これまで、リアル店舗は、「ショールーム」と呼ばれ、メンテナンス拠点としての「工場」の存在が安心感を担保してきた。これは、リアル店舗を工業製品である車両を売り、メンテナンスする拠点としか見ていない見方である。しかし、リアル店舗がこれだけの存在であれば、オンラインやネットワーク化された整備工場に代替され、いずれリアル店舗は淘汰されるだろう。
多様な顧客のニーズに対応するためにも、メーカー・ディーラー本部・店舗がオンライン・リアルの組み合あわせを提供していくには、オンラインに求める役割があるように、リアル店舗は「リアル店舗でしかできない顧客のカーライフの支え方」で、「お客様が実現したいと思う生き方を実現できるように支援する」役割を担うことが期待されている。
リアル店舗にしかできないこととは、何か?
これまで自動車販売業界の中で重視してきた「つながり」に回帰することが、検討の第一歩だと考えられる。ここで、「何と何がつながるのか?」によって、2つの考え方が存在する。
1つの考え方は、リアル店舗で地域住民と店舗スタッフ、地域住民と地域住民がつながるということ。つまり、人とのつながりであり、地域に根差して人に接することがリアル店舗にしかできないことである。これは、特に国産車の独立系ディーラーが得意とする方向性であり、地域住民が集まる場として、自動車以外の商品やサービスを展示する場になったり、イベントを開催する場になったり、時には地域住民の憩いの場にもなる事例が見られる。この場合、リアル店舗は「地域に根差し、人が集う場」となっている。
もう1つの考え方は、ブランドとして確固たる世界観を確立し、その世界観と顧客がつながるということ。つまり、ブランドとのつながりであり、物理的に具現化されたモノや店舗スタッフが演出する世界観を体験することがリアル店舗にしかできないことである。これは、特にプレミアムブランドが得意とする方向性であり、ブランドの世界観を体現したテストコースやカフェを設ける事例が見られる。この場合、リアル店舗は「ブランド発信拠点」となっている。
上記2つの考え方は、どちらを選択するかによって、店舗デザインや店舗スタッフに必要なスキルセットが異なってくる。例えば、地域に根差し人に接する店舗であれば、お客様に寄り添いその輪の中に入っていくことになるが、ブランド発信の店舗であればお客様をブランドの世界観に引き込むことになるため、両店舗でお客様への接し方が変わってくると想定される。よって、1つの店舗がともに担うことは難しく、どちらかに比重を置くことになる。
さらに、リアル店舗の存在意義は、もう1つの問い「リアル店舗は、何を収益源とするのか?」を組み合わせることで、4つに分類できる。(図2参照)