京王グループ

京王電鉄株式会社

Customer Profile

会社名
京王電鉄株式会社
所在地
〒206-8502
東京都多摩市関戸一丁目9番地1
創業
1948年6月1日
資本金
590億2300万円
事業内容
鉄道事業や土地、建物の賃貸業・販売業、ホテル業などを事業として展開。

※会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

鉄道事業会計規則に対応したテンプレート ATS(ABeam Transportation Solution)でグループ全体を見据えた経理システムに一元化。

京王電鉄の前身である京王電気軌道株式会社が笹塚~調布間で鉄道を開通したのは1913年のこと。 以来、新宿からはじまる東京西部一帯を基盤に、多角的な事業を展開してきた。京王グループは運輸業、 流通業、不動産業、レジャー・サービス業、その他業と5つの事業グループから構成されている。 
しかし、20年以上前から利用している経理システムは、グループ各社に導入されてはいるものの業務効率化 の観点で課題を抱えていた。2013年に導入への動きが日本で再び活性化しはじめたIFRSへの対応も含め、 経理情報のグループ一元化・共有化、経理業務の標準化・効率化を求め、「共用経理システム導入プロジェクト」 が立ち上がった。

プロジェクト概要

課題

  • グループ会社の経理情報の一元化・共有化
  • 経理業務の標準化・効率化
  • システム運用保守業務の効率化

ソリューション

  • SAP® ERP 6.0で京王電鉄経理システムとグループ経理システムを統合
  • 鉄道事業会計規則に対応する鉄道テンプレート「ATS(ABeam Transportation Solution)」の活用

成功のポイント

  • 進化したATSの活用で 効率的な導入・スケジュール短縮を実現
  • グループ会社のコンセンサスを徹底、明確なトップダウンによる推進
  • 京王とアビームメンバーの活発なコミュニケーションによるプロジェクトチームの運営

Story

https://youtu.be/263gYSZLpNo
京王電鉄株式会社 総合企画本部 経理部長 伊沢 衞氏

鉄道会社への導入経験を豊富に有するメンバーを多数投入していただけました。
グループ展開するわけですから、多岐にわたる業種の知識・経験が必要になりますが、豊富な知識をお持ちだなと思いました。

京王電鉄株式会社 総合企画本部 経理部長
伊沢 衞氏

Story

プロジェクトの背景

グループ経理情報の共有化とともに、 IFRS対応、運用保守の効率化も狙う

京王グループは、京王電鉄を中心に、運輸業、流通業、不動産業、レジャー・サービス業、その他業と5つの事業グループから構成され ている。京王電鉄の鉄道事業は、新宿を起点とする京王線と渋谷を起点とする井の頭線からなり、東京都西部を中心に神奈川県北部にまたがる84.7kmの路線において1日約173万人を輸送している。 東京西部一帯を基盤に、そのスケールメリットとグループの総合力を生かした多角的な事業を展開し、地域社会の発展のために、沿線価値の向上に取り組んでいる。

一方、成長とともに課題となってきたのが、経理システムである。 会計規則の変遷により、連結開示の重要度が増したため、個社決算を主眼に置いた経理システムでは連結経理情報の収集が困難であった。グループの経理システムは、20年以上前に構築した京王電鉄の経理システムをベースに、各社向けにカスタマイズして導入していったため、システム内に機能の有無があり、経理業務の標準化・ 効率化が困難な状態であると同時にシステム運用保守の観点からも、制度変更の度に、会社ごとに経理システムを改修しなければならず、対応に時間を要していた。

さらに、近い将来IFRSへの対応という大きな課題もある。IFRSへの対応は、2010年上半期から検討が始まっていた。従来のシステムでは、IFRSへの対応が難しい。さらに、開示に必要となる経理情報の量が多くなるため、情報収集にかかる労力増大への対応やスピード 維持が懸念された。
IFRSの対応の検討については、強制適用の時期が不透明になったこともあり、いったん中断となった。しかし、現状のグループ会社の経理情報収集については、業務効率化の観点で課題があることから、 2011年12月にグループ経理システム再構築が、決断された。

