昨今は不確実性の高いVUCAの時代などとよく言われていますが、安定した事業基盤を持つインフラ系企業においても、異業種企業の参入による競争環境変化や人手に頼った事業の継続性リスクの高まりなどを受けて新規事業開発の重要性が増しています。一方で、新事業開発の取り組みにおいて、大企業にみられるような課題が色濃く出やすいインフラ系企業の性質が、事業案検討・実行の場面においてネガティブな影響を及ぼしている事例が散見されます。
インフラ系企業における新規事業開発において、我々が実際のご支援の場で体験した特徴的な3つの課題をご紹介します。
① 顧客目線の欠如
社会インフラとしての機能を担う企業では、電気・ガスやローンなどそもそも顧客目線での差別化が困難な商品・サービスを担ってきたことなどが主因となり、事業案検討において新たな技術動向や目新しいバズワードにのみ着目し、顧客視点が抜け落ちていくことがあります。これはスキルの問題ではなく、上述の顧客目線での差別化が困難な事業性質により、長い年数をかけて染み付いた組織文化であるため、一朝一夕で変えようとすることは非常に困難です。
例えば、データビジネス検討がテーマとして設定され、ターゲット顧客層やその課題などの顧客ニーズを捉えるという発想自体を持たず、自社保有データを活用することで実現できるサービスの検討に終始するなどの事例もあります。
② 起動力の不足
安定した事業基盤を維持することに重きが置かれ、新規事業への人材配置に消極的な場合や、新規事業よりも既存事業のルーティーンを止めることなく着実に遂行することが、評価される傾向にあります。そのため、会社として新規事業に注力する方向を打ち出しても、実際には往々にして進まないということがあります。
例えば、会社の方針として新たな事業検討を行うことが決まった際に、担当者のほとんどが既存事業との兼任で新規事業に時間を割けず、また取り組んできた経験もないため、起動的な推進が困難になり、取り組みそのものが空中分解してしまうということがあります。
③ 既存事業に起因する制約
実績もあり安定した収益の積みあがる既存事業と売上規模が小さく不確実性の高い新規事業では、どうしても前者の優先度が高く置かれることが多くなります。そのため、伝統的な既存商品・サービスに軽微でも影響が及ぶことが絶対に回避すべき許容不可能なリスクと捉えられ、新事業検討やその実行判断に大きな制約が発生することもあります。
例えば、既存事業の顧客やパートナーと一部競合するような事業への進出の際に、担当役員からの理解が得られず、事業コンセプトが骨抜きにされ全く別のものになってしまうことや、検討そのものがストップしてしまうということがあります。