改正物流効率化法とは?CLO(Chief Logistics Officer)設置義務化に向けて荷主企業が取り組むべきポイントを解説 第2回 なぜ物流問題は解決できないのか ― 荷待ち・荷役長時間化とCLOの役割

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2026.05.18
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概要

労働力不足や法改正が進む中、荷主企業には、従来のコスト削減だけではなく、「運べなくなるリスク」を前提とした物流改善が求められている。物流制約は、単なる配送遅延にとどまらず、生産停止、欠品、販売機会損失など、事業継続や収益性に直結する経営課題へと変化している。
特に荷待ち・荷役時間の長時間化は、2026 年4月施行の改正物流効率化法(以下、物流改正法)において荷主の努力義務項目として位置付けられ、もはや物流事業者だけの自助努力では解決できない課題となった。こうした背景を踏まえ、物流改正法では物流統括管理者(CLO)の設置が義務付けられ、荷待ち・荷役時間削減に向けた実効的な対応が求められている。
第1回では、物流改正法の本質が単なる現場改善ではなく、物流を経営の前提として意思決定に組み込む「構造転換」にあることを示した。本稿では、その必要性が最も顕在化するテーマとして、荷待ち・荷役の長時間化を取り上げ、その要因と対応の方向性、そしてCLOが果たすべき役割を整理する。

執筆者情報

  • 段坂 直樹

    段坂 直樹

    Senior Expert

なぜ、荷待ち・荷役時間が「経営課題」になったのか

荷待ち・荷役時間の長時間化は以前から問題視されてきたものの、長らく物流事業者側の努力範囲として捉えられてきた。しかし近年、労働力不足の深刻化や法改正により労働時間制限が厳格化する中で、ドライバーの実運送時間(走行時間)を確保し、物流機能・能力を維持する必要性が高まっている。その結果、従来のコスト削減中心の取り組みだけでなく、「モノを運べなくなる」リスクへの対応として、荷待ち・荷役時間の短縮が物流事業者だけでなく、荷主企業にも強く求められるようになった。加えて、働き方改革や物流効率化に向けた法制度の整備・・改正を契機に、荷主企業側においても収支悪化やブランド毀損といったリスクが顕在化し、経営課題としての認識が進んでいる。実際、2025年12月には大手物流3PL企業に対して、下請法違反として公正取引委員会から勧告が行われるなど、対応の遅れが企業リスクに直結する事例も発生している(図1)。

図1 荷待ちに関する法改正の概要

物流改正法では、「トラックドライバー1人当たり年間125時間の拘束時間短縮(1運行の荷待ち時間・荷役等時間を2時間以内、1回の受渡しごとの荷待ち時間・荷役等時間を1時間以内にする)」を達成すべき目標として掲げている。
これらを達成するには、荷主を一括りにとらえるのではなく、「発荷主」と「着荷主」に分け整理する必要がある。そのため、改正物流法では双方に努力義務を課しており、発荷主には納品車両到着時刻の分散や荷姿見直しによる荷役時間短縮が、着荷主には納品時間指定の適正化や荷役作業の省力化が求められている(図2)。

図2 物流効率化法における目標と努力義務

一方で、何が阻害要因となり、どのような施策が有効なのかについては、各社が試行錯誤しながら取り組んでいるのが実情である。個別の改善施策は進んでいるものの、その積み上げだけでは根本的な改善に至らない場合も多い。その背景には、構造的な要因整理が不十分なまま対策が講じられている点がある。なぜ現場の努力だけでは解決が困難なのか、その「阻害要因」の根本を明らかにした上で、取り組むべき努力項目との因果関係を体系的に整理する。

荷待ち・荷役の長時間化を生む「構造的要因」

法改正や事業継続の観点から、荷主自身の行動変容が急務となっているにもかかわらず、なぜ現場改善だけでは解決が難しいのか。その根本要因は、自社単独ではコントロールしきれない「入荷業務」の構造にある。出荷業務の場合、自社の指示量にもとづき倉庫で作業完了時刻を試算し、配送会社に集荷可能時刻を事前共有することで、待機を回避できるケースもある。一方で入荷業務は、発荷主・着荷主双方が関与するため改善主体が分散しやすく、さらに複数車両や物量が集中することで、納品条件と受入能力の不整合が発生しやすい構造を持つ。そのため、自社単独の運用改善だけでは解決が難しい。国土交通省の調査においても、荷待ち・荷役時間は過去調査と比較してもほぼ横ばいで推移しており、十分な改善が進んでいない実態が示されている。これは、個別の運用改善だけでは解消が難しい構造的課題の存在を示唆している。特に、複数の発荷主や車両、物量が集中する入荷拠点では、荷待ちや荷役の長時間化が発生しやすい傾向にある。
以上を踏まえ、こうした課題が顕在化しやすい入荷側に焦点を当て、荷待ちや荷役時間が発生する要因を示す(図3)。

