千代田化工建設グループはエネルギー需要の増加をはじめとする外部環境の変化やグローバル競争の激化に迅速に対応することを目的に、「新グローバル経営マネジメントシステム」の構築に着手。2013年春から本社とカタールの拠点に、約1年半という短期間での導入を実現し、運用を開始しました。
千代田化工建設グループはエネルギー需要の増加をはじめとする外部環境の変化やグローバル競争の激化に迅速に対応することを目的に、「新グローバル経営マネジメントシステム」の構築に着手。2013年春から本社とカタールの拠点に、約1年半という短期間での導入を実現し、運用を開始しました。
経営/事業上の課題
課題解決に向けたアビームの支援概要
支援の成果
千代田化工建設は、「総合エンジニアリング企業として、英知を結集し研鑽された技術を駆使してエネルギーと環境の調和を目指して事業の充実を図り、持続可能な社会の発展に貢献する」という経営理念に基づき、株主、顧客、取引先、従業員、地域社会などから信頼され、共感されるエンジニアリング会社を目指している。
その一環として、2013年度から2016年度までに取り組むべき中期経営計画「時代を捉え、時代を拓く」を策定。LNGをコア事業とし、オフショア、アップストリーム分野への進出、再生可能エネルギー分野の強化、事業投資の加速などを成長戦略とし、データマネジメントインフラの整備やグローバルオペレーションの推進などの基盤整備を推進している。
現在、全世界でエネルギー需要が伸び、ガスシフトや再生可能エネルギー、シェール革命など、構造的な変化で市場は活性化している。また寒冷地や深海など、開発難易度の高い地域の案件が増加。総合エンジニアリング会社としての総合力が求められる一方、EPC受注をめぐる競争が激化している。グローバル市場での競争に打ち勝つためには、グループ全体で、競争力、遂行力を発揮できるプロジェクト遂行基盤と管理基盤の整備、構築が不可欠になる。そこで、グローバルで共通に利用できるグローバル経営マネジメントシステムを短期間で構築し、真のグローバルオペレーションを展開することが必要だった。
グローバル経営マネジメントシステムとは、業務の進め方、管理の手法、用語などがグローバルに統一されている仕組み。IT基盤を整備し、すべてのプロジェクトのデータが同じ粒度で蓄積されることが重要になる。グローバル経営マネジメントシステム構築の狙いを千代田化工建設ITマネジメントユニットGMの増川順一氏は、次のように語る。「蓄積されたデータを活用することで、緻密なコスト管理やスケジュール管理、プロジェクトリスクの早期把握、着実なPDCAサイクルの徹底が可能になり、経営効率の向上や海外拠点に対するガバナンス強化につながります。ジョイントベンチャーにおけるイニシアティブの源泉となるIT基盤の構築により、競争力、遂行力に貢献するオペレーションデータマネジメントを実現することが最大の狙いでした。
アビームが選ばれた理由をグローバルプロジェクトマネジメント 本部 本部長代行 大木英介氏は、
「業界ごとに標準的な業務構成が定義された“Industry Framework®”を活用した導入アプローチが、われわれの目指すグローバル経営マネジメントシステム構築において非常に魅力的であり、この点を高く評価しました」と話す。
Industry Framework®は、アビームが長年培ったノウハウと、金融業、製造業、流通業など幅広い業種・業態を網羅した知識を反映させた業種別業務プロセスの標準モデル。効率的な現状業務調査を可能にし、現状の業務プロセスと比較し、網羅性を担保しつつ、あるべき将来の標準業務プロセス設計を促進するなど、業界特有の要件を踏まえたベストプラクティスの定着を支援する。
当プロジェクトでは、Industry Framework® for Engineering & Constructionを適用している。今回、千代田化工建設では、長期に培われた業務プロセスを一度分解し、最適化し直している。そのため業務の変革に対する反発に対応する覚悟が必要だった。
大木氏は「パートナー企業にもそれなりの覚悟と認識が求められましたがアビームには、プロジェクトを推進する覚悟と能力があると判断しました」と話している。
