① 社内の理解を得る/広げる
越境経験という、既存の垣根を超えた新しい取り組みに対する関係者の心理的ハードルが高い組織では、「社内の理解を得る/広げる」ことから着手する必要があります。その際、キーパーソンに、越境経験の重要性を訴え、認識してもらうことが要諦となります。例えば、越境経験を人事施策の一環として実施した一部の企業では、新規事業立ち上げなどといった結果を着実に出しています。越境経験の必要性については、以前のコラム「イノベーターを育成するために「越境経験」が有効である理由」でご紹介していますので、ぜひご覧ください。
② 越境プログラムを設計する
社内理解を得られた後には、具体的なプログラム設計の段階へと移ります。では、実際にプログラム内容を検討し、設計する場面で、企業の担当者はスムーズに着手し、実行できるのでしょうか。
やはり、実績や経験の少ない担当者ほど、「どのような内容をどのような手法でプログラムに織り交ぜるべきなのか」と悩み、計画が暗礁に乗り上げてしまう傾向にあります。一方で、越境経験に関して知見があり、慣れている担当者でも、表面的な手法や形式に主眼を置いてしまい、本来参加者に体験してほしかった観点で越境経験を積ませられていない、というケースも存在します。
そのため、初めてプログラムを設計する場合でも、一定の実績がある場合でも、「どの要素の越境をねらいに置いたプログラムなのか」という「目的」を具体化することが不可欠です。
そこで、前述した「世代」「部署」「国」「企業」の4つ要素の何に主眼を置くかを見定める必要があります。例えば、「世代」を超えた経験を積ませることで、若手社員の視座の引き上げや、責任者層の意識の活性化につなげることが期待できます。また、「部署」や「企業」を超えることで、所属組織の枠組みを超えたネットワークの形成、それによる新たな刺激をもたらすことが期待できるのではないでしょうか。
企業の置かれている状況から、どんなイノベーターが求められているかを描き、そしてその理想像からバックキャストした上でプログラムの目的を明確にすることができます。目的の明確化はプログラムの根幹となる重要なステップですので省略せず、社内の関係者全員で共有しながら進めることが重要です。
③ プログラムを改善する
目的を実現するプログラムを設計し、実際にプログラムを実施した後にやるべきことは「プログラムの改善」です。様々な関係者が関わる越境プログラムを実行まで進めたことは、大きな前進だといえますが、ここで終わってしまっては、単なる社内イベント止まりになってしまいます。イノベーターの輩出やイノベーションに向けたマインドの醸成には、単発でのプログラム実施だけではなく、継続的な取り組みと改善が必ず必要になります。
「越境プログラムを実施すること」をゴールとせず、継続的な実施によるイノベーターの育成を目標に、プログラムを振り返ってみてください。そうすると、参加者の記憶や熱が色あせないうちに適切なフィードバックを集めたり、運営サイドの効率化観点でも反省点を洗い出したりしておく必要があることに気づかれるのではないでしょうか。
越境プログラムには、唯一絶対的な正解のあるフォーマットはありません。各社毎に実情や目的に即したプログラム提供を目指してアップデートを繰り返し、独自のプログラムへと進化していくものです。その第一歩として、プログラムを運営する担当者は実施後の振り返りと改善点の反映までを含めて越境プログラムの運営と認識し、実行する必要があると言えます。
④ 越境プログラムを仕組み化する
社内理解を得たうえで、プログラムを設計・実行し、反省点を洗い出し、次のプログラムへ反映する。これらのステップが越境プログラムの実施サイクルではありますが、このサイクルが安定的に、継続的に実行されていた方がプログラムの精度向上につながりやすいことは想像に難くないでしょう。
どんなに良いプログラムでも、不定期にしか開催されなかったり、実施の間隔が開きすぎていたりしては、イノベーターの輩出につながるまで長い年月を要することになってしまいます。
「③プログラムを改善する」で前述した通り、越境プログラムを1回だけ行ったからと言ってイノベーションの発現に必ずしも直結するとは限りません。場合によっては、「プログラムの効果がなかった」と短期的な目線で判断され、打ち切られてしまうこともあり得ます。
このような、越境プログラムの効果の発現を妨げたり、実施サイクルを断ち切られたりしてしまわないよう、継続的な実施を仕組み化することが1つの解決策として挙げられます。
ここでいう仕組み化とは、通常業務の中に越境プログラムの内容検討や改善のための議論の実施に必要な人員や時間を組み込み、確保することを指しています。
例えば、中小企業向けにITソリューションなどを提供するスターティア株式会社は、※4経常利益の1%を人材育成プログラムに投資することを定めています。彼らは、国内マーケットは縮小傾向にあるという課題感のもと、企業存続には海外進出が必須であると考え、選出した社員に国内・海外拠点視察の機会を与えています。 同社社長は「自社の魅力を実感できるようなプログラムを継続的に掲げ、費用をかけて真剣に取り組む」としています。