AI CoEによるAIトランスフォーメーションの本格推進 第2回 AI活用戦略の策定と実行の要諦 〜変化を前提としたAI戦略の動的運用〜

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2026.10.20
  • AI
  • テクノロジー・トランスフォーメーション
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生成AIの活用領域は、業務プロセスへの組み込みへと広がり、AIトランスフォーメーション(AIX)が本格化しつつある。全社的なAIXの加速、投資最適化、統制を目的として、AI CoE(Center of Excellence:中核組織)を立ち上げる企業も増えている。なお、本稿では生成AIを含むAI全般を「AI」と表記する。

本連載(全4回)では、AI CoEの立ち上げから実行に至るまでのアプローチについて解説する。第2回で取り上げるのは、全社戦略と整合したAI戦略の策定と実行の要諦である。

多くのAI CoE責任者が直面しているのは、「戦略は策定した。しかし、半年後にはAI技術も現場のテーマも変わっていて、戦略が実態と合わなくなる」という問題である。技術や事業環境の変化が加速する中、企業には変化を前提としてAI戦略を設計し、実行状況や環境変化に応じて見直し続けることが求められている。しかし、その見直しを人手だけで継続的に回し続けることは容易ではない。

こうした課題に対し、当社が支援する一部の先行企業では、AIを変革施策の実行手段として活用するだけでなく、AI CoEの運用そのものにも組み込み、情報の収集・構造化や戦略見直しの支援に活用する取り組みが始まっている。

本稿では、AI戦略において変わらない「変革ゴール・KGI」と、見直し続ける「重点アジェンダ・KPI・施策」を分けて設計し、後者をAI CoEがAIとともに回し続ける「AI戦略の動的運用」の考え方を整理する。また、その実現に向けてAI CoE自身にAIを組み込むアプローチについても考察する。

執筆者情報

  • 宮本 潤

    Director
  • 清水 伸晋

    清水 伸晋

    Senior Manager
  • 宇野 めぐみ

    宇野 めぐみ

    Manager

AI推進の停滞を越える:「不変」と「可変」を分けて戦略を設計する

AI戦略では、変化への対応と、一貫した意思決定を両立させる必要がある。変革ゴール自体を頻繁に変えてしまうと、投資や施策を判断する軸が定まらない。一方、施策まで固定すれば、AI技術や事業環境、現場ニーズの変化を取り込めなくなる。こうした状況において、戦略を「一度決めたら変えない計画」として運用することには限界がある。

実施すべきは、戦略を2つの領域に分けて設計することである。変革ゴールとKGIは「不変の領域」として据え、重点アジェンダ・KPI・施策は実行状況や環境変化に応じて見直す「可変の領域」として扱う(図1)。

図1 不変の領域と可変の領域

つまり、AI戦略は「AIの導入計画」や「ユースケース一覧」ではない。「どのような姿を目指すのか」を不変の領域として定めたうえで、「どこに経営資源を集中するのか」「どのような施策で実現するのか」「何を継続し、何を見直すのか」を可変の領域として判断し続けられるよう設計されたものである。

本稿では、まず不変の領域の定め方、次に可変の領域の設計について取り上げ、可変の領域を継続的に見直し、回し続けるための運用の仕組みを示す。この運用こそが、第1回で述べたAI CoEの「戦略機能」の中核であり、一部の先行企業では、AI CoE自身の運用にAIを組み込むことで実現し始めている。

不変の領域を定める:変革ゴール・KGIと重点アジェンダ

本章では、可変の領域を見直す際の判断軸となる不変の領域、すなわち変革ゴール・KGIの定め方と、その実現に向けて全社の資源を集中させる重点アジェンダの特定について述べる。なお、重点アジェンダは可変の領域に属するが、その追加・変更は変革ゴール・KGIに照らして判断されるため、本章で併せて扱う。

変革ゴールとKGI:「利用」ではなく「変革後の姿」を示す

アビームコンサルティングが2025年11月に国内大手企業53社のAI推進責任者を対象に実施した「生成AI利活用に関する成功要因調査」(以下、調査)では、93%の企業が生成AI活用を経営アジェンダに掲げており、47%の企業が活用ビジョンを策定済みという結果だった。

