ABeam DX Insight 第18回

DXエンジン
~グローバル組織・人材マネジメントとDX、4つの新課題~

2021年9月2日

菅田 一基

戦略ビジネスユニット
執行役員 プリンシパル

 

コロナ禍を迎えるまでの10年間は、日本企業が一気にグローバル化を進めた時期でもあった。この過程でグローバルでの組織・人材マネジメントに関する課題が浮き彫りになってきたが、いまだこれらの課題を克服できているとは言えない。さらにこのような状況に加え、アフター・コロナではDX対応に伴う課題も追加されていき、課題の複雑性が増すと想定される。

従来、日本企業のグローバルでの組織・人材マネジメントは、図1に例示されるように、多くの課題が認識されてきた。特に、現地の経営陣との意思疎通、現地ニーズと本社の品質基準のアンマッチ、コンプライアンス、現地経営状況のブラックボックス化等が課題として認識されてきた。

図1 アビームコンサルティングのグローバル組織・人材マネジメントフレームワークと主要課題

アビームコンサルティングのグローバル組織・人材マネジメントフレームワークと主要課題

これらの課題はいまだ克服できていないものも多いが、ポストコロナ時代においてデジタル化が一気に進んだ影響によって、図2のような新たな課題も加わってくると想定される。今後は、グローバルから付加価値の源泉となるアセットをより多く獲得するための組織・人材マネジメントが求められるようになると想定される。

図2 DXによる新たな4つの課題(例示)

DXによる新たな4つの課題(例示)

人材:「グローバルを見渡したDX人材の見える化と発掘」
これまでも海外拠点での人材育成・獲得に関しては、十分な統制・サポートが提供されていないという課題は認識されてきたが、DX対応の重要性増大を背景にDX人材をグローバルレベルで発掘していく必要性が高まっている。

ナレッジ:「DX知見の共有・展開の拠点整備、グローバルでのシェア」
これまでもグローバルでの知見を収集する必要性は認識されており、長期の視点から研究機能を設けることはあったが、新しいデジタル知見を活用した新規事業創造を推進するために、より事業開発に近い機能の設置、そこからの社内展開が重要性を増している。

ガバナンス:「DX施策スケール化の仕組み構築」
従来から海外拠点を含めたグローバルでの事業アイディアを収集し次の事業展開に役立てる取り組みの重要性は認識されてきたが、グローバルで同時多発的に発生する新しいデジタル活用について、スケール化のサポートなどの仕組みの整備が急務となっている。

ビジョン:「意識改革と合わせてのDXビジョン浸透推進」
企業理念の浸透も従来からの課題であるが、それに加えて、企業のビジネスモデル変革に向けたDXビジョンの必要性や従業員からの興味の高まりを背景に、その共有・浸透が課題としてクローズアップされることになるだろう。

本コラムでは、課題の切り口とその例を示した。先述のように、今後は、グローバルからアセットの獲得・増大へのマネジメントニーズが増すと想定される。
コロナ禍で一旦中断しているグローバル化に伴う課題には、さらにDXの要素が加わることで、その複雑性も増していくだろう。だからこそ、ポストコロナでの再始動に際して、改めて課題を点検することが重要となるのではないだろうか。

ABeam DX Insight

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