MaaS(Mobility-as-a-Service)の本質を考える

概要

1.社会ニーズの変化とMaaSの台頭

 世界は効率化の追求だけではなく、持続性や循環型経済を意識した構想への変化し、多様な価値観の共存、選択肢の拡大、不確実な社会の到来からサスティナビリティが求められる時代に突入した。そして、昨今のデジタル化やスマートフォンの普及によって、今まで水面下に消えてしまっていた顧客の声が顕在化し、顧客は100%満足できるモノ・サービスを探すようになったのである。

 デジタル化、プラットフォーム化、サブスクリプションサービスなどの社会の変化はモビリティにも到来している。今日ではMaaS(Mobility-as-a-Service)という言葉も普及し始め、新たなサービスや経営計画が発表されている。

 MaaSは自動車が抱えている社会問題を解決する可能性を秘めている一方で、すべての課題に対応できるわけではない。本誌ではMaaSの現状と構造にも触れ、社会でMaaSが求められる背景、動向や特徴、プレイヤー、事例、プラットフォーム要素に加え、どのような変化が起き、どのような準備が必要なのか考察する。

2.自動車業界の変化と動向

 現在、自動車業界は「100年に一度の大変化」といわれるように、電動化・自動運転・コネクテッド・シェアリングサービスの4つの変化に直面している。電動化は環境問題(CO2削減)、自動運転は安全性の向上につながり、さらにIoTの発展により車と車の外部(車・インフラ・事業)と繋がる(コネクテッド)することで、利用者のニーズに合わせたサービスが発展、あらゆる移動サービスが統合されたMaaSが普及し自動車産業構造にも大きな変化をもたらすと考える。

 自動車業界の変化からも、私たちの世界はモノからサービスへの移行が始まっていることがわかる。自動車業界を取り巻く4つの変化や、MaaSの台頭は今までの顧客中心の「モノ」を提供する時代から「サービス」に重きを置く時代に移行したことを如実に表している。MaaSをビジネスととらえた場合、どこにビジネスオポチュニティがあるのか本誌で触れていく。

3.日本企業への提案

 MaaSとともに刻々と変わる社会や産業構造、人々の価値観を踏まえ、今後の自動車産業に対し3つの観点から日本企業へ提言する。

① 自動車台数ビジネスの終焉
 自動車市場は「所有市場」が減少し「利用市場」が増加することが予測される。「所有するなら持つ意味のある車を」という考え方から、「ラグジュアリーブランド市場」は今後も現在と同じ規模を維持又は、拡大増加していくことが予想される。

②ローカルに根差したグローバルな視点
 地域間や国間の最適化を考えた場合プラットフォーム機能やアプリケーションなどは、相互互換性を持たせることが重要である。 日本のような島国にいると不便はないが、国境を越えた瞬間も同じサービスを受けるためには自国に閉じない考え方が必要である。

③自前主義からの脱却とグローバルプレイヤーとの連携
 MaaSのビジネスでは1社のみでのサービスの実現が難しく、地方自治体や企業、モビリティ事業者など様々なプレイヤーとの連携が必須だ。自社の利益視点で対処方法を考えるのではなく、連携先も国内から海外へと目を向け、すでにある技術をうまく活用し、お互いにWin-Winになるビジネスモデルを検討していくことが近道となる。

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目次

序章 MaaSのある日常 
一章 デジタル化による社会変化と社会課題への挑戦
二章 MaaSについて
三章 MaaSは利益よりも社会課題解決
四章 自動車業界の変化と動向
五章 MaaSのビジネス化と日本企業への提言
 

MaaS(Mobility-as-a-Service)の本質を考える

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