原子力は安定供給と脱炭素を両立する重要な電源として再評価される一方、新設・リプレースや長期運転には多額の投資と長期の回収期間を要するため、市場価格に依存した収益構造だけでは投資予見性の確保が難しい。原子力PPAは、需要家との長期契約を通じて価格・数量を一定程度固定し、発電事業者の収益安定化と需要家の調達安定化を両立する仕組みとなる。特にAIデータセンターは、原子力投資を支えるアンカー需要家となり得る。原子力に再生可能エネルギーや蓄電池を組み合わせ、脱炭素・安定供給・価格予見性を一体的に提供することで、新たな電力ソリューションへの発展が期待される。
これに伴い、原子力の投資評価も、市場価格中心の従来型から、データセンター需要、PPAの獲得可能性、容量収入などを織り込んだポートフォリオ型へ高度化する必要がある。PPA価格には、発電原価や市場価格に加え、非化石価値、安定供給価値、停止時の代替調達リスクなどを適切に反映するとともに、発電・小売・需要家間のリスク分担を明確化することが重要となる。
すなわち、原子力PPAは、原子力事業を市場環境に左右される「市場依存型」から、大口需要家との長期契約を基盤とする「需要家連携型」へ転換する仕組みと位置付けられる。その実現には、電源・市場・契約を一体的に設計し、既存の投資回収制度との整合を図りながら、需要家の長期コミットメントを原子力投資につなげる仕組みを構築することが重要となる。