるようになった。
平野氏は「アビームの提案で、当社とアビームの管理者、さらに各社のプロジェクトリーダーが参加するステアリングコミッティを組織し、2週間に1回、テレビ会議を開きました。そこで、進捗の確認や課題のあぶり出しをかなり細かいレベルで行い、共通認識のもと新たに露見した課題をリアルタイムでつぶしていったのです。それがうまく機能し、本社と現場とのギャップも徐々に解消されていきました」と説明する。
「アビームは当社がやるべきこともきちっと要求してきます。それまで自分たちが最適なソリューションだと信じていたものを『このほうがよいのでは?』と提案され、ハッと気づくことも少なくありませんでした。それらはコンサルティングの豊かな経験から出て来るものだと感じました」と白濱氏は語る。
篠原氏も「以前のベンダーであれば『現場は反対しています』という報告で終わっていましたが、アビームの場合、まず現場の声を聞いて立案し、ソリューションの実施にあたっても現場の反対があればまき直しを行ってくれました。そこが大きな違いでした」と評価する。
アビーム側で本プロジェクトの責任者を務めた執行役員プリンシパルの梶浦英亮は「発注者と受託者という関係ではなく、同じ立場でプロジェクトを進めていくパートナーという意識で対応するよう心掛けました。手厳しい指摘も多々あったと思います。それを受け入れ、円滑な進行にご協力くださったお客様には大変感謝しています」と語る。
また、アビーム側でプロジェクトマネージャーを務めた越智秀一郎は、
「現場では言葉や文化の壁にぶつかる中、まずは話をして相手の主張を理解することを根気よく行いました。積極的にコミュニケーションをとることでお互いの感情的な部分もそぎ落とされ、真の課題を明確化し1つ1つ解決していきました」と話す。
新システムは現在まで、広東、深セン、北京、青島、中国本社、華東と6社に導入。今後も順次展開していく。
多拠点展開の上で課題となるのは、各地域で異なる給料の支払い方法や残業の計算方法といった人事法規制をどのように吸収していくかということ。
地域ごとにシステムをカスタマイズしていくのでは拠点が増えるたびに際限なく対応することになるため、ある程度の類型化を行い、数パターンのテンプレートを構築。
今後の拡張については、各地域の状況に応じて適したテンプレートを選び、順次導入していく。
「今回のプロジェクトで全社共通のシステムと業務プロセスの導入が可能になりましたが、後方業務の集約化という次のステップも同時に進めていきます。2014年春、イオン華東の1号店にSAPを導入したのに合わせ、シェアードサービスセンターへの業務委託も開始しました」と平野氏は説明する。
グループ会社であるイオンディライト(杭州)服務外包有限公司が、今回構築した会計、人事、購買等のシステムをベースにシェアードサービスセンターを開設。イオン中国グループにシェアードサービスを提供し、後方業務の効率化をサポートしている。
こちらにもアビームのノウハウが活かされている。
イオンディライト(杭州)服務外包有限公司のBPO事業推進部 部長 林和久氏は
「新たな取り組みとなるため、既存店ではなくしがらみの少ない新規店舗でパイロット運用を始めました。そこで完成させたものを他の拠点に徐々に広げていく計画です。現在、アビームにも協力いただき、共通プロセスの構築を進めています。まだ始まったばかりですが、会社や店舗を新たに立ち上げる時に必要な人材を抑え、コストの削減にも貢献できる感触をすでにつかんでいます」と語る。
特に中国の人材市場では、キャリアアップのために転職をする傾向が日本よりも強く、社員として優秀な人材を長期間確保するのが難しい。そのような中、会社や店舗を安定して運営していくためにシェアードサービスセンターに寄せられるイオン中国本社の期待は大きい。
「各拠点の独自性が出来上がっている中、中国ではなかなか事例の少ないシェアードサービスを活用し、イオン中国グループ全体をどうまとめていくかが今後の課題です。アビームが保有するシェアードサービスのノウハウをぜひ活かしてほしいと思っています」と林氏は語る。
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2014年9月1日
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