持続可能なIT運用保守~ビジネスの安定と成長の鍵~

ホワイトペーパー
2025.06.19
  • テクノロジー戦略&マネジメント
  • アウトソーシング
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アビームコンサルティングは「持続可能なIT運用保守~ビジネスの安定と成長の鍵~」と題したホワイトペーパーを発行しました。

本レポートは、国内主要グローバル企業におけるIT運用保守の取り組み状況や課題を調査し、あるべき姿に向けた提言をまとめたものです。

COVID-19の流行、円安・インフレの進行、世界の分断・緊張の高まり、少子・高齢化による人口減など、政治・経済・社会が急速に変化しています。このような状況の中で、企業のIT部門の役割は変化しており、技術の進展により複雑化した既存システムの安定的な維持管理が必要とされています。

アビームコンサルティングは、IT運用保守に焦点をあて、売上1,000億円以上の国内主要グローバル企業15社のIT部門責任者へアンケートやインタビューを行い、取り組みにおける施策・効果・課題について調査しました。

目次

1. IT部門の役割はどのように変化したか
2. 各テーマへの取り組み状況
3. あるべきIT運用保守に向けた提言
4. 外部パートナーの有効活用
おわりに

■ホワイトペーパーの全文は下記をご覧ください。

エグゼクティブサマリ

レポートサマリ(1) 主な調査結果

1.企業の7割以上が外部委託を強化、6割以上が社員の採用・再配置を進めている

7割以上の企業が外部委託の活用を強化しており、6割以上が社員の新規採用や既存社員の配属変更を進めるなど、人材配置の最適化に取り組んでいることが分かった。マネジメントや知見が求められるコア業務は内製化、定型業務やなかでも重要度の低いシステムの運用保守領域は外製化といった役割分担が進んでいる。属人化しがちな業務の文書化・形式知化やテクノロジーによる省力化も進んでいるものの、運用保守スコープの見直しにまで踏み込めている企業は極めて少数という結果となった。

図1 人材配置最適化に向けた取り組み施策(回答会社数:15、複数選択可)

2.IT部門の9割以上が業務の自動化に取り組んでいるものの、AI活用による業務高度化への着手は5割にとどまる

9割以上の企業がテクノロジー活用によって業務自動化を推進し、半数は業務の標準化や不要業務の整理も並行して進めている。一方で、生成AIを活用した業務高度化に取り組む企業は5割にとどまり、AI活用には知見を持つ人材の不足といった課題が露見された。業務高度化が急務となるなか、技術理解が必要な部分は外部パートナーと連携しながら推進することが求められる。

図2 生産性向上に向けた取り組み施策(回答会社数:12、複数選択可)

3.IT部門の7割以上が外部人材コスト最適化に取り組む一方、内部人材コストの最適化は4割未満

7割以上の企業が海外拠点や現地ベンダーを活用した外部人材コストの最適化に取り組んでいる。また、ライセンス料・保守料といった固定費用の定期的な見直しによるコスト削減を進めている企業も6割以上となっている。一方で、自社・グループ内リソースの見直しといった内部人材コストの最適化に着手している企業は4割未満にとどまっていることが分かった。円安の進行や人件費上昇といった外部要因により、投資費用の妥当性の判断が難しい状況となっており、社内外のリソース活用において長期的視野での投資・費用最適化のロードマップ作成と効果測定が求められている。

図3 IT運用保守における投資・費用最適化に向けた取り組み施策(回答会社数:14、複数選択可)

レポートサマリ(2) IT部門の業務改革を阻む6つの壁

調査結果に基づき、企業価値創出の最大化に向けたIT運用保守部門のあるべき姿の実現において、以下の6つの課題が明らかになりました。

1. 高い業務負荷

IT部門の業務負荷の増大により、新たな取り組みが後回しとなる課題が顕在化している。最重要案件への対応が優先され、人員を増やしても引き継ぎの難しさから即戦力化が進まず、計画していた施策の実行が困難になるケースが多い。

