① 戦略の問題
経営における多くの取り組みの中で、顧客体験向上の取り組みの位置づけや優先順位が曖昧であるケースが多い。このようなケースでは、一時的に財務プレッシャーが大きくなれば、即効性のある売上向上策やコスト削減策にリソースを集中し、顧客体験向上の取り組みを劣後させるなど場当たり的な対応が散見される。
また、顧客体験向上の取り組みの優先順位が確保されている場合でも、目標やゴールが曖昧で関係するメンバー全員で方向性を共有できないままバラバラに推進しているケースや、顧客理解が不十分な結果、顧客にとって価値のある取り組みに至っていないケースも多い。
② 組織の問題
顧客体験向上の取り組みは多くの場合複数の部門にまたがるが、部門間で業務や情報の連携が取れていないと一貫性を保ちながら顧客体験向上に取り組むことは難しい。
また、部門ごとに予算が管理されている場合には、部門を跨ぐ顧客体験向上の取り組みに対して予算が十分に分配されないケースもある。
③ 仕組み(プロセスやシステム)の問題
顧客体験向上の取り組みに対する投資がどれほどの売上・利益をもたらすかを明確に把握できていないために、予算や人員といったリソースを縮小せざるを得ない企業が多い。
顧客体験の改善状況や効果を判断するための成果を測る指標が不明確なケースや、指標が明確化されていても正しく情報を分析できていないケースなど、効果を測るためのプロセスやシステム基盤の仕組みが十分でないことが原因である。
例えば、顧客のロイヤルティ(信頼や愛着)を計測する指標としてNPS®(ネットプロモータースコア)を導入して満足している企業も多いが、活用の際にはその性質を理解したうえで参考にする必要がある。文化的に、日本の顧客は他人に製品やサービスを推奨することに慎重であり、他人の選択に影響を与えることを避ける傾向もあることから、推奨意向が低めに出やすい。また、日本の顧客は中立的な評価を付ける傾向があるためNPS®が低くなりがちである。そのため、日本において顧客体験向上の成果を測定する場合、NPS®だけに頼ると適切に評価できない恐れがあり、顧客満足度(CSAT)など複数の指標を組み合わせて検討すると良いだろう