図2 生成AI活用のビジョンおよびロードマップの策定状況

ただし、ビジョンの中身には明確な差が見られる。生成AI活用の効果が期待を下回る企業では、「全社員が生成AIを利用する」といった利用そのものを目標に掲げる例が見られる。一方、効果が期待を上回る企業では、「業務構造を再設計し、どのような成果を出すか」「AIを前提として事業や業務をどう再構築するか」といった、変革後の姿を示す目標が掲げられている(図3)。

図3 効果別に見た生成AI活用ビジョンの中身の差(新規作図の骨子)

上記を踏まえ、掲げるべき変革ゴール・KGIの特徴は、次の2点に整理できる。

  • AIの導入や利用そのものではなく、変革後の事業・業務・組織の姿を示す
  • 既存業務の改善にとどまらず、AIを前提とした非連続な変革目標を掲げる

AIの台頭により、経営層は株主、顧客、従業員、市場などさまざまなステークホルダーからこれまで以上の期待を受けており、AIを前提として経営のあり方をどのように変えるかを具体的に示すことが求められている。例えば、全社の人・モノ・金の状況を継続的に把握し、従来は四半期ごとだった資源配分の判断を、月次・週次・日次、必要に応じてリアルタイムで行う「Dynamic Resource Allocation(動的リソース割り当て)」はその一例である。この場合のKGIは、「既存領域から重点成長領域へ再配分した経営資源の割合」や「重点成長領域の売上・利益構成比」など、事業ポートフォリオの構造変化を捉える指標となる。本稿では以降、この例を用いて説明を進める。

重点アジェンダの特定:トップの期待と現場テーマの乖離を埋める

経営が掲げる非連続な変革ゴールに対し、現場から挙がる要望は、既存業務の延長線上にある改善テーマへ集中しやすい。個別改善テーマを積み上げるだけでは、経営が掲げる資源配分や事業構造変革といった変革ゴール・KGIにはつながりにくい。ここでAI CoEに求められるのは、経営目標と現場テーマの双方を踏まえ、全社として重点的に取り組むべきアジェンダを特定することである。例えば、変革ゴールとして掲げた「Dynamic Resource Allocation」の実現に向け、案件情報の収集・分析から投資審査、意思決定、実行後のモニタリングまでを部門横断で見直す「投資意思決定プロセスの高度化」は、重点アジェンダの一例である。

当社の支援事例では、各部門のAI活用テーマを把握するための共通の登録の仕組みを設け、対象業務範囲、期待効果と根拠、必要データ、想定リスク、貢献するKGIを整理している。これにより、トップダウンの視点と、各部門のニーズやテーマの実行状況を集約するボトムアップの視点の双方から、傾向や変化を把握することができる。そのうえで、これらを変革ゴール・KGIに照らし、重点アジェンダの追加・変更や優先順位の見直しを行う(図4)。

図4 経営目標と現場テーマを接続する重点アジェンダ特定の仕組み

投資規模が小さく、部門予算で対応できるテーマや類似事例が存在するテーマは、既存業務の改善として部門主体で進める。一方、KGIの達成を左右する部門横断のテーマや大規模投資を伴うテーマ、新規性が高くリスク管理上の影響が大きいテーマについては、AI CoEが参画し、全社のリソースを重点的に配分する。

こうして整理したテーマを、変革ゴールとの整合性、経営インパクト、実現可能性、横展開可能性、リスクなどの共通軸で評価し、重点投資するもの、部門主体で進めるもの、検証を継続するものを「対象AIポートフォリオ」として整理する。このポートフォリオは後述する動的運用の主要な対象となる。

<AI CoEに求められる役割①> 

経営目標と現場テーマを接続し、重点的に変革すべき領域を特定する

  • 全社のAI活用テーマを可視化し、変革ゴール・KGIに対する位置づけを判断してリソース配分を定める
  • 共通の評価軸で優先順位を定め、対象AIポートフォリオを形成する
  • 変革ゴール・KGIは動かさず、重点アジェンダの入れ替え判断の「軸」として維持する

可変の領域を設計する:KPI・施策・ロードマップ

本章では、重点アジェンダを実行に移すための可変の領域、すなわちKPI・施策・ロードマップの設計を扱う。目的や判断基準が曖昧な指標、単一業務に閉じた施策、日程表にとどまるロードマップでは、動的運用は成立しない。ここでの設計の良否が、「見直し続ける運用」が機能するかどうかを左右する。

