アビームコンサルティングは、ITと業務の実態を踏まえ、分離・統合の実行可能性や追加投資、移行期間を検証し、その影響を事業計画や取引条件、Day1準備へつなぐ知見を有する。
こうした知見を活かし、当社では、ビジネスDDおよびカーブアウトDDを対象に、AI活用を前提としたDDプロセスの高度化に取り組んでいる。ただし、目指しているのは、既存のDDプロセスにAIツールを追加し、個々の作業を速めることだけではない。AI活用を前提に、人とAIの役割を組み替えることで、DDに投入する時間の使い方そのものを変えることである。重視するのは、個々のAI機能の高度化だけではなく、AIで生まれた時間を検証へ再投資し、その検証結果を取引判断と実行までつなぐプロセス全体の設計である。
具体的には、次の三点である。
第一に、情報の収集、読解、整理、照合、初稿作成など、反復性が高く大量の情報処理をともなう工程をAIで支援する。
第二に、そこで生まれた時間を、重要な問いの設定、複数仮説の比較、追加検証、対象会社との議論、M&A後の価値創出仮説の検討へ振り向ける。AIが情報整理や初稿作成などを担うことで、人には、何を検証するかを定め、その結果を評価し、追加検証や経営判断につなげる役割が求められる。AIによる効率化を単なる工数削減にとどめず、同じDD期間の中で検証の確度を高めることにも活用する考え方である。
第三に、AIが生成した情報と、人が行う検証・判断を切り離さない。AIの出力は、根拠資料や参照箇所を確認できる形とし、担当者が原典と照合して事実関係を確認することを前提とする。新たな情報によって仮説や前提が変わった場合は、その変更を次の検証へ反映し、検証サイクルを継続的に回す。
ビジネスDDでは、公開情報の収集・整理、出典付き要約、市場規模・競争環境分析、仮説のたたき台、追加調査に向けた問い、報告書ドラフトなどをAI活用の対象として検討している。その狙いは、調査資料の作成を速めることにとどまらず、対象事業の実績や事業計画との照合を早期に開始し、仮説の修正と追加検証を繰り返す時間を確保することにある。
カーブアウトDDでは、仮想データルーム(VDR)で共有される資料の読解、質問案の作成、インタビュー準備、議事メモ、報告書ドラフトなどを対象としている。大量の内部資料を読む時間を圧縮し、システム、人員、契約、拠点、データなどの依存関係やTSA、スタンドアロンコスト、Day1へ波及する事項の検証を早期に開始することを目指す。
特に当社が持つシステム導入や業務プロセス改善の知見をもとに、TSAやコスト・投資の影響度を体系的に整理し、AIを用いた複数のシナリオをプロジェクト序盤に示しながら、議論を深めるアプローチをとることができる。単に調査・分析の時間を短縮しプロジェクト工数を抑制するだけでなく、戦略的な意味合いや実行のボトルネック解消に時間を振り向けることで、DDの質的な転換を図る。
想定する役割分担は、AIが情報処理を支援し、各専門チームが問いを設定して検証を行い、クライアントがその結果を踏まえて判断するというものである。そのうえで、AI活用型DDをDDの中だけで完結させず、その検証結果を取引判断と実行へつなぐには、DDからエグゼキューションまでを担う体制づくりがキーになる。
この体制の具体像は、後編で整理する。