改正物流効率化法とは?CLO(Chief Logistics Officer)設置義務化に向けて荷主企業が取り組むべきポイントの解説 第1回 物流を前提とする経営へ ― CLOが担う構造転換

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2026.03.30
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2026年4月に改正物流効率化法の第二段階(以下、物流改正法)が施行される。本改正は単なる規制強化ではなく、荷主に対し「物流を経営課題として扱えるか」を問う制度転換である。
近年、国の政策や各種議論では、CLOの設置や権限強化によって、関係部署間の調整や社外事業者との連携を推進する役割の重要性が強調されている。しかし、企業の物流改革を支援する中では、CLOが単に調整を進めるだけでは十分ではないと実感している。
とりわけ、今回の制度対応において直面する本質的な課題は、従来の物流改善とは性質が異なり、企業の意思決定構造そのものに踏み込む必要がある点にある。

本インサイトでは、アビームコンサルティングの物流領域における支援実績をもとに、企業が取り組むべき課題とCLOの役割を全3回にわたり整理する。

【補足】本稿で扱う「改正物流効率化法」は、輸送力制約が常態化する中で、荷主・物流事業者に対し、荷待ち/荷役の短縮や積載効率の改善を促すことを狙いとする制度改正である。2026年4月施行の第二段階では、一定規模の荷主(特定荷主)に対し、中期計画の策定、取り組み・計測結果の定期報告、物流統括管理者の設置等が求められる。本稿では、この2026年4月施行の改正部分を便宜上「物流改正」と呼ぶ。

  • 橘 悟

    大里 和哉

    Senior Manager

荷主の企業競争力を左右する物流改正法の影響

まず本改正のポイントは、単発の対応ではなく「計画→測定・報告→体制(CLO)」をセットで求め、取り組み状況が物流市場から比較可能になる点にある。
2026年から適用される特定荷主への義務事項は、①「荷待ち時間」「荷役時間」「積載率」に関する具体的な措置内容や目標を記載した中長期計画の策定、②①の進捗や荷待ち時間の計測結果(実測値)の国への定期報告、③CLOの設置である。本改正は、荷主に構造的な改善責任を明確に求める枠組みといえる。
取り組み状況は可視化され、改善姿勢が見えない荷主企業は市場の中で物流業者から敬遠されるようになり、静かに物流の選択肢を失っていく(図1)。

図1 物流改正法の特定荷主義務と評価制度

取り組みが不十分な場合の不利益は、行政対応にとどまらない。輸送力が不足する市場環境の中で、「協力的な荷主」として選ばれにくくなることに直結する。
その結果、物流事業者による荷主の選別が進むだけでなく、荷待ち時間の短縮や積載効率の改善が進まなければ、自社の物流力そのものが徐々に弱体化していく。
物流の停滞は、リードタイムの長期化やコスト増加を招き、最終的には企業競争力の低下として経営に跳ね返る(図2)。すなわち、物流改正法への対応は制度対応の巧拙ではなく、輸送力が制約となる時代において、自社の供給基盤をいかに維持・強化するかという経営課題である。

図2 荷主が努力しない場合に想定される影響

CLOの真の役割

鍵となるのは、物流部門の改善努力にとどまらず、調達・生産・販売の意思決定に物流制約を組み込めるかである。そして、その設計責任を担うのがCLOである。
CLOには中長期計画の策定・実行や社内外の調整が求められているが、部門横断の調整はあくまで前提にすぎない。本改正の本質は「物流の改善」にとどまるものではなく、調達・生産・販売等の上位計画に踏み込んだ、「全社的な意思決定の前提そのものの見直し」にある。
すなわちCLOの役割とは、経営判断の構造そのものを抜本的に変革することに他ならない(図3)。