KPI:「測定指標」ではなく「組織活動」に資する指標を定める

重点アジェンダを定めた後は、経営が掲げるKGIを、現場の実行状況を捉えられるKPIへ落とし込む。Dynamic Resource Allocationを例にすると、経営資源の状況を把握できる範囲や更新頻度、環境変化の検知から資源配分の判断までのリードタイム、決定した再配分の実行率などがKPIとなる。

重要なのは、KPIを単に成果を報告するための「測定指標」にしないことである。KPIの変化を、施策を継続するのか、見直すのか、成果が確認できた取り組みを他業務へ展開するのか、といった次の判断につなげる「組織活動」の起点として位置づけることが重要である(図5)。期待した効果につながっていない場合は、AIの精度向上を続けるだけではなく、対象業務や業務プロセス、人とAIの役割分担そのものを見直す。一方、一定の効果が確認できた場合には、類似業務への横展開や既存アセットの再利用を検討する。

図5 実行を捉え、次の判断につなげるKPIの運用

したがってKPIの設計時点で、「どの水準になったら何を見直すか」という判断ルールまで定めておく必要がある。この判断ルールが、後続のAIにKPIの変化を検知させる際の前提条件となる。

施策:AI導入に閉じず、業務・組織の再設計へ広げる

施策は、AI導入だけでなく、業務・組織・制度を含めて一体的に設計する必要がある。調査では、期待を上回る成果を上げた企業7社のうち、代表的なユースケースが「会社横断レベル」は3社、「一連の業務プロセスレベル」は3社、「単一業務レベル」は1社であった。一方、期待を下回る6社はいずれも「単一業務レベル」であった(図6)。

図6 成果別に見た代表的ユースケースの業務レベル

サンプル数は限られるものの、前後工程を含む一連の業務プロセス全体を対象とすることで、不要な業務の廃止・統合やプロセス再設計、人とAIの役割分担、組織・要員配置の見直しまで検討範囲を広げられることが示唆される。

例えば、現場から寄せられる市場調査や投資説明資料作成の効率化といった相談を、個別業務の改善にとどめない。AI CoEは、案件担当者による調査・資料作成から、マネジメント層による審査・レビュー、経営層による投資ポートフォリオの把握まで、対象を一連の投資意思決定プロセスへ広げる。さらに、案件間の関連性や中長期的な事業インパクトを横断的に可視化することで、各案件の重要性を比較し、優先順位付けを高度化する。これに基づき、投資や人員を優先度の高い領域へ機動的に振り向けることで、変革ゴールである「Dynamic Resource Allocation」の実現につなげる(図7)。

図7 単一業務の相談から業務プロセス単位の変革テーマへの引き上げの例

実際に、当初は「主要業務の工数を数十%削減する」というKGIを掲げ、AIによる自動化を検討していた企業が、AIツール導入だけでは目標達成が難しいと判断し、業務そのものの取りやめやプロセス再設計、要員配置の見直しまで打ち手を拡大したケースも見られる。非連続なKGIを実現するためには、AIを既存業務に追加するのではなく、業務の取りやめ、プロセス再設計、人とAIの役割分担、組織・要員配置、評価制度まで含めて一体的に検討する必要がある。

ロードマップ:施策の依存関係と意思決定時点を織り込む

変革ゴール、重点アジェンダ、施策を定めた後は、中期・短期のロードマップへ落とし込む。これまで述べてきた通り、ロードマップにおいても開発工程を並べるだけでは不十分である。例えば、「業務」「組織・人材」「AI・データ」「ガバナンス」の4つの観点を並行して設計する(図8)。

図8 4つの観点を並行して設計するAIXロードマップ構成の例

業務、組織・人材の視点はもちろん重要だが、ここでは特にデータにも着目したい。AI技術の進化や対象施策の拡大に柔軟に対応するには、施策ごとにデータを個別整備するのではなく、複数の施策で共通利用できる本番データ基盤が必要となる。さらに、新たな業務知識やデータ、判断・実行結果を既存の情報との関係性を含めて取り込み、AIが参照するコンテキストを継続的に拡充・更新できる仕組みも見据える必要がある。

