プロジェクトは、まずシステムの選択、そしてパートナー選びから始まった。ともに重視されたのは鉄道会社への導入実績だった。鉄道事業には「鉄道事業会計規則」に準じるなど特殊な会計業務、多業種にわたる業務への知見が必要とされるからだ。
パッケージはSAP® ERP 6.0が選ばれた。他パッケージに比べグループ各社への適合率が高く、十分な機能を有し、そしてIFRS適用の際も追加投資が発生しないといった対応が可能である点が評価された。
パートナーに選ばれたのは、アビームだった。鉄道会社への導入経験者が多数プロジェクトに参画予定であることはもちろん、なんといっても鉄道テンプレート=ATS(ABeam Transportation Solution)を有している点が評価されての決定であった。
ATSとは、アビームのノウハウと、他社事例から得られたナレッジが凝縮された、運輸交通業向けのERPテンプレートソリューションである。すでに10以上の企業グループに採用されている業界スタンダードであることの信頼性・安心感、カバーする業務範囲が広いことが特徴だ。
さらには、アプリケーションだけではなくハードウェアまで一貫して任せられる、NECグループとしての安心感も大きな決定要因となった。
今回のシステム再構築に関しては、SAPとATSの機能を最大限に活用し、業務の見直しを進め、アドオン開発は行わないことを方針とした。多くのアドオン開発を行ってしまうと、工数の増大はもちろん運用保守の面などで柔軟な対応が難しくなる。
京王電鉄の総合企画本部 IT戦略部長、後藤順滋氏は
「アドオン開発を行わずに計画通りに稼働することができました。ATSが緩衝材の役割を果たしたのが大きかったと感じています。ユーザーが抱える課題に関して、ATSの微修正で対応できたため、業務運用での対応をユーザーにお願いしやすくなりました」とATSのメリットを語る。