図3 改善対象とCLOの役割の関係

多くの企業を支援してきた経験から言えば、物流改革は最終的に、物量変動の平準化や納品条件の見直しなど、生産・販売の前提に踏み込む施策へと行き着く。しかしその過程では、「欠品が課題の中で、なぜ物流を優先するのか」といった販売部門からの反発を受ける場面も少なくない。こうした状況を打開するため、管理会計の見直しや、販売部門が物流改善に参画するためのインセンティブ設計を行うこともある。それでもなお、コスト改善と直接結びつかない荷待ち時間等の解決には十分とはいえない。売上最大化や欠品防止を軸とした指標体系はすでに組織に深く組み込まれており、その意思決定の枠組みの中では、物流は前提条件ではなく、後から調整される対象として扱われるからである。
だからこそ必要なのは、物流を“後から調整する対象”ではなく、“上流で無視できない制約条件”へと引き上げることである。目指すのは単なる物流最適化ではない。物流を含めた複数の軸で均衡を取る経営構造である。
CLOの本質的役割は、物流を経営制約として組み込む設計責任者として構造転換を実現することにある(図4)。

図4 CLOの役割(一般像と本質)

CLOを機能させる3ステップ

CLOは肩書きや配置だけで機能するわけではない。本質は、物流を無視できない経営判断へと変える基準と仕組みの整備にある。具体的に以下の3ステップで経営構造を整備する必要がある(図5)。

  1. 物流の構造を可視化する
    現場の逼迫を訴える声を拾うだけでは、CLOは“苦情の代弁者”にとどまる。
    必要なのは、物流指標と営業条件、生産計画との因果関係を可視化し、どの意思決定が物流負荷を生んでいるのかを構造的かつ客観的に示すことだ。
  2. 物流KPIを経営判断の制約に引き上げる
    可視化しただけでは、組織は動かない。
    積載率や荷待ち時間を単なる物流KPIとしてではなく、目先の損益よりも優先して守るべき制約条件として扱う必要がある。CLOは数値の良し悪しのみを見るのではなく、売上や納期を追求する意思決定において物流制約を問う仕組みに変えなければならない。
  3. 逸脱時の意思決定ルールを定める
    物流KPIは他部門のKPIとトレードオフが生じやすい。だからこそ、逸脱が起きた際の扱いをあらかじめ定めておかねばならない。
    継続的な逸脱が見られたときの再計画やプロセス見直しなど、対応手順の明確化が必要である。例外をゼロにする必要はないが、例外を可視化せずに積み上げてはならない。
図5 CLOが役割を発揮するための整備事項

システム基盤の再設計

こうした意思決定構造の転換を実現するうえで不可欠となるのが、情報基盤である。
しかし多くの企業では、物流システムは出荷や在庫を管理する「実行管理」にとどまっている。その結果、生産や販売の計画は物流の制約を十分に織り込まないまま決定され、物流は常に後追いの調整を強いられる。
必要なのは、計画系と実行系を横断し、物流を制約条件として、生産計画や供給計画といった物流上位の計画に組み込む仕組みである。

物流を守るとは、物流を特別扱いすることではない。
事業が安定した輸送継続性を維持できる構造を整えることである。
そして、その構造整備は、単なる制度対応にとどまるものではない。
物流の持続可能性を確かなものとし、環境対応や循環型社会への移行など、これからの物流が直面する新たな課題に企業が向き合うための土台となるのである。

本稿では、物流改正法の本質とCLOに求められる役割を整理した。
これらの取り組みは個別の改善施策ではなく、意思決定の構造そのものを設計し直す取り組みである。実際には部門横断での合意形成やデータ統合、既存の計画プロセスの見直しなど、多岐にわたる変革が求められる。
アビームコンサルティングでは、様々な物流改革を手掛けており、意思決定に関わる構造改革に関する提言も行ってきた。物流KPIと事業KPIの因果を可視化、物流制約を織り込んだ需給計画の設計、部門横断での意思決定ルールの整備・定着、システムの見直しまでを含めて支援している。

次回は、荷待ち時間・荷役時間の短縮にどう着手すべきかを具体的に解説する。
さらに第3回では、積載率向上の実践と、上位の計画に物流制約を組み込む「ロジスティクスコントローラー」の考え方を提示する。


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