SMBCコンシューマーファイナンス株式会社

SMBCコンシューマーファイナンス株式会社

Customer Profile

会社名 SMBCコンシューマーファイナンス株式会社
所在地 東京都中央区銀座四丁目12番15号
設立 1962(昭和37)年3月20日
事業内容 貸金業・保証業
資本金 140,737百万円

※会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

AIを活用した与信精度高度化の実証実験を実施
取引情報の評価ロジックを最適化、与信システムを再構築

消費者金融業界大手のSMBCコンシューマーファイナンス。同社は基幹業務である与信審査の一層の高度化を図り、デジタライゼーションの推進による顧客サービス向上のため、AIの活用を検討。アビームコンサルティングをパートナーに取引情報を利用した実証実験を行い、与信精度を高めることができるという結果を得た。その結果、取引情報の評価ロジックを最適化し、与信システムに組み込み、審査業務の高度化を実現した。

プロジェクト概要

導入前の課題

  • 業界において加速する先進技術実用化の動き
  • さらなる高度化が求められる基幹業務としての与信審査
  • 顧客サービス向上のためのデジタライゼーションへの対応

ABeam Solution

  • AIツールの選定および検証環境の構築
  • AIモデリングと性能測定
  • 審査精度検証

導入後の効果

  • AIを活用した取引情報の評価ロジックの最適化により与信精度を高度化
  • 顧客に、より安心してお取引いただけるサービスの提供
  • AIの活用範囲の拡大へ

Story

https://youtu.be/ALwgq03B-uE?rel=0
大内 崇行 氏

今回、アビームコンサルティングに入ってもらったことで、新たな分析手法を研究・実装することができ、与信モデルの高度化に向けて大きな力になりました

 

SMBCコンシューマーファイナンス株式会社
与信企画部 
グループ長
大内 崇行 氏

Story

プロジェクトの背景

AI活用による与信審査のさらなる高度化と顧客サービス向上を目指す

 SMBCコンシューマーファイナンスは1962年3月の設立以来、顧客の多様な資金ニーズに迅速に応える消費者金融サービスを提供してきた企業だ。2012年4月にはSMBCグループの一員となり、同年7月にはSMBCコンシューマーファイナンスへと社名を変更している。SMBCグループにおけるコンシューマーファイナンス事業の中核会社としてグループ各社と連携、さらなる成長に向け、直接融資を軸とした金融事業をはじめ保証事業、海外事業、債権管理事業の強化に取り組んでいる。

 近年、キャッシュレス決済の拡大や金融分野における先進技術の実用化の動きが加速し、経営環境が大きく変化している。その中でSMBCコンシューマーファイナンスでは、①顧客の行動変化に対応したデジタライゼーションを活用した先進的な商品・サービスの提供によるサービスの質 ②業務環境の変化に対応したビジネスモデルの再構築による業務の質 ③SMBCグループ経営の高度化に対応した経営管理体制の強化による経営の質といった3つの向上に取り組んでいる。

 SMBCコンシューマーファイナンスにとって、与信業務はコアコンピタンスであり、創業以来55年の事業の中で培ってきたノウハウと精度は極めて高い。「社会環境が大きく変化する中で、フィンテックやAI(人工知能)の活用が大きな注目を浴びています。その中で、先進的なAI技術を使って分析を行うことで、基幹業務である与信審査でのさらなる高度化を目指しました」とSMBCコンシューマーファイナンス与信企画部のグループ長大内崇行氏は語る。

 またSMBCグループは中期経営計画の中で、デジタライゼーションの推進をテーマに掲げている。その目標は様々な先端技術を使って、生産性や顧客へのサービス、業務効率の向上を実現していくことだ。そこでSMBCコンシューマーファイナンスもグループの一員として、AI活用に本腰を入れていくことにした。

Story

アビームコンサルティングの選定理由

AIに関する知見はもとより、消費者金融のビジネスモデルへの理解が決め手

 最先端AIは統計解析の専門家でないと使えない。その一方で、与信審査は消費者金融に関する業務知見が重要になる。そこでSMBCコンシューマーファイナンスでは、両方をカバーしたノウハウを有するコンサルタント会社をパートナーとして選ぶことにした。その中でとりわけ重視したのが消費者金融ビジネスに対する知見を持っているかどうかだった。「消費者金融の世界の細かいことまでは知らなくても、ビジネスモデルや与信の仕組みを理解して、どういう形でデータを使うことがサービス向上につながるのかを理解していることが重要だと考えました。AIの知見はあっても、ビジネスモデルを知らないと求める分析の仕方ではなくなってしまうので、その点を重視して比較検討しました」とSMBCコンシューマーファイナンス与信企画部の主任三口翔一郎氏は説明する。複数のコンサルティング会社と話し合った結果、AIに関する知見をもっている上に、消費者金融業界に最も明るかったアビームコンサルティングをパートナーに選んだ。

 

三口 翔一郎 氏

プロジェクト期間中、ミーティングを週1回開きましたが、そこでわかりやすい資料を出してもらったので、進捗状況や課題をよく理解することができました

 

