では、成功している企業は何が異なるのか。FUJIの神谷氏は、自社が実践する「成功のためのセオリー」を例に挙げて説明する。
「当社では、事前に、具体的な探索対象やその目的、共創内容を設定します。その上で、必要な技術やサービスを持つスタートアップを探すことで、初めから成果イメージに基づく具体的な会話ができるようになります」(神谷氏)
FUJIはこうしたコラボレーションの推進策として、2024年5月にベンチャークライアントモデルを本格導入した。また、新規事業創出の専任部署として2019 年に設置された社長直轄のイノベーション推進部では、独立予算と迅速な意思決定を可能にしている。加えて、情報収集やPoC拠点となるFUJI Innovation Lab.を国内外の5カ所に展開している。
「案件・課題はすべてリスト化し、複数のプロジェクトを並行して管理しています。経済的インパクトを事前に試算し、KPIを設定します。500万円程度の小規模予算、3~6カ月の短期間で案件を回し、2ヶ月ごとに経営層に報告して進捗状況を共有しています」と神谷氏は述べる。
STATION AiのSKIP(STATION Kinetic Innovation Program)も、同様のアプローチで会員企業のオープンイノベーション支援を進めていると髙間氏は語る。
「実践の取り組みを4つのフェーズに分け、一貫して伴走します。まず『定める』でミッシングピースを言語化し、『探す』でスタートアップをマッチング。『作る』でPoCを実施、『育てる』で事業化を推進します。ここで重要なのは、経営層を初期段階から巻き込み、PoC時に人・予算・時間などの経営リソースを投下し、筋道立てたストーリーで説得することです」(髙間氏)
愛知県庁の酒井氏は、自治体の役割における課題を率直に語る。行政支援やマッチングイベントが、事業会社とスタートアップの「お見合いの場」にとどまるケースは少なくないという。
「最終的に実装・事業化され、社会に貢献できているのはごく一部です。私たちは、そのノウハウを皆さんに共有し、成功例を増やしていく必要があります。連携から事業化までのプロセスを失敗例も含めてデータベース化し、愛知県地域の活性化につながるプラットフォームに育てたいと考えています」(酒井氏)
愛知県のAichi Landing Padは、その具体的な取り組みの1つである。これは、日本進出を目指す海外のスタートアップ企業と、県内企業とのオープンイノベーションを支援するプログラムであり、「2024年度は2カ月でアライアンス契約を締結した事例も生まれています。また2025年度はGX(グリーントランスフォーメーション)とマニュファクチャリングに特化し、18社の海外スタートアップを選定しました。」と酒井氏は成果を語る。