はじめに
日本企業による欧州展開は加速しており、製造、物流、販売、管理などさまざまな領域で日系企業の欧州拠点プロジェクトが日常的に立ち上がっている。システム導入、業務改革(BPR)、ガバナンス再設計、M&A後の統合支援など、プロジェクトのテーマも年々多様化・高度化している。とりわけ近年は、地政学リスクの高まりやサプライチェーン再編、ESG・規制対応といった外部環境の変化が重なり、海外拠点経営の複雑性が一段と増している。こうした状況下において、分野や業種を問わず多くのプロジェクトで「共通のつまずき方」が 繰り返し発生している。この「つまずき」は、ITの難易度やスキル不足といった表層的な問題にとどまらず、日本本社と欧州現地の間に横たわる構造的な断層に起因するケースが多い。意思決定プロセスや現場裁量の範囲、ガバナンスの捉え方など、組織構造や価値観の違いが根本的な障壁となっている。
本稿では、この「見えない断層」を構造的に整理し、その代表例としてERP導入を取り上げる。プロジェクト推進において顕在化する課題の本質と、現場起点での解決アプローチについて論じる。