今回のプロジェクトでは連結子会社への展開を前提として、まず京王電鉄とパイロット導入グループ会社2社のシステムを再構築することとなった。

京王電鉄の総合企画本部経理部長、伊沢衞氏は
「グループでひとつの経理システムを共用することで、グループ会社の経理情報の一元化・共有化はもちろん、さらなる経理業務の標準化・効率化、制度変更等によるシステム改修など運用保守業務の効率化が最大の狙いでした」とプロジェクトの目的を語る。

Story

アビームの選定理由

アドオン開発を抑えることができ、 他社事例の知見で進化したATSに魅力

プロジェクトは、まずシステムの選択、そしてパートナー選びから始まった。ともに重視されたのは鉄道会社への導入実績だった。鉄道事業には「鉄道事業会計規則」に準じるなど特殊な会計業務、多業種にわたる業務への知見が必要とされるからだ。
パッケージはSAP® ERP 6.0が選ばれた。他パッケージに比べグループ各社への適合率が高く、十分な機能を有し、そしてIFRS適用の際も追加投資が発生しないといった対応が可能である点が評価された。

パートナーに選ばれたのは、アビームだった。鉄道会社への導入経験者が多数プロジェクトに参画予定であることはもちろん、なんといっても鉄道テンプレート=ATS(ABeam Transportation Solution)を有している点が評価されての決定であった。
ATSとは、アビームのノウハウと、他社事例から得られたナレッジが凝縮された、運輸交通業向けのERPテンプレートソリューションである。すでに10以上の企業グループに採用されている業界スタンダードであることの 信頼性・安心感、カバーする業務範囲が広いことが特徴だ。
さらには、アプリケーションだけではなくハードウェアまで一貫して任せられる、NECグループとしての安心感も大きな決定要因となった。

今回のシステム再構築に関しては、SAPとATSの機能を最大限に 活用し、業務の見直しを進め、アドオン開発は行わないことを方針とした。多くのアドオン開発を行ってしまうと、工数の増大はもちろん運用保守の面などで柔軟な対応が難しくなる。

京王電鉄の総合企画本部 IT戦略部長、後藤順滋氏は
「アドオン開発を行わずに計画通りに稼働することができました。ATSが緩衝材の役割を果たしたのが大きかったと感じています。ユーザーが抱える課題に関して、ATSの微修正で対応できたため、業務運用での対応をユーザーにお願いしやすくなりました」とATSのメリットを語る。

■システム概要

■システム概要

Story

プロジェクトを推進する上での課題

多業種業務にも柔軟に対応、 同時に統制レベルも確保

京王電鉄の総合企画本部 経理部企画担当 課長、小堺健司氏は
「プロジェクトで特に重視した業務は、『゙レポーティング業務』『伝票承認業務』『京王電鉄の購買関連業務』でした」と語る。 
レポーティング業務に関しては、以前から勘定科目および仕訳管理項目のコード統一、レポートの統一が検討されていた。今回のグループ共用経理システムでは、グループ会社の経理情報共有化を通して、京王電鉄・グループ会社ともに報告書資料作成の手間が効率化 されるだけでなく、よりタイムリーにより比較可能性、的確性の高い情報を入手できるようになる。また、表計算ソフトへのダウンロードも容易となり、必要があれば仕訳まで遡れるため、分析業務の効率化も期待できるところとなった。

伝票承認業務に関しては、京王電鉄ではこれまで紙の原本による 4段階承認を行っていたため、業務工数が膨らみ、最終承認までに時間がかかっていた。今回はATSとOpenText社のスキャニング機能を使うことになった。スキャニングおよびATSの機能により、システムから伝票データと証憑書類を抽出できるため、経理部のシステム決裁を1段階に簡素化し、決裁後に重要な伝票を上長が重点チェックすることで、業務効率化と統制レベルの向上を同時に達成している。 

今後のグループ展開でも、グループ各社の経理業務を受託している京王アカウンティングの経理業務の集中処理にスキャニング機能を活用して、業務効率化を図っていくことを検討している。

京王電鉄の購買関連業務は、毎年発生する多くの発注工事に関する業務だ。ここでは、投資目的と購入価格のチェックが今まで以上にしっかり機能するように、予算策定から発注にいたるまでの業務プロセスを再構築した。

