1. 共同責任を持つ目標の設定
各担当分野でのDX施策に留まらず、全社のDX戦略に基づいて各施策の優先度や依存関係が整理されており、メンバー全員で共同責任を負う項目が明確化されていることが重要となる。
リーダーシップメンバー個々人での責任範囲を超えて、チームとしての統一された項目を設定できているかどうかがキーポイントだ。共同責任を持つ項目については、個々人では解決できず協力が必要な項目になっており、さらにメンバー各位が共感できるテーマ設定であることが必要となる。
チームビルディングの過程において、メンバーに対する個別インタビューを実施し、「チームとして共同責任を持つDX施策は何か」という質問をすると認識のバラつきが確認でき、現状が把握できる。
2. デジタルスキルマトリクスの設定
CEO(最高経営責任者)、CFO(最高財務責任者)、CHRO(最高人事責任者)などの最高責任者レベルのメンバーについては、従来から経営目標の達成に必要なスキルが適切にミックスされているかを確認することが人選で重要な要素だとされている。デジタルスキルについてもどのように充足するかを設計する必要がある。
CIO(最高情報責任者)やCDO(最高デジタル責任者)が中心となって経営会議メンバーにデジタルスキルを供給することとなるが、その他メンバーも一定の素養を備えることが望ましい。特にCEOやCFOがデジタルを理解することは適切な投資判断を行ううえで極めて重要となる。
この点については、メンバーと必要なデジタルスキルのマトリクスを作成すると現状での充足度を把握することができる。
3. データドリブンな意思決定の実施
データ活用の指揮をとるリーダーシップチームでは、自ら模範を示すという意味においても、データを用いた意思決定プロセスを明確に設計・運用することが重要となるだろう。
いわゆるデータドリブン経営管理の仕組みを導入したとしても運用面での課題に対応することも重要となる。
まずデータ自体を利用可能な状態にする必要がある。この点はIT基盤にも関わる論点となるが、データ活用の前提として整備が必要となる。
加えて、データの分析にも留意する必要がある。データアナリストなどの専門家による分析も重要であると同時に、自社のビジネスを理解しているメンバーによる分析結果の読み解きも重要となる。分析の質については、その高度化の難易度は高いが、期待される分析例や成功事例をナレッジとして共有するなど、求められているレベル感や動き方を具体的に共有することが重要となる。
この点についても個別インタビューなどで「チームにおける意思決定プロセスはデジタル化されているか」「必要なデータ・スキルが獲得できているか」を問うと現状が認識できる。
4. リーダーシップスタイル/カルチャーの確立
迅速な仮説検証を通じたトライ&エラー、それらからの学習が重要となるデジタル分野では、ビジョン・コーチ型のリーダーシップスタイルを確立することが重要となる。
一般にリーダーシップスタイルには、ビジョン・コーチ型のほかに、関係重視・民主型、強制型などが定義されているが、関係重視・民主型のスタイルは、意思決定の遅延や責任の所在の不明確さにつながるリスクがあり、適切とは言えない。また、強制型のスタイルも、現場の創意工夫を阻害する可能性が高く成果につながりにくく、デジタル分野では機能しないと考えられる。
ビジョン・コーチ型スタイルを取ることによって、心理的な安全性を確保しながら現場での創意工夫を促すことが重要となるだろう。
この点については、リーダーシップチームメンバーの部下層にリーダーシップスタイルを評価してもらうことで、現状理解、自社の組織風土の特徴把握が可能となる。
5. 適切なメンバー規模での運営
リーダーシップチームのミッションは意思決定にあるが、メンバーの人数が多いと迅速な判断が阻害されるケースが多くなるため、メンバーを絞り込むことが重要となるケースもある。
一般的には10人を超えてくると意思決定に影響が出てくると考えられ、理想としては一桁の人数での構成が望ましいだろう。
DX戦略のコアとなるデジタルリーダーシップチームの組成は多くの企業にとって重大な課題となっており、その設計は経営トップの仕事である。上記の観点で現在のデジタルリーダーシップチームをチェックし、本格的な改革に着手するタイミングではないだろうか。