図3 荷待ち・荷役に関する要因分析・考察

荷待ち・荷役時間の長時間化は、個別オペレーションの問題ではなく、「納品条件」「計画連携」「受入能力」という3要素の断絶や不整合によって発生する構造的な問題である。そのため、発荷主から着荷主へ納品条件を、着荷主から発荷主に受入能力を提示し、双方が合意のもとで計画を共有することが重要となる。

荷主企業に求められる調整

「納品条件」「計画連携」「受入能力」という3要素の断絶や不整合を解消するためには、自社内のみならず、取引先を含めた具体的なルールのすり合わせが不可欠である。本節では、発荷主、着荷主・物流業者それぞれの観点から、調整における努力項目と導入・運用のポイントを示す(図4、図5)。

図4 発荷主における具体的努力項目の考察
図5 着荷主・物流事業者における具体的努力項目の考察

荷待ち対策として代表的な施策にバース予約システムがあるが、納品条件や計画連携が未整備のままでは、単独導入による効果は限定的となる場合が多い。主な要因は、事前調整と物量把握の不足である。
導入事業者へのヒアリングによれば、納品業者との事前調整が不十分なまま、物量変動を考慮せず一律の予約枠を設定してしまうケースが多いという。
荷役時間は物量によって大きく変動する。そのため、事前の物量把握や納品調整を行わないまま固定的な予約枠を設定すると、想定以上の入荷によって荷役時間が延伸し、後続車両の遅延や新たな荷待ちを誘発する場合がある。このように、前提となる納品条件のすり合わせや計画連携が不十分な状態では、バース予約システムが非効率を固定化するリスクをはらむ。単なるITツールの導入にとどまらず、関係者間の業務プロセス再設計と、システムが有効に機能するための仕組み作り(事前調整・運用設計)を一体で進めることが不可欠である。
また、荷待ち削減施策の一例として、製造業のクライアントでは、発注数量に加え、組立順序計画および納品時間計画をサプライヤーへ事前共有した。これにより、サプライヤーは組立順序に合わせた納品が可能となり、到着後すぐに荷卸しを行い、生産ラインへの搬入を円滑に行えるようになった。その結果、荷役時間の短縮にもつながった。
このように、要因に応じた努力項目を設定し、導入・運用上のポイントを踏まえて対応することが根本的な解決には欠かせない。
実際の現場では、物流部門のみで改善を進めようとしても、営業・調達・生産部門との利害調整が進まず、運用定着に至らないケースも少なくない。そのため、制度・ルール設計にとどまらず、全社横断での合意形成や運用変更まで含めた推進が重要となる。

CLOが果たすべき役割

これまで述べてきた納品条件のすり合わせや計画の事前共有といった取り組みは、物流部門単独では実行が難しい。営業部門や調達・生産部門までを巻き込み、全社的な意思決定の前提そのものを変革する必要がある。だからこそ、第1回で述べた「経営判断の構造転換」を推進し、全社横断で統制を行う存在として、CLOが不可欠となる。
CLOが果たすべき具体的な役割として、まずはリードタイムの確保や発注量適正化に向けた「社内部門間の連携体制」の構築が挙げられる。さらに、発荷主側のCLOは着荷主側のCLOに働きかけ、「関係会社間の連携」を通じて、納品条件の締結や計画共有の体制を構築する必要がある。加えて、双方のCLOはこれら仕組みを支える「設備投資、デジタル化、標準化」を推進するにあたり、全社横断での投資判断と社内での予算確保を主導することが求められる(図6)。

図6 荷待ち・荷役時間の短縮に向けて

荷待ち・荷役時間の問題は、単なる現場の運用改善で解決できるものではない。物流制約が企業間・部門間の意思決定に十分組み込まれてこなかった結果として顕在化した課題である。すでに物流事業者の自助努力だけでは解決不可能な段階に到達しており、持続可能なサプライチェーン構築には、荷主自身の抜本的な意識改革が不可欠である。CLOの役割はシステム導入など個別施策の推進ではなく、納品条件の在り方や情報・計画連携、ひいては全社的な意思決定構造そのものを再設計することにある。
まずは自社において、どの工程で待機や滞留が発生しているのかを可視化し、それが「納品条件」「計画連携」「受入能力」のいずれに起因するのかを整理することが出発点となる。その上で、CLO 主導による全社的な構造変革へ早期に踏み出すことが求められる。
アビームコンサルティングでは、こうした構造整理から意思決定プロセスの再設計、現場実装までを一貫して支援し、CLOが実効性を発揮できる体制構築を数多く支援してきた。

次回は、積載率向上の実践と、上位の計画に物流制約を組み込む「ロジスティクスコントローラー」の考え方を提示する。

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