Story

課題解決のソリューション

グループ展開早期から各現場に説明、トップダウンで合意形成

同じく重要視されたプロジェクト管理については、まずグループ各社との合意形成がポイントとなり、慎重にかつ計画的に行われた。
まず、ファーストステップとしての要件定義フェーズでは、業種による特殊な要件が出やすいプロセスを中心に、業務・システムに関 するアンケート・ヒアリングを実施。そして、集まった情報を基にプロジェクトで対応方針を決定し、標準業務プロセス、標準システム を定義した。

次のステップとして、構築に入る前に標準業務プロセス・システムの機能概要の説明会を開催し、グループ会社において経理標準業務プロセスが遂行可能か確認を取りつつ、必要に応じてトップダウンによる方針の徹底を行った。
グループ展開は、2015年4月までに37社をパイロット導入会社および6グループに分けて導入することとし会社規模、インターフェース本数、抱えているシステム上の課題などから導入順序を論理的に決定し、各社とのヒアリングを経て最終的にはトップダウンで通達した。

実際の展開作業では、京王電鉄とパイロット導入2社の結果を基に、標準業務プロセスフロー、設定用ヒアリングシート、 ワークシートなどで構成するグループ展開ツールを作成し、低工数でグループ展開できるよう工夫している。このツールにより、今後は京王メンバーだけで展開作業の大半を遂行できる予定である。
「展開を進めるうえでは、コード統一・レポート統一でグループ内での管理の視点を統一する必要がありました」と語るのは小堺氏だ。 
「視点がずれたままでは、情報共有が形骸化するおそれがあります。そのため視点を合わせることには十分に時間をかけるようにしました。さらに標準業務プロセス・システムにおいては、業種特有の事情として、標準と異なるシステムの使い方や運用ルールを認めるのか、認めないのか、判断に迷うことも多々ありました」。
京王電鉄の総合企画本部 経理部 企画担当課長補佐、細川良久氏 は「グループ会社の意見を取り入れすぎると、標準業務プロセス・システムではなくなってしまいます。しかしある程度は取り入れないと、グループ会社の経理業務が非効率になる恐れがあります。 グループ会社の意見を聞いた上で、京王とアビームのメンバー間で、情報を共有しながら、標準化のバランスを慎重に判断するようにしました」と語る。

■プロジェクトスケジュール

■プロジェクトスケジュール

Story

導入効果と今後の展望

共有した経理情報のさらなる有効活用も視野に

プロジェクト管理・運営では、週次報告会での正確で細やかな 進捗管理の他、メンバーが作業を行う上での方針、成果物レビュー のポイントを確認し、京王側タスクについても、マイルストーンを明確にした。
後藤氏は「そのため、大きな遅延なく進めることができました。 各検討会では、他社事例を挙げながら、京王電鉄メンバーにて検討した結果を考慮したプロセス・業務機能・検討ポイント等を事前に整理していただきました。その上で、プロトタイプを実施していただいたので、プロジェクト開始直後から、具体的な検討ができました」 と評価する。

システムのグループ展開が完了すれば、グループ全体の経理情報が共有化できるようになる。グループ展開と並行して、この経理情報をこれまでよりも有効に活用できるよう業務面の整備も必要だ。 レポーティング機能のさらなる向上も検討されることになる。
京王アカウンティングの取締役社長、金子健司氏は、「システム導入がゴールではありません。グループ経理情報の有効活用のための業務面、システム面の活用や環境変化への柔軟な対応も必要です。ERP機能を他の業務に活用するという選択肢もあるかもしれません」と、今後のシステム活用について期待を語る。

アビームは業務効率化や統制強化、経理情報の利活用を支える基盤の確立など、それぞれのプロジェクト目標を確実に実現していく。とくに今回提供した最大のバリューは業界スタンダードである ATS、そしてサポートの継続であるとアビームでは考えている。ATS が利用されている限り、アビームはパートナーとして安定と進化を継続的に提供し続けていく。

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専門コンサルタント
山田 紀夫
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Norio Yamada
インダストリアル プラットフォームビジネスユニット長

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