生成AI活用で行政事務の効率化と高度化に踏み出す、現場の声を反映した安全で利便性の高いAI環境を構築

経済産業省
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経済産業省

 経済産業省は、日本の経済と産業の発展、鉱物資源・エネルギーの安定供給を担う行政機関である。同省では行政事務の効率化と高度化のために生成AIの導入を計画し、パートナーとしてアビームコンサルティングを選んだ。検証調査事業を経て、2024年4月に生成AI環境「METI-LLM」の構築を開始し、わずか3カ月でサービスの稼働を実現した。METI-LLMは2025年10月時点で、全職員の6割弱にあたる累計約7000人が150万回以上利用。稼働率・利用頻度は非常に高く、省内での定着が進んでいる。今後もMETI-LLMの改善を通して、行政事務のより一層の効率化・高度化を目指していく考えだ。

経営/事業上の課題

  • 行政事務の効率化、高度化のための生成AI導入

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • 生成AI導入に向けた検証調査事業と導入事業という2つの事業を支援
  • セキュリティと利便性を両立した生成AI環境「METI-LLM」を構築から3カ月で稼働開始

支援の成果

  • METI-LLMは2025年10月時点で累計約7000人の職員が150万回以上利用、1日平均では約900人が6600回利用
  • 非常に高い稼働率・利用頻度で省内に定着し、行政事務の効率化・高度化に貢献

業務の効率化と政策立案のために生成AIの活用を計画

経済産業省(以下、経産省)は、2023年度から「組織経営改革」の取り組みとして、業務効率化の追求を重要な柱に掲げ、組織全体で業務改革を推進している。常に多くの政策課題を抱える中、知識の収集や分析、アイデア創出など政策立案に必要な情報は人の手で集めるしかなく、その解決が大きな課題であった。
2022年後半から生成AIが注目され、2023年春には社会実装が始まる中、経産省では生成AIの導入に取り組み始めた。作業を代替させることで業務を効率化するとともに、職員のブレーンリソースを組織が直面するより本質的な課題への挑戦に生かせると考えた。「官庁の業務では、絶対に間違いは起こせません。セキュリティインシデントのみならず、誤った理解や情報発信が発生することのないよう、職員が安心して生成AIを利用できる環境が求められています。まずは安定的に価値を創出できる仕組みをどのように実現できるかを検証することから始めました」と経済産業省 大臣官房 デジタル・トランスフォーメーション室 デジタル化推進マネージャー 長田 将士氏は語る。
生成AIを効果的に活用するには、現場の業務との親和性が高いものを特定する必要がある。そこで経産省では職員の業務を徹底的に調査して、生成AIで代替可能性の高い業務を選び出し、効果を検証することにした。「まず、職員がどのような業務に時間を割いているか、負荷がかかっているかをヒアリングを通して明らかにし、業務内容の類型化を行いました。その調査結果をもとに生成AI活用検証の企画を行っていきました」と経済産業省 大臣官房 デジタル・トランスフォーメーション室 統括係長 石井 悠人氏は話す。

