アビームコンサルティングは、「期待通りの効果が得られていない」大きな理由の一つはM&A成立後に実施される企業統合のプロセス(Post Merger Integration: ポスト・マージャー・インテグレーション、以下PMI)にあると考える。
当社にご相談いただいた企業においても、統合後も一枚岩とならず個社別の事業経営が続いた実態は数えきれないほど多い。
- A社では、統合した両社の事業性が異なるあまり、業務プロセスや規定類の統合が全く進まなかった。その結果、規模拡大やコスト削減のシナジーが創出できていない。
- B社では、人事関連の規程が買収後も更新されることなく適用されている。そのため、人事異動や給与支払い業務などの人事部門の業務工数が二重に発生し、業務負荷が大きくなっている。
- C社では、これまで買収した複数社のシステムが併用されており、運用コストが高止まりしている。また、顧客や取引先の情報が一元化されていないため、各事業間の連携が弱く、大きな機会損失となっている。
- D社では、買収した海外の同業他社に対して、日本本社の管理体制や制度を浸透できておらず、グローバルガバナンスが機能していない。その結果、統合シナジーを創出できないことに加え、日本本社の管理コストが増大している。
GE、ノバルティス、デュポン、バンク・オブ・アメリカといった名だたるグローバル企業の経営コンサルタントを務めてきた元ハーバード・ビジネススクール教授のラム・チャラン氏が「戦略の失敗の70%は実行のまずさによる。知性やビジョンの欠如によるのではない。」と述べるように、M&Aにおいても、その実行フェーズに位置付けられるPMIの重要度は極めて高い。
もちろんM&A戦略を「1+1=2」と捉え、自社グループの規模拡大自体が目的であれば、プロセスやシステムの統合によるシナジーを期待する必要はない。しかし、M&Aを実施する多くの企業は、検討段階では大きなビジョンを描いているはずであり、多額の資金や多大な労力を投じて、果敢にチャレンジしたのは、大きな果実(=シナジー創出)を得ようとしたからであろう。少なくても、コスト観点において、単純に両社のコストが合算された状態のままであることは、統合に関わる多くのステークホルダーの納得を得難いと思われる。弊社のプロジェクト実績からも、統合直後は両社で重複する機能やリソースも多く、30%程度のコスト削減は達成可能と考える。