2. 業務の属人化

業務の属人化が進み、改善や引き継ぎの難しさが課題となっている。省人化の影響で業務マニュアルの整備が進まず、一人で業務を担当するケースが増加し、結果として属人化が固定化されている。

3. 人材のアンマッチ

新規業務への配属を希望しない社員や、ベテラン層におけるリスキリングの難しさが要因となり、IT運用保守から高付加価値業務へのシフトが困難となるケースが多い。

4. 不十分なシニア化対応

ベテラン層の退職、中堅層の人員不足や業務負荷の高さにより、十分なナレッジの伝達が行えないケースが多く、次世代への継承が進まないという負のスパイラルが懸念される。

5. 標準化・効率化の壁

業務の標準化・効率化の実現に欠かせない、継続的なパフォーマンス評価・改善を行うための機能・体制の維持が難しいことに加え、AIなどの最先端技術を活用できる人材が不足しているケースが多い。

6. コスト削減の限界

世界的な人件費やライセンス費の高騰により、海外人材の活用やボリュームディスカウントといった従来のコスト削減手法での最適化に限界が近づいている。さらなるコスト削減を可能にするためには、従来の延長線上ではなく抜本的な見直しが求められる。

IT運用保守部門による業務改革実現の4つのポイント

今回の調査で明らかとなった、日本企業におけるIT運用保守部門の業務改革施策の推進実態および課題について、アビームコンサルティングがこれまで培ってきたIT組織変革支援の知見・ノウハウから要因解析し、IT運用保守部門による業務改革実現における4つのポイントを導き出しました。

ポイント①:IT運用保守の内製・外製の再定義

IT運用保守領域におけるコア・ノンコア業務の区分や、社員採用の余地・制約をふまえ、内製化と外製化のバランスを再定義することが必要である。さらに、外部の専門家やオフショアリソースを効果的に活用することで、品質・コスト最適化を図りながら、人材の最適な再配置を実現することが重要である。

ポイント②:外部とのパートナリングの深化

IT運用保守の効率化や高度化を目指すうえで、業務における最適なリソース配分は欠かせず、なかでも重要となるのは、企業の課題に対して課題を強みに変え、伴走してくれる適切な外部パートナーとの強固な関係構築である。共創型のパートナーによる社員業務支援や業務引き継ぎ支援、人材育成や業務ノウハウの形式知化などのサポートを通じて成果の最大化を図ることが、企業の成長を加速させるカギとなる。

ポイント③:テクノロジーによる徹底的な自動化と体制構築(インテリジェントセンターの設置)

AIや自動化ツールの活用を加速させ、業務の効率化と生産性向上を推進することが、企業の持続的な成長に不可欠である。そのためには、投資対効果を慎重に評価し、優先的にリソースを投入すべき領域を的確に見極めることが求められる。また、業務の標準化・集約化・自動化を進めるうえで、持続可能な業務改革を継続的に推進するための基盤として、「インテリジェントセンター(IC)」の設置が有効である。ICは、全体推進、業務分析、テクノロジーといった専門領域を担う担当者が連携し、業務の自動化と最適化を一元的に推進する役割を果たす。これにより、業務の属人化を防ぎ、継続的な改善を可能にするとともに、より高い業務効率と生産性を実現することができる。

ポイント④:IT運用保守を人材育成・活用の場とする

IT運用保守は単なる業務維持・管理にとどまらず、社員のキャリア形成やスキル向上の機会として活用できる。若手は実務を通じてシステムやビジネスの理解を深め、中堅は効率化や自動化を推進し、ベテランは高度な業務を担当し、培った知見を活かして組織全体の戦略策定に貢献してもらうことが望ましい。これにより、社員の成長を促し、次世代の業務持続性や競争力向上につなげることが可能となる。

■ホワイトペーパーの全文は下記をご覧ください。

執筆者情報

  • 原 市郎

    Principal オペレーショナルエクセレンスビジネスユニット長
  • 渡邊 政彦

    Principal
  • 大山 知将

    Director
  • 岩﨑 洋祐

    岩﨑 洋祐

    Senior Manager
  • 倉石 雄

    Senior Manager
  • 上埜 亮子

    上埜 亮子

    Manager

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