生成AIの検証から実装、省内での活用まで二人三脚で取り組んでいただきました

経済産業省
大臣官房
デジタル・トランスフォーメーション室
デジタル化推進マネージャー
長田 将士氏

プロジェクトの目標・課題と解決策

生成AI実装に向けて、必要な意思決定の条件をひとつずつ整理

導入可能性検証調査では、各課の職員にヒアリングを実施し、生成AIに対する期待や業務上の課題を収集した。地道に職員の声に耳を傾け、現場の業務に即したユースケースの分析と抽出を進めた。そこで得られた意見をもとに業務を、問い合わせ対応、文案作成、要約、翻訳、論点抽出、壁打ち、コード生成、事例収集、データ解析の9つに類型化し、生成AIとの親和性が高いとの仮説を立てた。
「生成AIの導入検証にあたり、経産省の担当者である長田様・石井様がより良い意思決定をできるように、職員から寄せられた意見を的確に整理することも我々の大きな役割でした。業務の類型化も実際に行われている業務をしっかりとヒアリングした上で、抽象化を進めていきました。地道な取り組みでしたが、生成AIの実装に向けて必要な意思決定のための前提をひとつずつ整理していったのです」とアビームコンサルティング デジタルテクノロジービジネスユニット Artificial Intelligence Leapセクター マネージャー 桑原 崇は振り返る。
こうした取り組みに続き、職員が安心して利用できる環境を提供するため、セキュリティを重視したシステム構築に着手した。2023年当時は生成AIの社会実装が始まったばかりで、明確なデファクトスタンダードや参考事例は存在しなかった。そのため、検証に参加する150人の職員に生成AIを実際に使用してもらい、利用状況をログとして記録し、あわせてアンケートで評価を収集した。そして職員からのフィードバックを正面から受け止め、業務に最適化した生成AI検証環境の構築とユースケースの検証を進めていった。「生成AIが大きな話題となる中、職員には生成AIで多くのことが自在にできるのではないかという大きな期待がありました。期待と現実のバランスを考慮しつつ、生成AIの導入に適した業務とそうでない業務を適切に見極め、職員の理解を得ながら実装に向けた準備を進めていきました」(石井氏)
日々の業務に追われる中で、業務フローを客観的に整理することは容易ではない。それに対して、アビームは業務コンサルタントとしてフローの整理を支援し、その結果をもとに生成AIを活用した業務効率化の仕組みを検討・提案した。
「業務コンサルタントとして見た時に、経産省が抱える課題に対して、アビームは受託者というスタンスではなく、経産省の担当者と同じ目線で捉えてくれたので、検証をスムーズに進められたと思います」と長田氏は語る。一方で、システムの実装にあたっては、アビームはプロトタイプを迅速に作って提供し、検証に参加しているユーザーの評価を確実に反映し、新しいアイデアを次々に出して改良を重ねた。これにより、非常に高い品質でシステムを実装することが可能となった。

生成AIを活用した業務効率化や政策立案の高度化に向けて、今後も施策を検討・推進していきます

経済産業省
大臣官房
デジタル・トランスフォーメーション室
統括係長
石井 悠人氏

プロジェクトの成果と今後の展望

継続的な改善を進め、業務の効率化と高度化を推進

経産省では、導入可能性検証調査で、生成AIを省内の業務に十分に活用できるとの結論を得たことから、2024年度に全省レベルでの導入を決定した。2024年4月に生成AI環境「METI-LLM」の構築を開始し、3カ月後の6月末には稼働を開始した。
短期間で全職員が生成AIを利用できる環境を整える上で重要なのは、安全性と利便性の両立である。そのため、METI-LLMの構築にあたっては、セキュリティの確保を最優先し、安全安心な環境を実現するとともに、使いやすいユーザーインターフェースの設計も進めた。「多くの職員に使ってもらうためには、興味を持ってもらえる見栄えも重要だと考え、工夫を重ねました。一方、安全性の確保では経産省の情報システム固有のセキュリティ要件が多数存在しており、経産省とアビームの双方の目線で、丁寧に要件をクリアしていきました」(桑原)
経産省では職員向けの説明会を複数回開催し、METI-LLMの周知と利用方法を案内した。稼働開始後は利用状況をモニタリングし、職員の積極的な活用が見えたことから、システムの改善ポイントを模索し、新機能の提供や使いやすさの向上を図った。その結果、メジャーバージョンアップを4回実施し、2025年10月段階で全職員の6割弱にあたる約7000人が累計150万回以上、1日平均約900人が6600回以上利用するまでに至った。「省内で生成AIの活用は確実に定着してきました。アンケートには『政策立案の糸口をつかむきっかけとなった』『業務において欠かせない存在になっている』などの声が寄せられており、職員にとって非常に重要なツールになっています」(石井氏)
経産省では、今後、組織内の資料を生成AIが理解しやすい形式で蓄積・整理するためのデータ整備、職員が生成AIを正しく使いこなすためのリテラシー向上、そして現在運用中のMETI-LLMの継続的な改善を進める予定である。これらの取り組みにより、生成AIの一層の活用を推進し、行政事務のさらなる効率化、高度化を図る考えだ。

組織としてのデータ戦略をプロダクトに紐づける支援をし、業務効率化に資するプラットフォームを完成させました。引き続き、事業の中で、さらにMETI-LLMの価値を高める提案をしていきます

アビームコンサルティング
デジタルテクノロジービジネスユニット
Artificial Intelligence Leapセクター
マネージャー
桑原 崇

生成AI活用が期待されるユースケースのAs-Is/To-Be 生成AI活用が期待されるユースケースのAs-Is/To-Be
実際のMETI-LLM画面 実際のMETI-LLM画面

Customer Profile

会社名
経済産業省
所在地
東京都千代田区霞が関1-3-1
設立
1949年
事業内容
経済および産業の発展ならびに鉱物資源およびエネルギー資源の供給に関する行政を所管
経済産業省

2026年3月11日

  • 瀬戸口 崇

    瀬戸口 崇

    Director
  • 西岡 千尋

    Principal
  • 田中 厚志

    Director

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