GCC活用は、本社とインド拠点の二者だけで完結する取り組みではない。
実際にGCCを拡大し、成果を上げている企業は、本社とインドGCCの二者間のみで業務の移管・集約を計画するのではなく、欧米やアジアなど各地域の拠点や地域本部を含めた多拠点での連携を前提に運営している。
このような体制において重要なのは、特定の拠点のやり方に一方的に合わせるのではなく、各地域の業務特性や規制、顧客要件を踏まえて集約を進める点である。本社側の品質基準や管理手法をそのまま適用するのでも、インド側の効率性のみを追求するのでもなく、グローバル各拠点の実態に即した形で業務プロセスを設計していく必要がある。
その結果として、各地域の業務の特色を維持しながらも、共通化できる部分を標準化していくことで、効率性とのバランスを取ったオペレーションが構築されていく。言い換えれば、GCCは単なる集約拠点ではなく、グローバル全体の業務運営を最適化するための「調整装置」としての役割を担うことになる。
このようにして形成されるGCCの姿は、金融機関ごとに異なる。どの業務をどこまで標準化するか、どの地域の特性をどの程度残すかといった意思決定の積み重ねによって、それぞれの金融機関固有のGCCモデルが形作られていく。
一方で、最初から大規模な変革を目指す必要はない。むしろ、業務内容が比較的標準化されており、効果を測定しやすい領域から着手することが現実的である。金融機関においては、事務業務やシステム保守運用、データ整備といった領域を起点に、段階的に活用範囲を広げていくアプローチが有効だ。その過程で、RPAやAI-OCRによる効率化、データ分析支援、AI活用などを組み合わせながら、業務改善から業務改革へと発展させていくことができる。重要なのは、業務移管そのものを目的化するのではなく、実績と信頼を積み重ねながら、GCCを新たな価値創出を担うパートナーへと進化させていくことである。
特にAI時代において、GCCの価値はさらに高まっていく。AIを理解し、業務に実装できる人材は世界中で争奪戦になっている。自社内だけで必要な人材を確保し、育成し、変革を進めるには時間がかかる。だからこそ、インドの高度IT人材やAI人材とつながるGCCは、金融機関にとって「外にある開発拠点」ではなく、「自社の変革力を拡張する仕組み」として捉えるべきである。
インドGCCの新たな活路は、コスト削減の延長線上ではなく、本社・地域拠点・インドGCCが一体となって価値を生み出す「共創拠点」としての可能性にある。その可能性をどう引き出すかが、今後の金融機関に問われている。