本プロジェクトの重要な成功要因は、BPRで描いた「調達業務改革の設計図」を、構想段階にとどめることなく、実行基盤にまで早期にかつ確実に落とし込んだ点にある。INPEXでは、調達業務の現状分析を通じて課題を可視化し、あるべき姿(To‑Be)を明確にした上で、その内容を具現化する基盤としてCoupaを選定した。選定にあたっては、ユーザビリティの高さに加え、INPEXが掲げる資材調達の根幹となる思想とCoupa製品仕様との適合性、さらにAI活用をはじめとする将来的な拡張性が評価された。
加えて、ERP刷新に先行してCoupaを稼働させるという判断により、BPRの熱量が高い状態のまま新たな業務プロセスとシステムを立ち上げ、改革を一過性の取り組みに終わらせることなく、実運用として定着させた。
この先行導入により、調達業務プロセス全体の標準化・デジタル化を早期に実現し、全社横断でのガバナンス強化とバイヤーの業務負荷低減を進めるとともに、Coupaを共通基盤としたサプライヤーとの連携強化を通じて、蓄積される支出データの精度と粒度を高め、データに基づく調達判断の高度化につなげた。
プロジェクト推進に当たっては、Coupaの標準機能を最大限活用することで、個別開発を抑制し、将来の運用・改善コストの圧縮にも寄与するとともに、購買申請から請求までのプロセスとデータを一元的に管理・分析できる基盤を整備できたことも大きい。さらに、ERP本稼働前から段階的に移行し、全社数百人の利用者が新たな業務・システムにあらかじめ習熟できる環境を整えたことで、利用者側の変化を前倒しし、複数システムの同時導入に伴う負荷や混乱を抑制するとともに、本番稼働前に業務・運用上の課題を顕在化させることが可能となった。これにより、一般的な「ビッグバン移行」による全社的な業務停止や切戻し困難のリスクを軽減した点も含め、Coupaの先行導入は、改革の定着、利用者の習熟、データ活用基盤の整備およびERP全体の移行リスク低減を同時に実現させることができた。
さらに、システム導入にとどまらず、ユーザー向けトレーニングやマニュアル整備、サポート体制の構築など、運用・定着フェーズまでを一貫して進めたことで、業務プロセスの標準化やガバナンス強化が実効性を伴って浸透した。構想・設計・実装・定着を切れ目なく進めた点が、プロジェクト成功の鍵となっている。