既存事業の成長が鈍化する中、AIなどの技術革新・社会課題を背景に、新規事業開発の取り組みが加速している。従来の「綿密な計画を立ててから投資する」スタイルに代わり、実際に試作・検証を繰り返しながら学習するリーンスタートアップやアジャイル型の事業開発手法が広く浸透しつつある一方で、現場ではMVP(Minimum Viable Product:顧客に価値を提供できる必要最低限の機能を備えた製品)の具体化や開発に至る前段階(構想フェーズ)で足踏みする事例が後を絶たない。その背景には、大企業特有の組織構造や権限設計、企業風土など複合的な要因が存在するが、その中核的な要因のひとつとして「複数人のチームで一つのアイデアを企画化する」という従来型の新規事業開発アプローチに構造的な課題が存在すると考えている。
本インサイトでは、こうした構造的課題に対し抜本的な解決策を提示すべく、デジタルサービス領域における新規事業の構想フェーズを対象とした、新たな新規事業開発アプローチ「Doer事業開発」について具体的な進め方と実践におけるポイントを解説する。