① 対象の設定
すべてのサプライヤーを見ることは現実的ではないため、止まったらどれだけ困るか(事業影響)、問題視されるか(外部リスク)、代えられるか(依存・制約)という3つの観点で対象を絞り込む。判断に迷う際の切り口として、北村は「その事業が止まったとき、ステークホルダーに対して業績影響を説明する必要があるか が1つの目安になります」と補足した。
② 情報の取得
現場からよく聞かれるのが、「サプライヤーから提出される情報が、本当に正しいのか自信が持てない」という声だという。経営に判断を仰ぐ以上、その情報が信頼できるものであることを、きちんと説明できなければならない。
「情報が意思決定に使えるかどうかは、信頼性と比較可能性で決まります」(北村)
信頼性を担保するにはエビデンス(証跡)による裏付けと、検証プロセスの整備が欠かせない。また、複数のサプライヤーから集めた情報を横並びで判断するには、比較可能な粒度に揃えることも重要になる。
具体的には、自社でSAQを送付・回答・とりまとめを行う方法と、外部の評価ツールを活用する方法の2つがあるが、いずれの方法にも一長一短がある。自社でSAQを実施する場合は自社のリソースがかかるうえ品質がばらつきやすく、外部ツールを使う場合はコストが発生する。
「リソースとコストのトレードオフをどう社内で判断するかも、重要な意思決定のひとつです」(北村)
③ 判断
対象範囲の設定で使った視点をさらに一段掘り下げ、事業影響(起きた場合の影響は許容できる水準か)、発生可能性(現実的に無視できる水準か)、制御可能性(実行可能な打ち手で低減できるか)という観点でリスクを判断していく。
④ 対応設計
リスク度合いに応じた基本対応(リスク高=低減・是正・回避、中=モニタリング、低=受容等)を土台としつつ、それだけでは足りない2つのケースに備える必要があるという。1つは、リスクが高いサプライヤーが自社のサプライチェーン上で重要な事業を支えており、速やかに取引を止めることが難しい場合の例外対応だ。是正計画の策定やモニタリングの強化、条件付き継続といった個社ごとの精緻な対応に加え、恒久的には代替の可能性も含めて検討する必要がある。もう1つは、想定外は起こりうるという前提に立った想定外対応である。想定していない事案が発生した際に速やかに動けるよう、エスカレーションルールや、再評価のための追加情報の取得ルールをあらかじめ定めておくことの重要性を強調した。
北村は締めくくりとして、ここまで述べてきた意思決定の設計はあくまで自社単独の取り組みである点に注意を促した。サプライヤーは、内容や回答形式が異なる同様の調査に10社、20社と別々に対応する負担を強いられ、社会全体で見れば非効率な運用になってしまっている。同じ業界であれば同じサプライヤーと取引していることも多く、業界レベルでSAQやツール、ルールを共通化・標準化することで、サプライヤーの負担軽減とエンゲージメント向上の両立が可能になるという。すでにこうした取り組みに着手している業界もあり、他の業界にも横展開できる余地があると述べた。
「サプライチェーンリスクは、個社で判断し、全体で最適化する領域になってきています」(北村)