バイオ化戦略の展開にあたり、日系総合化学企業の持つ複雑なケミカルチェーンから得られる豊富なデータの活用は、非常に重要な役割を担う。特に、有望なバイオ化技術を有するスタートアップとのパートナーシップ形成は、バイオ化戦略を推進する上で避けられないステップである。このコンテクストでは、バイオベース素材の販売やバイオマス原料の調達など、スタートアップにとって不足している要素を補う企業が競争優位を確立しやすい。医薬品業界においてバイオ医薬品が急速に発展した際には、製造能力に欠けるスタートアップと、そのギャップを埋める製造受託企業との連携が成功の鍵を握った。総合化学産業でも同様に、製造設備への莫大な投資を避けつつ、バイオベース素材を想定通りのコストと品質で生産できるかの検証は、スタートアップにとって必須の要件となる。日系総合化学企業が保有する製造に関する深いノウハウと、多岐に渡る製品製造から蓄積されたデータは、バイオ化の文脈で中心的な役割を果たすスケールアップシミュレーターの構築に活かすことができる。例えば、これらのデータを利用して、日系企業はバイオ化プロセスの中心的なプレイヤーとなり得る。さらに、蓄積された様々なデータを戦略的に活用することで、グローバル競争における差別化を図るための有力な手段となるだろう。
本インサイトで述べた戦略策定には幅広い領域の専門知識を必要とするが、総合化学企業の専門領域とは大きく異なるために評価の過程で抜け落ちる視点が発生してしまうことが多い。アビームコンサルティングでは日系総合コンサルティングファームとして、バイオベース素材の原料を担う農業分野から総合化学企業に至るまで、そしてさらに川下産業に関する広範な専門知識と経験を豊富に持つ。技術的には、合成化学からバイオ技術まで、多岐に渡る分野の知識を社内に蓄積している。また、この幅広い専門性を背景に、理論だけにとどまらない実効性の高い戦略策定を行う体制や、企業内に蓄積された様々なデータの価値を見出し、戦略的に活用するためのノウハウや豊富な経験を有している。これらを活かした日本の総合化学企業が直面する課題に対する戦略と実行支援についてぜひ議論させていただきたい。