グローバル経営マネジメントシステム構築プロジェクトにおけるパートナー企業としてアビームコンサルティングが参画。2011年8月より、ビジネス設計および基本設計フェーズがスタートした。このフェーズでは、グローバルテンプレートで実現すべき業務やシステム機能について、多くの時間を割いて議論が重ねられた。その後、開発フェーズ、テスト・移行フェーズを経て、2013年4月に千代田化工建設の本社および中東の拠点の1つであるカタールで本番稼働を迎えている。このプロジェクトは、アビームコンサルティングのスタッフが最大で150名以上、クライアントやほかの参画会社を含めると300名以上の規模に及んでいる。
グローバル経営マネジメントシステム構築プロジェクトは、グローバルテンプレートの構築から本社への導入、さらにカタールの拠点への導入を目指して進められた。これだけの規模のプロジェクトであれば、本社のみへの導入であっても通常2年以上の期間が必要になるところ、1年半という短期間で実現した。
グローバル経営マネジメントシステムは、基幹業務システムとしての高い信頼性とエンジニアリング業界の業界標準であることを評価して「SAP® ERP 6.0」が採用されている。大手エンジニアリング企業によるSAP® ERP 6.0の本格導入事例は、国内初のプロジェクトとなる。
同時に「SAP® BusinessObjects(SAP BO)」によるデータ分析や分析レポートの仕組みも実装。プロジェクトポートフォリオ管理ソリューションの「Oracle® Primavera」、次世代型プロジェクトコストマネジメント統合製品の「ARES® PRISM G2」を、人事・給与システムパッケージの「COMPANY®」など、ベスト・オブ・ブリードの考え方に基づく統合ソリューションを実現した。
またSAP® ERP 6.0のアドオン開発は、アビームコンサルティングのオフショア開発拠点「Global Development Center」を活用。これにより高品質かつ低コストでの開発を短期間で実現した。
さらに、稼働後のサービスデスクを日本とマレーシアに置き、中東拠点からの英語の問い合わせにも対応したほか、AMOとのダブルサポートで手厚い保守運用を実施した。
短期導入を可能にした背景を増川氏は、「アビームコンサルティングは、コンサルタントという業種の壁を越え、われわれが目指すゴールに向けて共通認識を持ってシステム構築を推進してくれました。特に問題解決においてリーダーシップを発揮。カタールの拠点への導入時および稼働後のサポートも非常に助かっています」と話す。
さらに、品質、コスト、納期を、プロジェクトメンバーの1人ひとりがしっかりと意識すること、チームメンバー間のコミュニケーション、クライアントとの意思疎通を密接に行うこと、発生した課題やリスクに対して、優先順位を的確に判断した上で、リソースを柔軟に再配置し、迅速に解決を図ることなどを徹底して実践。その結果、千代田化工建設の本社およびカタールの拠点において、当初計画したスケジュールどおりに本番稼働を迎えることができた。
現在、千代田化工建設ではグローバル経営マネジメントシステムを活用することの重要性に対する理解が全社で浸透し始めている。会社全体としての共通言語を確立し、データマネジメントに活用されはじめたことで、プロジェクト推進における問題点や課題を容易に把握できるようになった。
真のグローバルオペレーションの実現に向けて、大木氏は、
「グローバル経営マネジメントシステムを、国内外の拠点に展開していくことが必要。同時に、導入された拠点におけるデータ活用方法を浸透させ、SAP BOによる分析レポートを拡充することで、より一層の分析手段の充実を目指しています」と語る。
今後、国内外のすべての拠点に展開していくためには、業務やシステムがなぜこのように設計されたのかを現場に理解してもらい、競争力を強化させながらグローバルに標準化を進めるという難しいプロセスが必要になる。
増川氏は、アビームへの今後の期待について、
「各拠点への展開において引き続きリーダーシップを発揮してもらうとともに、各拠点の関係者との調整役としてサポートしてほしいと思っています。今後は少し先の将来を見据えた提案をしてもらい、その提案を一緒に検討していきたいと思っています」と話している。
Customer Profile
2014年7月1日
富田 雅樹
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