また、ロードマップは、単なるスケジュールではなく、変革ゴールに至るまでの施策の依存関係と意思決定時点を整理するものである。図8の「意思決定時点」は、投資や移行の判断だけでなく、KPIの実績や技術動向を踏まえて施策の継続・見直しを判断する時点でもある。この時点をあらかじめ設計に埋め込んでおくことが、次章で述べる動的運用を「場当たり的な変更」ではなく「計画された見直し」として機能させる条件となる。

<AI CoEに求められる役割②> 

可変の領域を「見直せる形」で設計する

  • KPIを測定指標ではなく組織活動の起点として定め、判断ルールまで設計する
  • AI導入だけでなく、標準化や要員配置などの組織変革を関係部門と一体で検討する

可変の領域を回し続ける:AI CoE自身にAIを組み込んだ動的運用

ここまで、AI戦略における不変の領域を定め、可変の領域を見直しながら設計する考え方を示してきた。では、その見直しを実際にどう回し続けるのか。本章では、当社が支援する一部の先行企業で始まっている、AI CoEの運用そのものにAIを組み込んだ動的運用の取り組みを紹介する。

なぜ人手による戦略の見直しは追いつかないのか

AI CoEが戦略を継続的に見直すためには、多岐にわたる情報を把握する必要がある。事業部門からのAI活用相談、PoC結果、KPIの実績、導入効果、データ整備状況、既存アセット、AI技術動向、法規制・リスク情報などである。

これらの情報は部門やシステム、外部ソースに分散しており、AI CoEの限られた人員が定期的に収集・整理し、戦略や対象AIポートフォリオとの差分を読み取ることには限界がある。そのため、多くの企業では戦略の見直しが年次や半期の計画サイクルにとどまり、その間にも前提条件が変化することで戦略と実態のずれが広がっていく。技術や事業環境の変化速度が計画サイクルを上回る現在、対象AIポートフォリオの優先順位や施策の継続・見直しを適時に判断できないことが、AIX推進の停滞につながる。

AIが担う4つの機能:収集・構造化、変化の検知、変更案作成、影響分析

先行企業では、上記の情報をAIが継続的に収集・整理する仕組みを構築している。AIが担うのは、次の4つの機能である(図9)。

図9 AIが担う4つの機能

さらに、人とAIの協働を前提にAI CoEの体制を設計し、戦略を継続的に見直す運用モデルを構築する(図10)。

図10 AIを組み込んだAI CoEの組織・運用モデル

重要なのは、AIが参照する情報と判断ルールが、設計した不変の領域と可変の領域に対応していることである。変革ゴール・KGIが明確でなければ、AIは従うべき大方針を見失う。KPIに判断ルールがなければ、閾値からの逸脱を検知できず、ロードマップに意思決定のタイミングが定められていなければ、変更案を提示すべき時点を判断できない。つまり、動的運用は、先述した設計の上に成り立つ。AIを戦略運用に活用できる組織とは、不変の領域と可変の領域が明確に設計され、判断に迷いが生じにくい組織であるといえる。

人が担う判断と、変更履歴・判断根拠の蓄積

一方、人間の役割は意思決定である。AI CoE、事業責任者、IT、人事、リスク管理部門などが変更案をレビューし、承認した内容のみを戦略やKPI、ロードマップへ反映する。AIが作成するのは変更案であり、最終的な決定ではない。この考え方は、第1回で述べた通り、AIの自律度が高まるほど統制の重要性も強まるという構図と同じであり、AI CoEの運用においても例外ではない。

あわせて、変更履歴と判断根拠を蓄積し、次の意思決定に活用する。「どの情報を根拠に、どの変更案を、なぜ採用(あるいは却下)したか」を残すことで、判断の一貫性が保たれ、後任者や関係部門への説明可能性も高まる。これは第1回で述べた「組織的学習機能」を戦略運用の領域に適用したものと言える。個別案件の成功・失敗をアセット化して再利用するのと同様に、戦略の見直しそのものを学習対象とし、判断の再現性を高めていく。