SMBCコンシューマーファイナンス株式会社
与信企画部  主任
三口 翔一郎 氏

Story

プロジェクトの目標と推進する上での課題

ブラックボックスにならないことを要件に、実証実験で既存審査の精度と比較

 AI活用による審査業務の高度化は初めての試みであり、プロジェクトリスクが考えられるため、アビームコンサルティングは最初に実証実験を行うことを提案した。そしてプロジェクトでは、SMBCコンシューマーファイナンスの顧客層に最も適したAIを選定すること、監査実施時に審査の内容が説明できないブラックボックスにならないようにすること、という2つを必須条件に設定。既存審査と比べての精度向上を目標に設定した。

 「プロジェクトではAIを使って、有効変数として使える情報を選んだ上で変数を生成し、ロジスティック回帰の手法でモデリングするようにしました。このやり方であれば、変数が明確なため、ブラックボックスにならずに、精度が向上したかどうかを比較することができます」(大内氏)。

 SMBCコンシューマーファイナンスでは融資利用中の顧客の与信審査として、顧客の属性、借入状況などの信用情報に加え、取引情報を踏まえた総合的な与信判断を行っている。プロジェクトでは顧客の「借入れ」、「返済」、「返済の遅れ」という3つの取引情報に基づいて分析を行うことにした。通常、与信業務では毎月決まっている約定返済日への入金の遅れが多ければ多いほど取引情報の評価は悪くなる。AIを活用した分析で同じ結論を出すことができれば、与信精度の向上にAIを活用できることになる。その確認が実証実験の大きな目的だった。

 

図 審査精度の検証の評価方法

Story

課題の解決策

審査モデル構築と結果解釈の両輪でプロジェクトを遂行、実装性も含め判断

 AIの選定や得られた評価結果は統計の専門家でないと、優劣の判断をすることが難しいという面がある。そこでプロジェクトでは審査精度だけではなく、与信審査との親和性や実装性等の観点も含め判断することにした。審査モデル構築という一番難しい部分はその道のプロフェッショナルであるアビームコンサルティングが担い、結果の解釈はSMBCコンシューマーファイナンスの担当者が行うという体制で実証実験に取り組んだ。

 「最近では返済チャネルが当社ATM、口座引き落とし、コンビニATM、ネット銀行など多様化しています。例えば、このような返済チャネルがお客様評価に有効な変数であったとしても、今回は使わないというように、変数の取捨選択は私たちが判断しました。アビームコンサルティングのコンサルタントがいくら消費者金融の世界に精通していても、そこまで踏み込んで分析することは難しいと考えたからです」(三口氏)。

 2017年10月から、アビームコンサルティングが4カ月間かけて構想策定とAIモデリング、精度検証を行った。そして、その後与信企画部が既存モデルとの合成、最終精度の検証などを実施、その上でシステム開発部が実装に向けたプログラミングを行った。

 プロジェクトでは特定ベンダーのツールにとらわれずにゼロベースで、アビームコンサルティングとSMBCコンシューマーファイナンスが一緒になって、AIを選定していった。また与信審査の専門家が参加することで、将来的な審査のあり方について検討し、短期間で高品質、長期間に渡り利用可能な審査モデルを作り上げることが可能になった。さらに実証実験の中で、過去の取引情報を連続で見ていく方が与信精度のより一層の向上が実現することが分かり、アビームコンサルティングの提案で、その実装も行っている。

Story

導入効果と今後の展望

AIを活用して取引情報を最適化し与信システムに組み込んで運用、精度高度化を実現

 実証実験の結果、審査業務高度化に活用できると判断したSMBCコンシューマーファイナンスでは、2018年10月からAI技術を活用して取引情報を最適化し与信システムを稼働させ、与信審査業務に活用している。システムでは膨大なデータを迅速に処理できるAIの特性を生かし、短期間で取引情報の評価に有効な分析指標を抽出。このAIが導き出した分析指標を従来の分析指標に加え、これまでの8倍におよぶ分析指標を用いて、取引情報の評価ロジックを最適化し、与信システムを再構築、高度化を実現した。「AIは変数と分析データの両方が多い方が分析しやすいと聞いています。今回データ量は26億と非常に多かったのですが、変数が少なかったので、その中で精度を上げるのは非常に難しかったのではないかと思います。にもかかわらず、高い精度が実現できて本当によかったと思います」(大内氏)。

 新しい与信システムでのデフォルト結果が出るのはまだ先だが、実証実験で十分なシミュレーションを行っているので、想定通りの結果になるのではないかとSMBCコンシューマーファイナンスでは期待している。今回の成果を踏まえ、SMBCコンシューマーファイナンスでは現在の与信業務では使っていない外部データベースなどに、AIの活用範囲を拡大していく計画だ。そして、さらに与信精度を高め、顧客の年収や借入状況、取引状況に応じた、より最適な利用限度額を提供、顧客が安心して取引できる環境を実現していく考えだ。

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