なお、こうした取り組みはまだ初期段階にあり、AIが提示する変更案の精度や、人がどこまでAIの整理結果を信頼して判断できるかについては、運用を重ねながら検証する必要がある。一方で、情報の収集・構造化や変化の検知については、人手による年次・半期の見直しに比べ、AIによる把握の網羅性と頻度が明確に向上しており、今後の技術発展が期待される。

導入の段階:小さく始め、判断の対象を広げる

AI CoEの運用にAIを組み込む際は、最初から変更案の作成まで一気に実装する必要はない。先行事例からは、次のような段階を踏むことが現実的と考えられる。

  1. 第1段階:情報の収集・構造化の自動化。分散する相談・PoC結果・KPI実績を対象AIポートフォリオの共通項目に沿って集約する。まずAI CoEが全社の実態を継続的に把握できている状態を作る。
  2. 第2段階:変化の検知。KPIの判断ルールや技術動向、規制情報に照らして、見直しが必要なテーマや指標をAIが抽出し、AI CoEの定例会議における議題として提示する。
  3. 第3段階:変更案の作成と影響分析。抽出結果を対象AIポートフォリオやロードマップの変更案として整理し、関係部門の判断に供する。あわせて、人による判断と変更履歴の蓄積を組み込む。

いずれの段階でも、前提となるのは先述した設計である。その設計が明確であれば、第1段階の実装だけでも、分散していた相談・PoC結果・KPI実績を継続的に把握できるようになる。これにより、戦略と実態のずれや優先順位の変化を早期に捉え、より迅速な意思決定につなげることができる。

<AI CoEに求められる役割③>

AIを組み込み、可変の領域を回し続ける

  • 現場情報、KPI、PoC結果、技術・外部環境を継続的に収集・構造化する仕組みをAIで構築する
  • KPIの判断ルールと意思決定時点に照らして変化を検知し、優先順位・KPI・施策の変更案をAIに作成させる
  • AI CoEおよび関係責任者が変更案を判断・承認し、承認した内容のみを戦略へ反映する
  • 変更履歴と判断根拠を蓄積し、次の意思決定へ再利用する(組織的学習機能の戦略運用への適用)

AIX推進を成功に導く戦略運用の要諦

本稿では、AI戦略を「不変の領域」と「可変の領域」に分けて設計し、可変の領域をAI CoEがAIとともに回し続ける「動的運用」の考え方を整理した。

AI CoEに求められるのは、AI活用テーマを個別に管理することでも、一度策定した戦略を維持することでもない。経営目標と現場の課題を接続して全社として注力する領域を定め、KPI・施策・ロードマップを変化に応じて見直せる形で設計・運用することである。

AIの進化や事業環境の変化が続く中、こうした見直しを通じて、戦略そのものを継続的に更新する運営能力が重要になりつつある。AI CoEによる動的運用は、その能力を組織に備え、AIXを全社変革として継続的に推進するための一つのアプローチといえる。

自社のAI戦略の現状を確認するうえで、まずは次の3つの問いを立ててみてほしい。

  1. 自社の変革ゴール・KGIは、AIの「利用」ではなく「変革後の姿」を示しているか。
  2. KPIの変化が、施策の見直しや横展開の判断に実際につながった実績があるか。
  3. 戦略の見直しの頻度と情報の網羅性は、AI技術と事業環境の変化速度に追いついているか。

特に、3つ目の問いに「追いついていない」と答える企業は大半ではないだろうか。その解決策の一つとして、AI CoEの運用そのものにAIを組み込む選択肢が現実味を帯びている。

アビームコンサルティングは、金融・製造・情報通信・公共など幅広い業界に対し、AI戦略の策定から、AI活用テーマのポートフォリオ設計、KPIツリー構築、実装・横展開に向けた推進設計、さらにAI CoEの運用モデル構築までを支援してきた。経営インパクトと現場実装の両面を踏まえた、実行可能で成果につながるAI戦略の策定と運用を推進している。

次回、第3回では、AI CoE組織で具備すべきアライアンス機能について解説する。AI技術やAIを活用したビジネスが日々生まれる中で、自社に不足している機能や新たに獲得すべき機能をいかに見極めるか。必要な機能を迅速に取り込み、実装につなげるための連携設計、内製との分担、ナレッジ移転、統制の要諦について取り上げる。

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